家出中の美女を拾ったら、僕が好きなあの子のお姉さんだった

三葉空

17 灯里さんのこと

「今から翔ちゃんを男にしてあげるよ」

ベッドの中で、灯里さんは囁くようにそう言った。

「そ、それって……冗談ですよね?」

「あたしは本気だよ?」

「け、けど、僕はまだ、真由美ちゃんと……」

「だからこそ、だよ。可愛い妹の初体験は最高のモノにしてあげたいでしょ? だから、あたしが翔ちゃんにレクチャーしてあげるの」

「で、でも……僕だって、初めては好きな子に捧げたいし」

少し照れながら僕が言うと、灯里さんは一瞬だけきょとんとした。

直後に、ぷっと噴き出す。

「あ、笑いましたね?」

僕は少しムッとした。

「あはは、ごめん、ごめん。何か、可愛いなって思って」

「可愛いって……男のくせに情けなくて悪かったですね」

「そんなこと思わないわよ。素敵だなって、思うよ?」

灯里さんは微笑みながらそう言った。

「そ、そうですか……」

その時、

「……う~ん」

真由美ちゃんの声がしてハッとした。

「ほ、ほら、早く戻って下さい。真由美ちゃんが起きない内に」

「また修羅場ってみる?」

「お断りです」

僕がキッパリと言うと、灯里さんはまた笑う。

「……真由美がうらやましい」

「えっ?」

「ううん、何でもない」

ちゅっ、と額にキスをされる。

「なっ」

「おやすみのチューだよ?」

灯里さんはニコっと笑ってベッドから下りる。

自分の布団に戻って行った。

それからすぐに、寝息が立つ。

「……はやっ」

一方、僕はすっかり目が冴えてしまい、全く眠れる気配はなかった。

おのれ、灯里さんめ。







休日。

僕は真由美ちゃんとデートをしていた。

「ねえ、翔太くん。あのお店に行きたいな」

「うん、良いよ」

僕は笑顔の彼女に付いて行く。

やっぱり、可愛いなぁ。

好きな女の子と結ばれて、休日にデートが出来るなんて。

僕は幸せ者だ。

「わぁ、この服かわいい~」

真由美ちゃんは目を輝かせて言う。

やっぱり、女の子はオシャレが好きなんだ。

「ねえねえ、翔太くんはどれが良いと思う?」

「そうだな~、こっちかな?」

「分かった。じゃあ、ちょっと試着しようかな」

真由美ちゃんは店内を見渡し、

「あ、すみませーん。試着したいんですけど、良いですか?」

「はい、どうぞ~……って、あれ?」

女の店員さんが目をパチクリとさせる。

「もしかして、真由美ちゃん?」

「えっ……あっ、恭子さん?」

「やだ、久しぶり~、元気にしてた~? 相変わらず、可愛いわね~」

「恭子さんこそ」

「うふ、ありがとう」

茶髪のショートヘアにウェーブをかけた女の店員さんは、笑顔で真由美ちゃんと話している。

「あれ、もしかして、彼氏?」

「そ、そうです」

「へぇ~、結構カッコイイ……というか、カワイイ系だね」

「うっ」

やっぱり、そう言われてしまうのか。

「あ、試着しても良いですか?」

「うん、どうぞ」

「ありがとうございます。じゃあ、翔太くん。ちょっと待っていてね」

「うん」

真由美ちゃんは笑顔で試着室に入って行った。

「君、名前は?」

ふいに、恭子さんという方に聞かれる。

「えっ? あ、翔太です」

「翔太くん。可愛いね~、年上にモテそうだ」

「あはは……真由美ちゃんのお友達なんですか?」

「うん。まあ、元はお姉ちゃんと同級生で、その繋がりなんだけどね~」

「えっ、灯里さんの?」

「あれ、灯里のことも知っているの?」

「ええ、まあ」

「じゃあ、こんなに可愛い弟分だろうから、いっぱいからかわれているでしょ~?」

「まあ、そうですね」

僕は苦笑する。

「けど、良かったよ。灯里も楽しそうで」

「え?」

「あの子、ちょっと病んでいるっぽい時期があったから」

「灯里さんが?」

正直、信じられなかった。

「あの子から聞いたかもしれないけど、あまり彼氏に恵まれて来なかったんだよね~。ぶっちゃけ、チャラいというか……浮気とか普通にしまくる彼氏でさ」

「そうなんですか……」

「灯里は見た目こそ派手だけど、中身は純だからさ。本当はそんな男よりも、翔太くんみたいな真面目で可愛らしい男の子が好みで、付き合いたいってずっと言っていたんだよ」

胸の奥が少し疼く。

「何か、最近そのショックもあってから家出したらしいけど、まあ元気になったみたいで良かったよ」

さらに胸の奥が疼いた。

灯里さん、家族との下らない言い合いで家出をしたとか言っていたのに……

「お待たせ」

気付けば、試着を終えた真由美ちゃんがいた。

「お、可愛いじゃん。ねえ、翔太くん?」

「え? あ、はい。可愛いよ、真由美ちゃん」

「ありがとう。じゃあ、これ買います」

「毎度あり~、友人価格でとびきり安くしちゃう」

「そんな、悪いですよ」

「良いから、良いから~」

女子2人はきゃっきゃと盛り上がっている。

一方、僕は頭の中で、灯里さんのことを考えていた。






          

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