全能と永遠のパラドックス〜革命の章〜

もち猫ฅ•ω•ฅ時雨

2話 亀裂

『ふぁ〜よく寝た…今何時だ?』
周りを見渡すともう日が暮れ始めていた。
アラタは枕にしていた鞄からスマホを取り出し時間を見ると画面上に«17:30»と表示されていた。アラタはスマホをズボンの右ポケットに直すとゆっくりと立ち上がり
2、3回スボンの汚れを払い落とし鞄を手に取り梯を降り屋上の扉を開けた。その時、アラタの目の前にメガネをかけた黒髪の青年が立っていた。『おい、そこ退けよ帰れねぇだろ 』アラタは、初対面であるのにも関わらず強気な姿勢で青年の肩を強く掴み押し退けようとする。だが、見た目とは裏腹に青年はピクリとも動かなかった。アラタは、この青年に対して少しの恐怖と苛立ちを見せた。『退かねえと痛い目にあうぞ 』先程まで、身動き一つとらなかった青年が突然、アラタのワイシャツの襟をガシッと力強く掴み目の付近まで伸びていた髪の毛を左手で掻き分けグイッと顔を近ずけた。『火野江アラタ君…だよね?』アラタは、青年の気味の悪い瞳孔の開いたような目、血液の通ってないような色白く冷たい肌、真っ黒に変色した爪。それらを見て本当に生きてる人間なのかと疑いながらも強気な姿勢を貫いていた。『だったら何だよ?』その、不気味な青年は不敵な笑みを浮かべながら、その気味の悪い顔を更に近ずけた。『やっぱりかぁ〜僕の読み通りだったみたいだぁ〜その緋色の瞳』『それで俺に何かようか?』アラタがそう尋ねた瞬間、青年は鞄に忍ばせていたハサミを取り出し襲いかかってきた。『君は壊しがいがありそうだなってね!』『あっそ…話はそれで終わりか?』アラタは手に持っていた鞄でハサミ受け止めると青年の腹部目掛けて強烈な蹴りを叩き込んだ。青年は蹴られた勢いで後ろに仰け反った。アラタはその隙を逃すこと無く青年の右腕を掴み背負い投げ
コンクリートの床に叩きつけられた青年に更に追い討ちをかけるように顔面を蹴りあげ地面に転がった黒縁のメガネを踏みつけるとパキッとレンズが割れる音がした。『壊しがいがありそう?とか言ってたな?お前みたいな雑魚が俺に敵うわけないだろ…チッ、お前のせいでスーパーの値下げセール遅れちまったじゃねぇかよクソが…』アラタは踏みつけていたメガネを蹴り飛ばし急いで屋上のドアを開けて階段をかけおりていった。屋上に一人取り残された青年は顔に手を当て不敵な笑みを浮かべていた。
『フッ…ハハハ…アハハハハハ…やはり大佐のご子息なだけあって強いな〜』
青年はゆっくりと身体を起こすと鞄からスマホを取り出し1件の着信があったことに気がつき青年はその番号にかけ直すとスマホ越しに男の声が聞こえた。
«ジノ少尉でありますか?目標はどうなりましたか?捕獲できましたか?»
