家出中の美女を拾ったら、僕が好きなあの子のお姉さんだった

三葉空

46 真由美ちゃん、美少女に復活計画だゾ☆

 僕が初めて出会った頃から、真由美ちゃんはキラキラと輝く美少女だった。

 学園のみんなが憧れるアイドル的な存在。

 その爽やかな美少女っぷりに、誰しもが憧れ。

 何より、僕はそんな彼女のことが大好きだった。

 もちろん、今でもその可愛さは健在なのだけど……

「ふぅ、おっぱいが重いなぁ」

 ガチャチャ。

「ちょっと、灯里さん。ごはん中におっぱいをテーブルに載せないでよ。ていうか、料理の皿を押しのけるな」

「はーい」

 灯里さんが間延びした返事をする一方で、

「……ちっ」

 と、舌を打つ音が聞えた。

 振り向くと、真由美ちゃんが恨めしげに灯里さんのおっぱいを睨みながら、おかずをバリボリと噛んでいる。

「何で同じ姉妹なのに、こんなに違うのよ……」

「ま、真由美ちゃん?」

 僕が声をかけると、真由美ちゃんは不機嫌そうな顔のまま、

「何?」

「あ、いや……ごはん、美味しい?」

「美味しいよ、すごく。さすがは翔太くんだよ」

 バリボリ。

「あはは……」

 最初は怒った顔も可愛いなと思っていたけど。

 最近は、真由美ちゃんのやさぐれっぷりがちょっとひどい。

 と言うことで……

「翔ちゃん、急にどうしたの? 改まって話し合いだなんて」

 夏休みのとある日。

 真由美ちゃんが友人と遊びに出掛けた隙を突いて、僕は灯里さんと二人きりで話し合う場を設けた。

「あ、そっか。灯里お姉さんと、エッチなことがしたいのね? 良いわよ、このナイスバディを心ゆくまで堪能して♡」

「色ボケてる場合じゃないよ、灯里さん」

「へ?」

「灯里さんは、最近の真由美ちゃんについて、どう思う?」

「う~ん……何かちょっと怒りっぽくなったよね。どうしてだろう?」

 ボイン、ボイン。

「これ見よがしにおっぱいを揺らしながら言うのは確信犯だな?」

「うふん♡」

「ふざけている場合じゃないよ。僕はね、これ以上やさぐれて行く真由美ちゃんを見たくないんだよ。あの頃、汚れを知らない爽やかな美少女だった頃の真由美ちゃんに戻って欲しいんだ」

