色気より食い気の俺が料理上手の幼馴染に『毎朝、お前の作ったみそ汁が飲みたい』と言ったらすぐ同居することになった

三葉空

5 夫婦で餌付けをし合う

「うん。相変わらず、結菜の作ったみそ汁は美味いな」

「ありがとう、ミーくん」

笑顔で言い合う俺たちを、日向が何やらニヤニヤしながら見ていた。

「さすがだね」

「何が?」

「キスするだけのことは……おっと、いけない」

「いや、してないから」

「でも、しようとしたでしょ? ねえ、結菜ちゃん?」

「ひ、日向ちゃん……」

結菜はすっかり赤面して顔を俯けてしまう。

「もういっそのこと、同じベッドで寝たら?」

「いや、一人用だから」

「良いじゃん、その方が密着できるし。ねえ、結菜ちゃん?」

「ううぅ……」

「おい、日向。あまりからかうな」

「ごめんなさ~い」

日向は全く悪びれた素振りも見せずにニヤニヤしていた。







昼休み。

恵一を初めとしたクラスの連中が鬱陶しいので、俺は結菜と二人でひっそりと誰も来ない校庭の隅っこで弁当を食べていた。

「このからあげ、美味しいな」

「本当に?」

「もしかして、冷凍じゃなくて手作りか?」

「そうだよ」

「くぅ~、俺は幸せ者だよ。こんな美味いメシを毎日食べられるなんて」

「ありがとう」

結菜は微笑む。

「けど、何か悪いな。俺ばかり結菜から与えてもらってばかりで」

「そんな、私はミーくんと一緒に居られるだけで幸せだよ?」

「でも、何かしてあげたいな。そうだ、結菜のお願いを何でも一つだけ聞いてあげるよ」

「ほ、本当に?」

結菜は照れながら顔を俯ける。

「じゃあ、その……はい、あーんってしたいな」

「え、そんなことで良いのか?」

結菜はコクリと頷く。

「良いよ。じゃあ、食わせてくれ」

「うん。じゃあ、この卵焼きから」

結菜は箸でそれを掴むと、俺の口元に差し出す。

「ミーくん。はい、あ、あーん」

俺はパクッとその卵焼きを食べる。

「お、美味しい?」

「うん、美味しい。甘い味付けだな」

「えへへ」

結菜は照れたように笑いながら、

「もっと、ミーくんに食べさせたい」

「良いよ」

「じゃあ、次はほうれん草のおひたしね」

結菜はまた箸でそれを俺の口元に運ぶ。

「「あーん」」

二人の声が重なる。

俺がパクっと食べると、結菜が嬉しそうに笑う。

「何か俺が餌付けされている感じだな」

「ご、ごめんね。嫌かな?」

「いや、悪くないな」

「そ、そう? じゃあ、もっともっと、私のお弁当を食べて?」

「バッチコイ」

それから、結菜に『はい、あーん』をされまくって、あっという間に弁当が無くなった。

「あ、ていうか。結菜のご飯が全然進んでいないな。ごめん」

「ううん、平気だよ」

「よし、お返しに俺も食べさせてやろう」

「へっ? い、良いよ、そんな」

「遠慮するな。ほれ」

俺は卵焼きを箸でつまむ。

「じゃ、じゃあ……」

結菜は可愛らしく口を開けた。

そこに俺は卵焼きを入れる。

「……んっ」

「あ、ごめん。ちょっと奥に入れ過ぎたか?」

俺が言うと、結菜は小さく首を横に振る。

それから、ゴクンとした。

「えへへ、何か照れて味がよく分からないね」

「やっぱり、普通に食べた方が良いか?」

「うーん……もう1回だけお願いできる?」

「良いよ」

俺はまた弁当のおかずを結菜の口に運ぶ。

結菜はゆっくりと咀嚼する。

「どうだ?」

「……もう1回」

俺はまたおかずを結菜の口に入れる。

これちょっと恥ずかしいけど、何か楽しいな。

餌付けするのもされるのも、意外と楽しいって……

「……俺らって、もしかしてドMなのかな?」

言った直後、結菜がむぐっ!と言って苦しみ出した。

俺は慌ててお茶を渡す。

結菜はそれを流し込む。

「……ぷはっ」

「大丈夫か?」

「う、うん。平気」

「ごめんな、俺が変なことを言ったせいで」

「ミーくんは悪くないよ」

「ハハ……あっ」

「どうしたの?」

「そのお茶、俺の飲みかけだった」

「えっ……」

元から大きい結菜の目がさらに大きく見開いた。

「あの、結菜?」

「……やっぱり、ミーくんは悪い人だね」

「ご、ごめん。怒らないで」

「ダーメ。許さない♡」

そう言いつつ、結菜はなぜか満面の笑顔だった。






          

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