『ハハハ…俺とした事が目標にしてやられたよ〜やっぱり彼は大佐の血を引いてるだけあってそう簡単に捕まえれそうにないやっと…あ、第2目標のアストレア軍の主要施設はほとんど占拠しておいたから俺が合図を出せば何時でも攻め込めるようにしておいたから』
«第1目標の捕獲には失敗…まぁいいでしょう第2目標の制圧任務は完了しているのでしたら第4宇宙港のハッチを開けて頂ければこちらから迎えを寄越します»
『迎えなんて要らねぇからよぉ…俺に例の新型を乗せろよ…』
それについて聞かれた瞬間、電話越しの男が突然、頓狂な声で話はじめた。
«Alternative・Frameオルタナティブ・フレームの事ですか?調整は完了してますが少尉には先日カスタムチューンを施したschwarz・panzerシュバルツ・パンツァーがあるじゃないですか!それに軍上層部からまだ実戦許可は降りてませんし…少尉の権限であっても使用許可が…»
ジノはやれやれと手をあげて大きく溜息を着き暫くの間、沈黙した後に舌打ちをした
『んだよ〜んな固いこと言うなよ…俺の顔に免じて許してよ〜俺とお前の仲だろ』
«少尉と私はそこまで仲良くないでしょ!それにシステムも不明確な点が多いのに身体にどう言った影響を与えるかもわかりませんし…それに Arondite(アロンダイト)には微量ながらもTestament・Frameテスタメント・フレームも採用されているんですよ、そんな物に少尉を生半可な気持ちで乗せたくはありません!»
ジノは顎に人差し指を当て頷きながらクスクスと笑いだした。
『人間の潜在能力を限界まで引き出すっていうアレか…良いねぇ面白そうだ…それに、俺はあの人出会って以来いつだって死ぬ覚悟は出来てるから生半可な気持ちなんてものはねぇのよ』
«何を馬鹿な事を言ってるんですか!アレは少尉が思っている以上に危険な代物です…そんな物を積んだ機体に我が軍最強の戦力"Roundsラウンズ"の一人にましてや上層部の許可無しに乗せるなんて出来ません!»
ジノはそれを聞いた瞬間、突然、高々と笑い声をあげはじめた。
『俺がそう簡単に喰われるようなたまに見えるか?そうじゃねぇよなぁ…それに危険な代物って聞くと益々乗りたくなったじゃねぇかよ〜責任は俺が持ってやるから用意して置いてくれよ…この通りだ良いな』
«もし少尉に何かあれば。はぁ〜毎度ながら止めても無駄みたいですね。分かりましたよAronditeの準備はしておきます。ですが、クレア曹長にこちらから連絡はいれておきます。それから搭乗するかどうかを判断します。それまで待っていてください»
『クレアちゃんに話を通す〜はぁ…お前は本当に堅物だなぁ〜まぁ今回ばかしはそう簡単には行きそうにないようだなぁ〜しゃーねぇ少しだけ待っててやるよ』
«協力感謝いたします。では、後ほど»
男はそう言い残し電話を切った。その直後、ジノは不敵な笑みを浮かべ指を鳴らしスマホを鞄に入れると屋上のドアを開けてゆっくりと階段をおりていき
3階の踊り場に差し掛かった時、ジノは突然立ち止まり窓の外を眺めながら不敵な笑みを浮かべた。
『今夜は荒れるぜ〜ここが数時間後には俺の手によって火の海になると思うと…んんっ〜最っ高だなぁ〜アハハハハハハ』
その時、ジノの肩を何者かが背後から掴み
グイッと引っ張った。ジノが振り返るとそこには竹刀を持った小野田が立っていた。
ジノは不機嫌そうな表情で小野田の顔をじっと見つめた。
『おい、何時だと思ってる早く帰れ…んっ?なんだ俺の顔に何か着いてるか?それは、そうと見ない顔だな…生徒手帳を出せ』
ジ ノは小野田に言われるがまま鞄から生徒手帳を取り出すとソレを小野田に見せた。
『2年D組 火神楽ひかぐらジノ…聞いた事無いな〜本当にお前…んっ!お前うちの生徒じゃないな!それに、どうやって本校の制服とIDを手に入れたんだ返答次第では容赦はしない!』
