色気より食い気の俺が料理上手の幼馴染に『毎朝、お前の作ったみそ汁が飲みたい』と言ったらすぐ同居することになった

三葉空

4 風呂上がりに彼女と二人で……

家に帰ると、俺はカバンを置いてソファに座った。

「はぁ~、アホの恵一のせいで疲れたなぁ」

「そんなこと言ったら可哀想だよ、ミーくん」

そう言いながら、結菜が麦茶を持って来てくれた。

「お、サンキュー」

俺はゴクリと飲む。

結菜も小さくコクリと飲む。

「ミーくん、制服がシワになっちゃうから、貸して?」

「ああ、悪いな」

「靴下も洗濯カゴに入れちゃうね」

「悪いな」

俺はテレビを見ながら言う。

「おい、ダメ兄貴」

ふいに背後から声がしてビクっとした。

「おわ、日向。いつの間に帰っていたんだよ。ユーレイか」

「失礼なお兄ちゃんだなぁ。ていうか、何してんの?」

「え、何がって」

「いくら結菜ちゃんが既に嫁だからって、甘え過ぎでしょ。お兄ちゃんはまだ高校生なのに、もうおっさんみたいだよ」

「うっ、それは軽く傷付くな」

俺は反省して立ち上がる。

「ごめん、結菜。自分のことはちゃんと自分でやるよ」

「ううん、気にしないで。私がミーくんのお世話をしてあげたいだけだから」

結菜は微笑みながら言う。

「全く、お兄ちゃんは幸せ者だねぇ。今どき、こんな健気なお嫁さんはいないよ?」

「ああ、そうだな。ていうか、もう結菜が嫁とか普通に言っちゃっているな」

「お兄ちゃん、『結菜は俺の嫁!』って言ってみてよ」

「結菜は俺の嫁」

「棒読みだなぁ」

「だって、恥ずかしいだろ……」

俺が言うと、

「うふふ、照れるミーくん可愛い」

「もう、結菜ちゃんはお兄ちゃんに甘すぎだよ!」

そう言われても、結菜はひたすらに微笑んでいた。







風呂上がり、俺は自分の部屋にいた。

すると、ノックがされる。

「どうぞ」

返事をすると、ドアがゆっくりと開く。

「ミーくん」

「結菜、どうした?」

結菜は遠慮がちに入って来る。

ちなみに、結菜の部屋は別に用意してある。

「ごめんね、ちょっとお話したいなって思って」

「ああ、良いよ。ちょうど暇していた所だし」

「良かった」

結菜は微笑みながら丸テーブルの前にちょこんと正座をする。

俺は勉強机のイスに座ったまま、

「どうだ、ウチでの生活は? やっぱり慣れないだろ?」

「慣れないと言うか……毎日がドキドキだよ」

「そ、そうか。俺もだよ」

「本当に?」

「ああ。家族ぐるみの付き合いで、頻繁にお互いの家を行ったり来たりした仲とはいえ、お互いに成長したからな」

「そうだね。ミーくんは前よりも、もっとかっこ良くなったから」

「結菜こそ、すごく可愛くなったよ。スタイルも良くなったし」

「て、照れちゃうな……」

結菜は頬を赤らめて顔を俯ける。

「……ミーくん、となりに来て?」

「え?」

「ダメかな?」

「ダメってことはないけど……」

俺も照れながらイスを立ち、結菜のとなりに腰を下ろす。

「くっついても良い?」

「あ、ああ」

結菜はそっと俺の肩に頭を乗せる。

「……わっ、ミーくん固いね。鍛えている?」

「いや。元から、筋肉質だから」

「そうだったね。何かドキドキしちゃう」

「それはこっちのセリフだよ」

「ミーくんも私に触って良いよ」

「え?」

「胸とか」

「おい」

「ごめん、冗談」

結菜は珍しくおどけて舌を出す。

小さい頃に戻ったみたいだ。

「ミーくんは嫌じゃない?」

「え?」

「私が一つ屋根の下で暮らして、ミーくんのお嫁さんになること」

「お前は昔から、俺には出来過ぎた幼馴染だから。むしろ、俺の方が申し訳ないと言うか、バチが当たりそうで怖いよ」

「そんなことないのに……ミーくんだって、昔から素敵だよ?」

「ありがとう。いつも、日向にはバカにされているけどな」

「うふふ、そうね」

俺たちは微笑み合う。

自然と、お互いの吐息のかかり具合とか、シャンプーの香りとかが気になって、目が合っていた。

間近で見ると、やっぱり結菜はとても可愛くて。

おまけに、胸も大きいし。

俺は色気よりも食い気の男なんて言われているけど。

何だかんだ、ドキドキしてしまう。

「…………あっ」

結菜の小さく漏れた声がきっかけで、お互いの距離が縮まって行く。

より間近に、彼女の甘く掠れた吐息を感じた時、お互いに目を閉じていた。

「ねえ、お兄ちゃん」

だから、ふいにドアが開いて、そのまま硬直してしまう。

それは日向も同じことだった。

「あ、ご、ごめん……まさか、二人がもう……」

「ち、違うから。ちょっと話していただけで……」

「あ、パ、パパとママには内緒にしておくから。頑張って、お兄ちゃん」

グッと親指を立てて日向は言う。

それから、バタンとドアが閉じた。

俺は呆然としながらドアを見つめていた。

「……ミーくん」

「ど、どうした?」

「日向ちゃんは、ああ言ってくれたけど……どうする?」

結菜が小首をかしげて言う。

緊張のせいか、少し頬が赤らんで、目が潤んでいた。

「……ま、また今度……ということで」

そして、俺はヘタレだった。

「うん、そうだね……時間はたっぷりあるし、ゆっくり進んで行きたいな」

結菜はピトッとまた俺にくっつく。

そんな彼女が可愛らしくて、俺は微笑みながら頭を撫でてあげた。






          

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