「翔ちゃん、人は変わるのよ」

 ボイン、ボイン。

「だから、おっぱいを揺らすな!」

「やん、怒らないで」

 灯里さんは言う。

「じゃあ、どうすれば良いの?」

「とりあえず、当面の間はおっぱいに関する話題は禁止ね。それから、灯里さんご自慢のおっぱいアピールも禁止」

「え~! 翔ちゃんはそれで良いの? おっぱい星人のくせに!」

「ちが……うとも言い切れないけど。とにかく、おっぱい禁止で」

「そうすれば、真由美は前みたいになるの?」

「まあ、少しずつ戻って欲しいかなって。お願い、協力してくれ」

 僕は手を合わせて言う。

「分かったよ、仕方ないな。当面の間、おっぱい禁止令ってことね?」

「うん、そうそう」

「じゃあ、今の内におっぱい味わっておく?」

 灯里さんは大きなバストを両端から寄せて、ゆさゆさと揺らして見せる。

「美味そ……いやいや、遠慮しておくよ」

「ふぅ~ん? 翔ちゃんこそ、灯里さんのおっぱいが無くて、我慢できるのかな~?」

「ウザいな。大丈夫だよ。僕は真由美ちゃんのことが好きなんだから」

「何それ、ジェラシ~!」

 どこまでもふざける灯里さんは放っておいて。

 僕は自分の中で確かな決意を固めた。



      ◇



「ただいまー」

 真由美ちゃんが帰宅した。

「おかえり、真由美ちゃん。夕ご飯の支度できているよ」

 僕は笑顔で言う。

「本当に? ありがとう、翔太くん」

 真由美ちゃんはニコリと笑う。

 そう、コレだよ。この素敵な笑顔こそ、真由美ちゃんなんだよ。

 僕は久しぶりに屈託のない彼女の笑顔を見て、ホッと心が和む。

「あれ、お姉ちゃんは?」

「ああ、灯里さんは先にお風呂に入って……」

「きゃっ!」

 ふいに響いた声に、僕と真由美ちゃんは振り向く。

「灯里さん、どうした……って!?」

「やーん! 痛い~!」

 なぜか知らんけど、灯里さんは扉におっぱいが挟まっていた。

 僕は愕然とする。そして……

 ブチ、ピキリ、と。

 僕がそーっと視線を向けると、真由美ちゃんは笑顔のまま顔に血管を浮かべていた。

「……ちっ、これだから巨乳……いや爆乳は。羨ましいことこの上ないね」

「ま、真由美ちゃん?」

「よいしょと……ふぅ~。おっぱいをケガしちゃった」

 灯里さんはそう言って、

「翔ちゃん、おっぱい慰めて?」

 カチャッ、と僕はコンロを止める。

「灯里さん、ちょっとこっち」

「えっ、やだもう。いきなり二人きりで押し倒す気? 良いよ、翔ちゃん……」

「違うよ、バカ。とにかく、来て」

 僕は笑顔で怒れる真由美ちゃんから離れて、灯里さんを壁際に追いやる。

 ドン、と。

「やだ、壁ドン? ちょっと古いけど、ドキドキしちゃう♡」

「だから、違うって言ってんだろ? あれか? やっぱり、灯里さんはそのバカデカい乳に栄養を吸われて、おつむが空っぽなんですか?」

「あ~、そういうこと言っちゃうの? 言葉の暴力だ~!」

「あんたはおっぱいの暴力がすぎる! 本来の真由美ちゃんを取り戻すために、おっぱい禁止だって言ったでしょうが!」

「あ、そうだった」

「ナチュラルに忘れていたのかよ……やっぱり、おっぱい栄養が行き過ぎて……」

 俺はうぅ、と涙ぐむ。

「とにかく、もう本当におっぱいは禁止にしてよ?」

「分かったよ、任せて」

 灯里さんは笑顔で胸を叩く。

 プルルン♡

「お前、絶対に分かってないだろ」

「ねえ、二人とも? どうしたの?」

 真由美ちゃんに呼ばれて、ハッとする。

「ああ、ごめん、ごめん。ちょっと灯里さんがね~」

 僕は笑顔で誤魔化しつつ、再び台所に立つ。

「よし、悪いんだけど、料理を運んでくれるかな?」

「うん、分かった。お姉ちゃんも手伝って~」

「りょーかい♡」

 灯里さんが舞い戻って来る。

「じゃあ、私はこれとこれを持って行くから」

 真由美ちゃんは料理の皿を持つ。

「よーし、それじゃあ、あたしは……」

 たぷん。

「「えっ?」」

 目を丸くする僕と真由美ちゃんの前で、灯里さんはいともたやすく料理の皿をおっぱいに載せた。

 その上で、両手でまた皿を持つ。

「よいしょ、よいしょ。こぼさないようにしないと」

 そして、灯里さんは見事に運びきった。

「ふぅ~。おっぱいが大きいと、便利だよね?」

 ニコッ。

 ブチリ、ピキリ。

「あ、あああぁ……」

 また静かな堕天使モードに入った真由美ちゃんに焦りつつ、

「灯里さん、ちょっと」

「へっ?」

 また、灯里さんを連行する。

「ちょっと、灯里さん? 何をしていらっしゃるんですか?」

「だって、おっぱいも使って運んだ方が効率が良いでしょ?」

「その気遣いはありがたいけど、今そんな効率性は求めていないから。真由美ちゃんのメンタルが優先なの!」

「もう、分かったよ~」

 灯里さんは口を尖らせる。

