色気より食い気の俺が料理上手の幼馴染に『毎朝、お前の作ったみそ汁が飲みたい』と言ったらすぐ同居することになった

三葉空

9 嫁に背中を流してもらうとか……

「ミーくん、あーん♡」

「え、いや、恥ずかしいよ」

「もう、何で? お昼休みに二人の時はいつもしてくれるのに」

「だってさ……」

俺は目の前でニヤニヤしている両親と妹を睨む。

「見てんじゃねえよ」

「お兄ちゃんこそ、見せつけてんじゃないよ♡」

「いやいや、そんなつもりはないから」

「息子よ、俺たちに構うな」

「そうよ。私たちはただ目の保養にするから」

「もう、お義父さんとお義母さんったら♡」

結菜は嬉しそうにテレテレするけど、俺は軽く死にたかった。

「ご、ごちそうさま!」

「あっ、ミーくん。もう良いの?」

「うん、ちょっと風呂に入って来るよ」

「お兄ちゃん、そっけない夫は離婚されるぞ~?」

「黙れ、マセた妹め」

「エロ兄貴」

どこまでも生意気な日向を殴ってやりたい衝動に駆られるが、グッと堪えて脱衣所に向かう。

思えば、結菜と同居を初めてからあまり一人きりになる時間が無かったように思う。

可愛い結菜と一緒にいられることは幸せだけど、周りの騒がしい連中がいることで俺のストレスゲージの方が勝ってしまうことに気が付いた。

だから、こうして一人になれる風呂の時間がご褒美のように思えた。

「ふあ~、気持ち良いなぁ」

シャワーを浴びながら俺は声を上げる。

キュッと栓を止めると、体を洗おうとした。

「ミーくん」

その声がして、俺はビクっとした。

「え、ゆ、結菜?」

振り向くと、浴室のすりガラス越しに結菜のシルエットが浮かぶ。

「う、うん。前にもチラっと言ったけど、お背中を流そうかなって」

「マ、マジですか?」

「うん」

可愛い結菜にそんなことをしてもらえるなんて幸せだ。

もし、学園の連中が知ったら死の涙を流しながら俺を殴打することだろう。

それくら、学園イチの美少女である結菜に背中を流してもらうのはプラチナ中のプラチナチケット。

と言うか、夫だけの特権だ。

「……ごめんね、やっぱり嫌かな?」

「えっ?」

「さっきも、家族のみんなにからかわれて、ミーくん嫌そうだったし。私が居ると迷惑かな?」

結菜の声が少し悲しそうに聞こえた。

「そ、そんなことはないよ。ぜひ、背中を流してもらいたい!」

俺は慌ててそう言った。

「本当に?」

「ああ。ただ、お互いに裸だとさすがにまだ恥ずかしいから、Tシャツを着たままにしてくれないか? あ、短いズボンも忘れないで」

「うん、分かった」

結菜は声を弾ませて言う。

それからしばらくして……

「……ミーくん、お邪魔します」

結菜が遠慮がちに入って来た。

俺が頼んだ通り、Tシャツと短パンを身に纏っていた。

「じゃ、じゃあ、よろしく」

「うん♡」

結菜は嬉々としてスポンジを手に取ると泡立てた。

「ミーくんの背中、大きいね」

「そうかな?」

「うん、たくましくて、うっとりしちゃう。小さい頃から成長したね……わっ、こんなに固いんだ」

「ちょっ、結菜。指先でなぞるのはやめてくれ」

「ご、ごめんね。じゃあ、洗うよ?」

「ああ、頼む」

結菜はスポンジで優しく丁寧に俺の背中を洗ってくれる。

「ふぅ~」

「どう、ミーくん?」

「気持ち良いよ。結菜は何でも上手だな」

「うふふ、嬉しい」

「毎日、結菜のみそ汁を飲めるのも幸せだけど。こうして、毎日背中も流してもらえたら気持ち良いな~、なんて……それはさすがに贅沢だよなぁ」

「本当に? 毎日ミーくんのお背中を流して良いの!?」

結菜が少し興奮ぎみに言った。

「え、いや、たまにで良いよ?」

「けど、ミーくんは愛する夫だから……あ、まだ高校生だから正式じゃないけど」

「そ、そうだよ。毎日するのは大人になってからだよ」

「大人になったら、裸で一緒にお風呂に入っても良い?」

「も、もちろん」

「今はダメ?」

「ダ、ダメです」

色々と大変なことになってしまうから。

「よいしょ、よいしょ……ふぅ、固くて大きいから、洗うのが大変だよ」

「無理しなくて良いぞ?」

「ううん、とても幸せだよ」

顔を向けると、結菜がニコリと微笑んでいた。

あぁ、可愛いな。

前から可愛いとは思っていたけど。

それは客観的に見ての話で。

今は主観的に結菜のことが好きだから。

本当に可愛いと思ってしまう。

そのせいか、俺は思わずちゅっとキスをしていた。

「…………あっ」

そして、ハッとする。

「す、すまん。つい……」

「ミ、ミーくん……嬉しい、私のことを求めてくれて」

「そ、そりゃあ、こんなに可愛い結菜だからな」

「ありがとう……もっと、シても良いんだよ?」

結菜はふにゅっ、と大きな胸を押し付けて来る。

「いや、その……楽しみは後に取っておきたいんだ」

「そっか……それもそうだね」

結菜はニコリと笑う。

「じゃあ、せっけんを流すね」

「おう」

結菜はシャワーを手に取った。

そして、栓を回そうとするが、

「あれ、上手く回らない」

「俺がやろうか?」

「ううん、大丈夫……えいっ」

すると、ブシャアアアアアァ!と勢い良くシャワーが出た。

「うおっ!」

「きゃっ!」

俺は顔面に思い切りシャワーを浴びてしまう。

「ゆ、結菜、大丈夫……か!?」

振り向いた俺はギョッとする。

「ミ、ミーくん……」

そこには濡れ濡れの結菜さんがいた。

ていうか、濡れたTシャツの上から何かぷっくりと浮かんでいるんだけど……

「お、おい。ブラはどうした?」

「え? 着けてないよ」

「ぶはっ……いや、そうじゃなくて。すぐにタオルで拭かないと!」

結菜に風邪を引かせる訳には行かないと、俺は勢い良くイスから立ち上がった。

「…………あっ」

結菜の小さな声に反応する。

「えっ?」

そして、俺は気が付く。

ノーガードの状態で思い切り結菜の眼前にいることを。

「……し、失礼した!」

俺はとっさに両手で大事な所を隠す。

「こ、こちらこそ、ごめんなさい!」

結菜は両手で顔を覆いながらサッと後ろを向く。

あぁ、俺は何てバカ野郎なんだ。

「ミ、ミーくん」

「え?」

「その、えっと……そっちの方も、成長したね」

俺はダラーンと口を開けた。

顎が外れるかと思うくらいに。

「ねえねえ、お兄ちゃーん! まだ上がらないの~?」

そして、響く日向の声が俺をさらに焦らせる。

「あ、日向ちゃん。悪いんだけど、タオルを持って来てもらえるかな?」

「えっ、結菜ちゃん!?……ハハ~ン、そういうこと。全く、お兄ちゃんもすっかり変態野郎だね♡」

「待て、日向。これは誤解なんだ!」

「任せて。パパとママには言わないから。だーいじょーぶ!」

「全ッ然、大丈夫じゃないから!」

俺は叫ぶと同時につい手を離してしまう。

「ミーくん、すごい元気……」

「ゆ、結菜……」

「おーい。早く上がれ、バカップル~」

「日向、後で話し合おう」

結局、満足にリラックス出来なかった。






          

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