色気より食い気の俺が料理上手の幼馴染に『毎朝、お前の作ったみそ汁が飲みたい』と言ったらすぐ同居することになった

三葉空

6 正直な気持ち

その事件は、何気ない夜の一コマで起きた。

「ふぅ~、風呂にでも入るか……」

ガララ、と脱衣所の扉を開けた時。

「――えっ?」

そこには生まれたままの姿で佇む結菜がいた。

濡れそぼった黒髪が普段よりも色っぽく見えた。

白い肌は透き通るようで繊細で華奢だ。

けれども、胸はとても大きくて……

「す、すまん!」

俺は速攻で扉を閉めた。

「結菜、許してくれ。決してわざとじゃないんだ」

「ミ、ミーくん。気にしてないよ?」

「そ、そうか」

俺はぎこちなく頷きながら、ぎこちない動きで一度その場から離れた。

それからと言うもの、

「「あっ」」

結菜と顔を合わせる度に、お互いに少しぎこちなくなってしまう。

「お、おはよう」

「あ、ああ」

いつもなら存分に味わう結菜のみそ汁も急いで飲み干し。

「行って来ます」

「あれ、お兄ちゃん。結菜ちゃんと一緒に行かないの?」

「えっと……今日は日直なんだ。すまん、結菜」

「あ、う、うん」

「ふぅん?」

少し疑念の目を向ける日向から目を逸らし、俺は逃げるようにして家を出た。







「……はぁ~、疲れた」

特別にハードな体育の授業があった訳じゃないけど。

何だか精神的にとても疲れた。

今日は結菜と昼ごはんも一緒に食べなかったし。

恵一に『早くも離婚の危機か!?』と嬉しそうに言われてウザかったし。

「お兄ちゃん」

「おお、日向。もう帰っていたのか」

「うん。朝からちょっと様子が変だけど、何かあったの?」

「あ、いや……」

「結菜ちゃんとのこと?」

俺が口ごもると、

「あたしで良かったら相談に乗るよ?」

「けど、妹に相談するようなことじゃ……」

今日の昼休みに恵一に相談しようと思ったけど、ウザかったからやめた。

となれば、後は相談できるのが妹である日向くらいか。

「……ちょっと俺の部屋で良いか?」

「良いよ、臭いのイヤだけど」

「傷付くな」

妹に軽くなじられながら俺たちは階段を上がって部屋に向かう。

「で、何があったの?」

日向はベッドに腰を下ろして言う。

「実は昨晩……見てしまったんだ」

「何を?」

「結菜の裸を……」

「……具体的に、どういったシチュ?」

「俺が風呂に入ろうと思ったら、先に結菜が入っていて、脱衣所でバッタリと……」

「ふむふむ、なるほど」

日向は腕組みをしながら頷く。

「お兄ちゃん、順調にラブコメ主人公をしているねぇ」

ニヤニヤしながら日向は言う。

「お前な……」

「で、どう思ったの? 結菜ちゃんの裸を見て」

「え? いや、それはまあ……みんなから好かれているだけあって、素晴らしいと言うか……」

「そんな当たり障りのない感想じゃなくて、お兄ちゃんの想いを聞かせてよ」

「お、俺の想い?」

「うん。お兄ちゃんの正直な気持ちね」

いつの間にか日向に尋問される形になっていた。

俺は正座をしたまま、ベッドから見下ろす妹の視線に平伏している。

「……引かないでくれるか?」

「うん」

「前にも、恵一に結菜のおっぱいのことを聞かれて『あれ、食べたらどんな味がするのかな?』って言ったんだ」

「うん」

「それで、その……昨日、成長した結菜のおっぱいを見て……マジで食べたいと思った」

断腸の思いで言い終えると、俺はおもむろに顔を上げる。

日向は飛び切りの笑顔を浮かべていた。

「ド変態じゃん♡」

「グハッ!?」

俺は吐血しそうになった。

恵一にも同じことを言われたけど、妹に言われると威力が何倍も違う。

「……そ、そうだよな。こんな変態、結菜にも嫌われるよな」

俺は四つん這いの姿勢でズーン、とうなだれる。

「本人に聞いてみれば?」

「……えっ?」

「その気持ち、結菜ちゃんに直接伝えちゃえば良いじゃん」

「けど、そんなことを言ったら結菜に嫌われちゃうだろ?」

「でも、二人は夫婦も同然な訳だし。お互いの気持ちは包み隠さずに言わないと、ちょっと寂しいんじゃない?」

「寂しい……」

「それに結菜ちゃんはお兄ちゃんにゾッコンだから、きっと喜んでおっぱいくれるよ♡」

「お前な……」

俺は呆れつつも、

「ありがとう。少し気持ちが楽になったよ。勇気も出た」

「うん」

日向はニコリと笑った。







その晩。

俺は少しドキドキしながら結菜の部屋をノックした。

「結菜、俺だ。入っても良いか?」

「ミ、ミーくん? どうぞ」

俺はドアを開く。

まだ家に来て間もない結菜の部屋はあまり物がなかった。

確か、前に結菜の家に行った時は、もっと可愛らしいぬいぐるみがたくさんあったはず。

いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。

「座っても良いか?」

「う、うん」

俺と結菜は丸いテーブルを挟んで向かい合う。

「その……昨日の夜はすまなかった。わざとじゃないんだよ」

「う、うん。分かっているよ。私は全然気にしてないから……」

そう言った結菜だが、

「……ううん、やっぱり気にしているかも」

「ごめん、やっぱり嫌だよな」

「そうじゃないの! 大好きなミーくんに見られたから、ドキドキしちゃって……」

「ゆ、結菜……」

俺はゴクリと息を呑む。

「あのな、結菜に言っておかなくちゃいけないことがあるんだ」

「う、うん」

「その、な……昨日、結菜の生のおっぱいを見た時……食べたいって思っちゃったんだ」

俺は目を閉じてはを食いしばりながら言葉を絞り出した。

「ごめん、こんな変態で。嫌なら俺のことなんて見捨てて……」

ふわり、と柔らかい感触に包まれた。

「……結菜?」

「……ミーくん、私は嬉しいよ」

「え、変態とか思わない?」

「ちょっと思うけど、好きなひとだからとても愛おしく思うの」

「そ、そういうものなのか」

「うん」

結菜は微笑んで頷く。

「ねえ、ミーくん」

「ん?」

「いま、食べてみる?」

「……え?」

俺の返事を待たない内に、結菜はパジャマのボタンを外して行く。

すると、結菜の白くてきれいな谷間が現れて……

「いやいや、待って!」

「ミーくん?」

「それはまだちょっと……早いかな」

「そ、そうだね、ごめん」

「いや、結菜の気持ちが嬉しいよ。これから二人でゆっくり、階段を上って行こう」

「うん。じゃあ、おっぱいを食べない代わりに……キスして欲しいな」

「キ、キス、ですか?」

「ダメ、かな?」

「いや、もちろん、良いとも」

俺は結菜のそばに寄った。

真っ直ぐに結菜と見つめ合う。

今までは仲の良い幼馴染としてしか見ていなかったのに。

将来を約束した許嫁も同然の夫婦みたいな同居生活が始まってから、グッと結菜が女の子らしく見えて、ドキドキするようになって。

だから、まともに結菜の顔を見ることが出来ない。

けど、勇気を振り絞って結菜を見つめる。

白い頬が赤く染まっていて、可愛らしい。

「ミーくん……」

「か、軽くね。ソフトタッチで」

「うん……お願いします」

結菜はすっと目を閉じる。

俺は覚悟を決めて、結菜に唇を寄せた。

ふに、と予想以上に柔らかい感触にドキリとしつつも、結菜と唇を重ねた。

「……これが、キス」

結菜は指先でそっと唇を撫でる。

すると、ポロポロと涙がこぼれ出した。

「ゆ、結菜? どうした?」

「ご、ごめんね……嬉しくて。大好きなミーくんとキスが出来て……」

「結菜……俺も嬉しいよ」

俺は正座をすると、咳払いをした。

「結菜、俺と結婚してくれ」

「へっ?」

「あ、いや、もちろん今すぐって訳じゃないけど……ほら、俺はせっかくお前がアプローチしてくれているのに、曖昧な返事しかしていなかったから。改めて、お前のことが大好きだから、俺のお嫁さんになって欲しいと思ったんだ」

「ミーくん……ひどいよ。これ以上、私を泣かせる気?」

「ご、ごめん。俺はどうすれば良い?」

「ぎゅってして?」

「わ、分かった」

俺はそっと優しく、けれども強く結菜を抱き締めた。

「ミーくん、温かい……」

「結菜は柔らかいな……」

「おっぱいが……?」

「うん、全体的に……」

「ふふ、ミーくんのエッチ♡」

俺は可愛い結菜を抱き締めて幸せを噛み締めていたのだけど。

ふと、ドアの方から気配を感じた。

顔を向けると、

「おい、日向」

小さく開いたドアの向こうでビクっとする気配を感じた。

それから、ドアが開いて日向が顔を見せる。

「覗きは感心しないな」

「だって、良いでしょ。あたしのアドバイスのおかげで、お兄ちゃんは結菜ちゃんとより強く結ばれたんだから」

「確かにそうだけど……」

「ありがとう、日向ちゃん。おかげで、ミーくんにプロポーズしてもらえたよ」

「良かったね。お兄ちゃん、出来た妹に感謝しなさい?」

「全く……でも、ありがとう」

「じゃあ、お兄ちゃんと結菜ちゃんが無事に結ばれたことだし。これからも二人の愛のキューピッドとして見守るね♡」

「もう覗きは禁止な」

「だから、覗きじゃないもん!」

ぷくっと頬を膨らませて言う日向がおかしくて俺と結菜は笑った。

お互いに優しく強く、手を握り締めながら。






          

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