家出中の美女を拾ったら、僕が好きなあの子のお姉さんだった
5 急転直下
「……はぁ、良かった。今日は朝這いされていない」
僕は胸を撫で下ろす。
ベッドを軋ませて下りると、ソファーでぐーすかと眠っている灯里さんの下に向かう。
「……だらしね~」
毛布はグチャグチャで、女性のくせに足をおっぴろげている。
しかも、遠慮なしに寝息を立てているし。
まあ、エロいんだけどね。
「あ~、こっちも」
僕はふと、テーブルの方を見る。
昨晩、灯里さんはお酒を飲んで寝たので、テーブルの上もグチャグチャだ。
「全く……」
僕はため息を吐きながらテーブルの上を片付ける。
「ん?」
ふと、灯里さんのサイフが目に入った。
その中身も何だかグチャっとはみ出している。
「どこまでだらしがないんだ……」
呆れる僕は、ふと飛び出している中身の内、白いカードに目が行く。
それは免許証だと分かった。
「どんな顔で映っているのかな?」
人の持ち物を覗き見るなんて良い趣味じゃないけど。
日頃から灯里さんにからかわれてばかりだから、少しでも反撃の材料が欲しかった。
どうか、面白い顔で映っていますように。
「えいっ……って、普通だ」
普通に美人だった。
何だよ、つまらないお姉さんだな。
僕は内心でまあまあ理不尽な悪態を突く。
「……ん?」
ふと、僕の目は灯里さんの名前を見た。
須藤灯里。
瞬間、息が詰まりそうだった。
「う~ん……」
直後、灯里さんが悩ましい唸り声を上げて、僕は激しくドキリとした。
「……あれ、翔ちゃん?」
「お、おはようございます」
「あ~、もしかして……今日は翔ちゃんが朝這いに来てくれたの?」
「違います」
「もう、照れちゃって、可愛いんだから。良いよ、おいで♡」
「だから、違うって言ってるでしょうが!」
「うえ~ん、翔ちゃんが朝からコワイ~」
「良いから、そのグチャグチャの毛布ちゃんとたたんで下さい」
「へ~い」
口を尖らせていそいそと毛布をたたむ灯里さんに背を向けて僕はキッチンに向かう。
けれども、しばらく心臓は早鐘を打っていた。
◇
須藤灯里。
それが灯里さんのフルネーム。
そして、僕の想い人は須藤真由美。
「……これって、偶然なのか?」
僕は通学路をひたすらブツブツ呟きながら歩いていた。
「だとしたら、僕は……」
うっ、何か考えすぎて気持ち悪くなって来た……
「――沢村くん」
清涼感のあるその声を聞いて、僕の吐き気は少しばかり収まった。
「……す、須藤さん?」
「ちょっと、大丈夫? 顔色が悪いよ?」
「あはは、大丈夫だよ」
「だって、この前も具合が悪そうだったし。今日はもうお家に帰った方が良いよ」
「そ、そうかな?」
「私も付き添ってあげるから」
「えっ……いや、良いよ、そんな」
「だって、放っておけないもの」
普通ならこの上なく嬉しいし、ぜひとも一緒にお家まで帰りたい所。
けれども、今の僕の家には厄介なことこの上ないお姉さんがいる。
しかも、とんでもない疑惑を抱えたお姉さん。
そんな彼女と須藤が顔を合わせたら……
「うっ……」
「沢村くん!?」
「ご、ごめん……実は、僕のアパートの部屋が今すごく汚れていて……とてもじゃないけど、休める環境じゃないんだ」
「そっか、やっぱり一人暮らしって大変なんだね」
須藤は口元に手を添えてうーんと唸る。
「じゃあ、私のお家に来る?」
「…………はい?」
「ちゃんとお掃除はしているから、ゆっくり休めるよ」
「いや、そんな……」
むしろ、ドキドキして心が休まりません!
「す、須藤さん、それはさすがに申し訳ないよ。家族の人にも……」
「大丈夫、親には私から言っておくから。お姉ちゃんは……知らないけど」
須藤は少し怒ったような顔で言い、またすぐに俺を心配する表情に戻った。
「じゃあ、行きましょう」
結局、俺は須藤のありがたい提案に身を任せることにした。
◇
これが、須藤の家の匂い……って、そんなこと考えている場合か。
「ごめんね、ソファーの上で。本当はベッドを貸してあげたいけど……さすがに、私のベッドだと……」
「い、良いよ。十分だから、ありがとう」
「何か欲しい物はある?」
「いや、大丈夫」
「そっか……じゃあ、私は学校に行くけど。遠慮なくゆっくり休んでね」
「あ、ありがとう……」
ぎこちなく言う俺に対して、須藤は優しく微笑んでくれる。
ああ、やっぱり可愛いなぁ。
その時、ふいにリビングの扉が開いた。
「イエ~イ、久しぶりの我が家だぜ~」
瞬間、僕は激しく目を見開いた。
こちらに気付いた彼女もまた、目を丸くする。
「あれ、翔ちゃん? どうしてあたしの家にいるの?」
「えっ、翔ちゃん……?」
須藤は俺と、それから彼女を交互に見て戸惑う。
「うん、そうだよ。あたしと翔ちゃんは……もう深い仲なんだから」
僕はもう開いた口が塞がらない。
「……お姉ちゃん、どういうことなの?」
須藤真由美は彼女――須藤灯里さんを睨んで言う。
「うふふ、なーんか面白いことになっているなぁ」
緊迫した空気の中で、灯里さんは相変わらず飄々としていて。
僕は半ば気絶していました。
          
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