色気より食い気の俺が料理上手の幼馴染に『毎朝、お前の作ったみそ汁が飲みたい』と言ったらすぐ同居することになった

三葉空

2 嫁と妹に翻弄される

俺の迂闊な発言で幼馴染の結菜が同居することになったこの日。

「結菜、夕飯おいしかったよ」

「ありがとう。モリモリ食べてくれて嬉しかったよ」

エプロン姿の結菜は微笑む。

「うん。じゃあ、風呂に入って来るよ」

「あ、ミーくん」

「どうした?」

結菜は何やらモジモジしている。

「えっと、その……お背中を流しましょうか?」

「ん? いや、別に良いよ。自分で洗えるし」

「ちょっと、お兄ちゃん。その返事はあまりにもそっけないよ」

日向に言われてしまう。

「そうか? だって、いちいち結菜に世話をかけるのも悪いし」

「あのね、女は好きな男をいちいち世話したいの。ねぇ、結菜ちゃん?」

「う、うん」

結菜は両手を前で合わせて赤面しながら頷く。

「そうなのか?」

「そうなの。だから、遠慮しちゃダメ」

「じゃあ、背中を流してくれ」

「へっ?」

「ちょいちょい、お兄ちゃん」

「何だよ?」

「どうしてそんなに軽い調子で言うの?」

「いや、だってお前が遠慮するなって」

「あのね、確かにそう言ったけど。ちょっとは恥じらう素振りを見せなよ」

「例えば?」

「例えば……あ、ああ。じゃあ、お願いしようかな……って、赤面しながら言いなさいよ」

「でも、結菜は幼馴染だし。小さい頃は風呂も一緒に入っていたからな」

「小さい頃とは全然違うでしょうが! 今の結菜ちゃんはあの頃よりも成長しているんだからね。おっぱいとか、おっぱいとか!」

「ひ、日向ちゃん、恥ずかしいよ……」

「まあ、確かに。結菜の胸はデカくなったな」

俺が結菜の方を向いて言うと、彼女はより赤面してしまう。

「きっと料理上手だから、自分で栄養のある物を作って食べたおかげだろう。じゃあ俺も、これから毎日、結菜が作るごはんを食べたら、立派に成長するかもな」

「ミーくんが、立派に成長……」

結菜はなぜか視線を落としたまま呟く。

「お兄ちゃん、あまりデカくならないでよ。邪魔なんだから」

「日向、お前もデカくなるんじゃないか? ほら、胸とかもっと大きくしたいって……」

「黙れ、このセクハラ兄貴!」

キッと目を尖らせた日向にローキックを食らった。

「あ、あの、ミーくん」

「ん、どした?」

「や、やっぱり、お背中を流すのはまた今度でも良いかな?」

「別に良いけど」

「ご、ごめんね」

結菜は慌ててキッチンの流し台の方に向かった。

「結菜ちゃん、もしかして……」

「どうした?」

俺が聞くと、日向はどこかいたずらな笑みを浮かべる。

「ねぇねぇ、お兄ちゃんは自分がデカいと思う?」

「ん? まあ、大きい方かな」

「マジで? 妹にそれ自慢しちゃう?」

「自慢かな? まあ、身長が高いのは羨ましいって言われるけど」

「……まあ、そうだよね」

日向は何やら肩をすくめてやれやれ顔になる。

「お前、ちょっとムカつくな」

「黙れエロ兄貴」

「何でだよ。俺がいつエロ発言をした?」

「あたしと結菜ちゃんにとって、お兄ちゃんはエロなんだよ」

「ひどいなぁ。小さい頃からずっと3人で仲良くして来たじゃないか。これからも仲良くしようぜ?」

「これからも仲良く……」

日向が繰り返して言うと、なぜか洗い物をしていた結菜まだピクッと反応していた。

「お兄ちゃん、仲良くするのは結菜ちゃんとだけにしておきな」

「何だ、日向。反抗期か? まあ、お前はずっとそんな調子だけど」

「ねぇ、お兄ちゃんの一番の関心ごとはなに?」

「明日の朝、結菜が作る朝メシ」

「だってさ、結菜ちゃん」

すると、結菜は少し恥ずかしそうに顔を俯けた。

「結菜、みそ汁も頼むぞ」

「う、うん」

「うわぁ、いきなり亭主関白とか。離婚されるなよ~?」

「何を言ってるんだよ。俺と結菜は正式に結婚した訳じゃないだろ?」

「そうだけど。もう夫婦も同然じゃん」

「けど、結菜は学校の奴らに人気だからなぁ。このことがバレたらうるさそうだなぁ。恵一とか」

「じゃあ、内緒にすれば良いじゃん。それもまた、ドキドキで楽しいよね、結菜ちゃん?」

「へっ? あ、うん。でも……」

「どうした、結菜?」

「私は……みんなに言いたいかな」

「え、何で?」

日向が目を丸くする。

「私がミーくんのお嫁さん……まだ仮だけど。そうなったって知ったら、他の男子たちからアプローチをかけられることも少なくなるかなって」

「あ、やっぱり鬱陶しかったんだ?」

「そ、そんなことはないけど……ちょっと、困っちゃうなって」

「だってさ、お兄ちゃん。ここは旦那として、可愛い奥様の頼みを聞いてあげれば?」

「そうか。結菜が言うなら、そうするよ」

「ミ、ミーくん」

「お兄ちゃん、全校の男子からボコられるかもね」

「かもな」

「そんな、ミーくん嫌だよ」

「大丈夫だ。もしそうなったとしても、結菜の美味いごはんを食えばすぐに生き返るさ」

「ミーくん……」

結菜は少しうるっとした目で俺を見つめて来る。

「全く、お熱いことで。あたしはお邪魔だろうから、席を外そうか?」

「いや、俺はこれから風呂に入るから」

「お兄ちゃん、本当に良いの? 洗い物をしている奥さんを後ろから攻めるとか、旦那の特権だよ?」

「ひ、日向ちゃん」

「後ろから攻める? 肩でも揉めば良いのか?」

「バカじゃないの、このお兄ちゃん」

「ひどいな」

日向はぷいとそっぽを向く。

「結菜ちゃん、こんな朴念仁で良いの?」

「うん、そこが好き」

「何なんだよ、二人して」

とりあえず、俺は風呂場に向かった。






          

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