「良い、灯里さん? もし次におっぱいアピールしたら、もうこの世の終わりだと思ってね」

「あはは! そんな訳ないじゃん、翔ちゃんはバカだな~!」

「このお姉さんマジでうぜえ!」

 コホン、と。

「あ、真由美ちゃん。料理を運んでくれたんだ。ありがとう」

「うん。私は普通に手でしか運べないから。ちょっと時間がかかっちゃったよ」

 ニコリ。

「いやいや、そんな……ほ、ほら。早くみんなで食べようよ」

「うん」

「灯里さんも、早く」

「はーい」

 そして、僕らは3人で仲良く食卓に着く。

「じゃあ、いただきます」

「「いただきます」」

 そして、食べ始める。

「真由美ちゃん、今日はどうだった?」

「うん、すごく楽しかったよ。久しぶりに会ったけど、みんな元気そうだったよ」

「そっか。僕も今度、大樹を誘って遊ぼうかな」

「そうした方が良いよ」

 真由美ちゃんは微笑んで言う。

 良かった、これはナチュラルな真由美ちゃんの笑顔だ。

「んっ……はぁ、はぁ」

 ふいに、となりから何やら不穏な声が聞えた。

「えっ、灯里さんどうしたの? まさか、具合でも悪いの?」

「ううん、そうじゃなくて……おっぱいが重くて」

「えっ」

「でも、翔ちゃんが真由美を刺激しないために、おっぱい禁止だって言うから、テーブルに載せないようにがんばっているんだけど……もう、限界なの……はぁ、はぁ」

 ギギギ、と。

 僕は真由美ちゃんに顔を向ける。

 ニコッ。

 あああああぁ……

 これはもう、終わりだ。

 世紀末だ。

 ここで、僕の楽しい姉妹ハーレム生活は終焉を迎えるのだ。

「……お姉ちゃん」

 そして、真由美ちゃんは静かに低い声で言う。

「ほぇ?」

 一方、灯里さんは呑気にあざとい声を出す。

「ま、真由美ちゃん。落ち着いて……」

 僕は怯えつつも、必死になだめようとした。

「そんなに苦しいなら、遠慮しないでテーブルに載せなよ」

「「へっ?」」

 僕と灯里さんは目を丸くする。

「真由美、良いの?」

「だって、お姉ちゃんが苦しそうだし」

 真由美ちゃんはくすりと笑って言う。

「ごめんね、何か私のせいで気を遣わせちゃったみたいで。翔太くんも」

「あ、いや……ごめん。最近、真由美ちゃんがちょっとやさぐれ気味だったから。僕は本来の素敵な真由美ちゃんに戻って欲しくて」

「そっか……それなら、もっと簡単な方法があるよ」

「え? それって……」

 言いかけた僕の唇が塞がれる。

 四つん這いの姿勢になった真由美ちゃんが、身を乗り出して僕にキスをしていた。

 それはそっと唇を重ねるだけの、優しいキス。

 そっと離れると、真由美ちゃんは微笑む。

「これで、真由美ちゃんのメンタルは健全になります」

 自分でそう言って、真由美ちゃんは照れくさそうに頬を赤らめる。

 僕はぽろり、と箸を落とした。

「……かわいすぎ」

「や、やだ、恥ずかしい……」

「ね、ねえ。もう一回だけ、キスをして良いかな?」

「え? そんな、お食事中に……良いよ」

「じゃあ……」

 僕と真由美ちゃんが再び唇を重ねようとした時。

「……ぶす~っ!」

 その露骨な声に振り向くと、灯里さんが不機嫌そうな顔をしていた。

「何そのピュアラブな感じ。超うらやましいんですけど~?」

「あ、灯里さん?」

「ふん、だ。もう怒ったんだから」

 灯里さんは立ち上がると、壁の方に向かう。

 そして……

「ふん! ふん!」

 ドシン! ドシン!

 思い切り壁を叩いていた、おっぱいで。

「って、どんな威力だよ!?……ていうか、おとなりさんに迷惑だからやめろ!」

「お姉ちゃん、落ち着いて!」

 僕と真由美ちゃんが駆け寄ると、灯里さんが目をキランと光らせる。

「秘技・おっぱいワンツーパーンチ!」

 バシッ!

「ぐへっ!?」

 ベシッ!」

「ひうっ!?」

 僕と真由美ちゃんは灯里さんのおっぱいに殴られ、床に沈んだ。

「カンカンカーン! 灯里さんの大勝利ぃ~!」

 そして、灯里さんは一人で勝利の余韻に浸っていた。

「……ていうか、灯里さんもアホさ加減が進行しているよね」

「……う、うん。ちょっと、しばらく実家で更生させた方が良いかも」

 僕と真由美ちゃんが話していると、

「あ~、この期に及んでまだ二人だけでラブラブするのか~!」

 灯里さんは半泣きしながら、おっぱいをブルンブルンと揺らして迫って来る。

「食らえ、秘技! おっぱいプレース!」

「「えっ」」

 むにゅっ。

 その後の詳細は語るまい。

 ただ、言えることは……

 灯里さんのおっぱいは凶器だった。

「「……チーン」」

「やーん! 二人が死んじゃった~!」

 そして、とてもおバカである。







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