家出中の美女を拾ったら、僕が好きなあの子のお姉さんだった
1 家出中のお姉さん
首の付け根の辺りで切り揃えられた、清楚かつ爽やかな黒髪のショートヘアが魅力的だ。
1年生の時から同じクラスで、何と幸運なことに2年生でも同じクラスになれた。
「あ、沢村くん。また同じクラスだね、よろしく」
笑顔でそう言われた時、激しく胸が高鳴った。
彼女は学園きっての美少女で、人気者。
だから、付き合うなんておこがましいと思っていたけど。
僕は何とか彼女にアプローチして付き合いたいと思っていた。
「翔太、また須藤のことを見ているのか?」
からかうように言ったのは、親友の川本大樹だ。
「うん、まあ」
「否定しないのかよ。純だね~」
「あまりからかわないで」
「けど、須藤は人気があるからなぁ。ライバルも多いぞ」
「うっ、そうだね……もしかして、大樹も?」
「いや、俺はもっと身長が小さい子が好きだから」
「そうだ、大樹はロリコンだった」
「誰がロリコンだよ」
そんな風に二人でバカ話をしていた時。
「沢村くん」
ふいに澄んだ声に呼ばれて振り向く。
いつの間にか、須藤がすぐそばに居た。
僕は激しく動揺しながらも、何とか平静を保ちつつ、
「す、須藤さん。どうしたの?」
「ほら、この前のアンケート集めているから。もう書いた?」
「あ、うん。はい」
「ありがとう。プリント係も楽じゃないね」
軽く舌を出す須藤を目の当たりにして、僕は頭がクラクラしてしまう。
「おい、翔太。今がチャンスだぞ。デートにでも誘えよ」
大樹が小声で囁いてくる。
「バ、バカ、何を言っているんだよ。そんなの無理だよ」
僕は声を上ずらせて言う。
「どうしたの?」
須藤は小首をかしげる。
「あ、いや、何でもないよ」
「そう? じゃあ、またね」
ひらひら手を振って、須藤は他のクラスメイトの所に行った。
「あーあ、このヘタレ」
「うっさい」
「けど、あいつ、良い匂いしたなぁ」
「確かに……って、変態じゃないか!」
「ハハハ、男はみんなそんなもんだろ」
「僕は大樹とは違う」
「じゃあ、お前は須藤をオカズにしたことがないのか? ちなみに、俺は数回あるぞ」
「……軽く20回以上は」
「ド変態じゃねえか」
「う、うるさい!」
◇
2年生になったからと言って、特別に変わることはない。
相変わらず、平凡で冴えない日々を送っている。
リア充からはほど遠い。
こんな僕をうらやむ奴なんていないだろう。
いや、一つだけ羨ましがられるポイントがあった。
「ただいまー……って、誰も居ないけど」
僕は今、高校生ながらアパートで一人暮らしをしていた。
高校生に上がった時、何となしに一人暮らしに憧れて。
まあ、大学生になったらするだろうなと思ったけど。
ちょっと背伸びしたいなと思って、ダメ元で親に頼んでみた。
『良いんじゃないか? 翔太にとっても勉強になるだろう』
『そうね~』
『マジっすか!?』
こうして、夢の一人暮らしが始まった。
とは言え、ワクワクドキドキしたのは最初の内だけ。
今ではすっかり慣れて、新鮮味など欠片もない。
しかも、実家にいれば母親にやってもらえる家事もみんな自分でこなさないといけないから大変だ。
まあ、僕は割と好きな方だし、部屋も男にしては整理整頓されている方だと思う。
毎日、自炊だってしているし。
今日の夕飯は炊き込みごはんだ。
スーパーでこんにゃくが安売りしていたから。
ニンジンとゴボウも合わせて細切りにして。
しょうゆとダシの素を入れて炊飯器さまお願いしますと。
そして、質素ながらもホカホカの美味しいごはんをいただく。
みそ汁はお手製のみそ玉をストックしているから楽チン。
適当にテレビを見ながら夕飯を済ませて、風呂に入って、スマホで漫画やゲームをして寝る。
それが僕のルーティーンだ。
けれども、今日はなぜか少し寝つきが悪い。
何度も何度も、須藤の顔が頭に浮かんでしまう。
「……コンビニ行こ」
僕はサイフをポッケに入れる。
パジャマ代わりのジャージ姿で外に出た。
コンビニはそうやって気楽に行けるから良い。
これも一人暮らしの醍醐味。
親と同居していたら無理だ。
高校生の身分だと。
「ん?」
行きつけのコンビニは徒歩5分ほど。
たどり着いて、僕はふと目を奪われる。
コンビニの前で屈んでスマホを弄っている女の人がいた。
素直にきれいだと思った。
髪はミルクティー色とでも言うのだろうか?
白系統の茶髪? 金髪?
それが長く背中の辺りまで伸びている。
顔はとても美人だ。
色白だし。
クラスメイトとは違う、年上な女性のその色香に、束の間、心を奪われかける。
けど、僕はすぐに須藤の顔が浮かび、何とか誘惑を逃れる(別にされていないけど)。
適当にお菓子とアイスを買って、コンビニを出た。
お姉さんはまだ居る。
あんな美人がこんな時間に無防備な状態でいたら、悪い男たちに捕まるんじゃないだろうか?
僕は立ち去ろうとするが、そんなおせっかい心が湧いてしまう。
普段、家事などをこなして主婦っぽくなっているせいだろうか。
「……あ、あの」
僕がそっと声をかけると、美女はスマホから目を上げる。
うわぁ、間近で見ると本当にきれいだ。
「こんばんは」
すると、意外にも微笑んでそう言われた。
「あ、こんばんは。あの、こんな所でしゃがんで、どうしたんですか? お腹でも痛いんですか?」
「ううん、違うの。家出しているんだ」
「あ、そうなんですか。どこか、ホテルとか、お友達の家に泊まったりとかは……」
「お金がないし、友達はみんな彼氏とイチャコラしているから」
「そ、そうですか……」
何か大人な感じだな。
けど、社会人と言うより、大学生っぽいな。
「……あの、良ければなんですけど」
僕は気付けば声を出していた。
「僕のアパートに来ます?」
「え?」
美女はわずかに目を丸くする。
しまった、いきなり声を掛けて、おまけにこんな誘うような真似をして、変な奴と思われただろうか?
最悪、おまわりさんを呼ばれて……
「……良いの?」
「え? あ、はい。こんなきれいなお姉さんを寒空の下に放っておけないので」
「きれいなお姉さん……か」
美女はすっと立ち上がる。
「そんな風に言われると、ドキドキしちゃうな」
月明かりを浴びる彼女が、さらにも増してきれいに見えた。
「あたし、灯里って言うの」
「あ、僕は翔太です。沢村翔太」
「翔ちゃんか」
「しょ、翔ちゃん?」
「ダメ?」
「い、いえ、どうぞお好きに呼んで下さい」
「くす、翔ちゃんは正義のヒーローなのに、可愛いね」
灯里さんはくすりと笑う。
「じゃ、じゃあ、行きましょうか」
僕は照れ臭くなって、彼女に背を向けて歩き出す。
「うん」
何も変わることがないと思っていた僕の日々に。
少し、いや、かなり変化が生じた時だった。
          
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