家出中の美女を拾ったら、僕が好きなあの子のお姉さんだった

三葉空

19 彼女はストレート

今日は真由美ちゃんと水族館デート。

「うわぁ、可愛い~」

水槽の中を自由に泳ぎ回る魚たちを見て、真由美ちゃんが言う。

そんな君の方が可愛いよ、なんて。

僕には言う度胸もない。

「ねえ、翔太くんはどのお魚が好き?」

「え? んーと……あの、イワシとか美味しそうだな。調理をすれば……ハッ」

僕が振り向くと、真由美ちゃんは頬をぷくっと膨らませている。

「翔太くん、ひどいよ?」

「ご、ごめん」

「何て、嘘。やっぱり、翔太くんは主婦力が高いね」

「男のくせにそれはどうなんだろうね」

「私は良いと思うよ。だって、そんな翔太くんを知って、ますます好きになった訳だし……」

頬を赤らめて言う真由美ちゃんを抱き締めた過ぎたけど、周りの人目を気にして出来なかった。

「真由美ちゃん、そろそろイルカショーの時間だよ」

「あ、本当だ」

真由美ちゃんは腕時計を見て言う。

「翔太くん、行こ」

僕の手を引っ張って言う。

今日の真由美ちゃんはいつよりも無邪気で、可愛い。

真由美ちゃんは意外と分かりやすいよなぁ。

それに比べて、灯里さんは……って。

何で僕は灯里さんのことを考えちゃうんだ。

今は大好きな真由美ちゃんとのデート中だぞ。

イルカショーは多くの観客が詰め寄せていた。

「はーい、みなさんこんにちはー!」

飼育係のお姉さんの視界の下、子供達が喜ぶイベントが進んで行く。

「そして、ジャーンプ!」

可愛らしいイルカが、ダイナミックに宙を舞った。

そして、水面に着した時、派手にしぶきが飛ぶ。

「きゃっ」

「真由美ちゃん、大丈夫……」

僕は目を丸くした。

「う、うん。平気だよ」

真由美ちゃんは言うけど……Tシャツが濡れて思い切り透けて……

「……これ着て」

僕はアウターを真由美ちゃんに渡す。

「あっ……ありがとう」

それから、真由美ちゃんは少し大人しくイルカショーを見ていた。







「今日は楽しかったね」

「うん。翔太くんと一緒だったから、すごく楽しかったよ」

「真由美ちゃん……」

僕はすごく嬉しいけど、照れ臭くて仕方がない。

「じゃあ、帰ろうか」

「……ねえ、翔太くん」

「ん?」

「今から、あたしのお家に寄らない?」

「え?」

「今日ね、お父さんもお母さんも、帰りが遅いんだって」

まじまじと真由美ちゃんが見つめて言った。

僕はゴクリと息を呑む。

「……ダメ、かな?」

「……行きましょう」

なぜか敬語になってしまった。







以前にも、来たことがあるけど。

あの時は、確か具合が悪くて半ばボーっとしていたから。

今の緊張はあの時の比じゃない。

「私のお部屋に行こ?」

「う、うん」

ギシ、ギシ、と階段を上る。

「どうぞ」

入ったその部屋は、とても女の子らしくて、可愛い。

「きれいにしているね」

「お母さんが掃除してくれたんだよ。後でお礼を言わないと」

真由美ちゃんは言う。

「えっと、その……」

ぎゅっと抱き付かれる。

「はぅ」

僕はつい変な声を出してしまった。

「……翔太くん。今の私の気持ち、分かる?」

「ま、真由美ちゃん……」

僕は彼女と見つめ合う。

そのまま、キスをした。

ちゅくちゅくと、甘い音を立てて。

「……翔太くん、上手だね」

「ほ、本当に?」

「お姉ちゃんに教えてもらったおかげかな?」

「うっ……い、今は灯里さんのことは言わないで……」

「ご、ごめんね。イジワルなこと言っちゃって」

「いや、大丈夫」

僕は改めて真由美ちゃんを見つめた。

「あっ!」

「えっ、どうしたの?」

「し、しまった……」

僕は思わずガクリとうなだれてしまう。

「あ、あれを用意するのを忘れてしまった……ごめん、真由美ちゃん!」

僕は情けなく思いながら、必死に頭を下げた。

すると、真由美ちゃんは何も言わずに、テーブルに置いたカバンを開く。

そこから、箱を取り出した。

「えっ、それは……」

呆然とする僕の前で、真由美ちゃんは口元をその箱で隠しながら、じっと見つめて来る。

「……あるよ、コレ」

ドクン、と胸が跳ね上がる。

「翔太くん……お願いだから、早く私を翔太くんだけの物にして?」






          

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