小野田はジノのワイシャツの襟を掴み引き寄せた。
『先生〜酷いなぁ〜俺は先生の愛する可愛い生徒の1人じゃないですかぁ〜』
小野田はジノから放たれる得体の知れない異様なオーラを察しジノのワイシャツから手を離し急いでジノから距離を取るように後退りし竹刀を強く握り締め身構えた。
『俺の剣道の腕を甘く見ると怪我どころじゃすまないぞ…悪い事は言わん頭に手を当てて地面に伏せろ!』
ジノは溜息をつくと鞄の中から折り畳み式のバタフライナイフを取り出し軽快なフットワークで小野田の竹刀を交わし小野田を翻弄させ竹刀を蹴り飛ばすと直ぐに小野田の背後に回り込み小野田の目を手で覆い隠し首に冷たい刃を当てた。
『ねぇ〜先生〜もう一度聞きますね…俺はあなたの大好きな生徒の1人ですよね?』
小野田は首元に当てられた刃の冷たさに恐怖し体をガタガタと震わせながらも教師としての意地なのか分からないが首を大きく横に振るとジノは小野田の首に刃をグッと押し当てるとツーッと血が流れ出した。
『そっかぁ…残念だなぁ〜んじゃ死ね』
その直後、ジノは小野田の首に押し当てていたバタフライナイフで小野田の首をかき切ると噴水のように血が噴き出し小野田の首がボールのように階段を転がり落ちていった。そして、小野田の胴体は糸の切れた操り人形のように廊下に崩れ落ちると直ぐに胴体の周りに大きな血溜まりができた。
『あ〜ぁ壊れちゃったか…まぁ、ここに居ても何だしとりあえず早くヅラかるとするか』ジノはバタフライナイフに付着した血を振り払うと鞄の中に折り畳んだバタフライナイフを収めた。
『これももう要らねぇな〜』
ジノは自分の自分の髪の毛を掴むと勢いよく引っ張ると先程までの黒い髪とは一変し赤黒い髪が顕になり鞄の中から黒いフレームのメガネを取り出し、そのメガネをかけワイシャツの1番上のボタンを外しネクタイを緩めると手にしていた黒髪のウイッグを小野田の亡骸の上に被せると高々と笑い声を上げながら階段を飛び降りていくと2階の踊り場の辺りに転がっていた小野田の頭をサッカーボールのように蹴り飛ばすと小野田の頭は暗闇の中に消えていきゴンッと何かにぶつかった音が聞こえた。
『あーぁ、ここの制服結構気に入ってたのにさっきので汚れちまったよ〜このまま外出ると絶対、補導されるよなぁ…んーっまぁ、バレたらその時は、その時で殺っちゃえばいいか』
ジノは、そんな悠長なことを言いながら生徒玄関まで一気に走り抜けて行く。そして、生徒玄関にたどり着き靴箱付近に小野田の頭が転がっていた。そして玄関のドアは上と下に付けられた暗証番号付きのキーレックスで施錠されていた。
『早く新型を迎えに行かなきゃなぁ〜しゃーない…壊すか』
ジノは転がっていた小野田の頭を玄関口の窓ガラスに向けて蹴り飛ばしたがバンッと打ち付けられた音がなりガラスが少し揺れただけで割れることはなかった。
『そう簡単には、割れないよねぇ…しゃーないあれ使うか』
ジノは鞄の中から小型のショットガンを取り出すと銃弾を装填しショットガンの銃口をガラスに押し当てた。
『あんまり物とか壊したくなかったんだけどなぁ〜まぁ新型の為だから悪く思うなよ〜』
トリガーを引いた次の瞬間、零距離で放たれた散弾はガラスを粉々に砕け散り辺り一面に破片が飛び散った。ジノが外に出ると辺りはもう暗闇が支配していた。ジノはスマホを取り出し画面を見るとそこには «20:46»と表示されていた。
『あーぁ、玩具と遊んでたからこんな時間になっちたか〜走るか!』
満面の笑みを浮かべ地面を力強く蹴り走り出し3mはある校門を軽々と飛び越えた。ジノが走る速度はマウンテンバイクよりも早かった。人間の力では到底不可能に近いほどの速度で走っていた。
『オラオラどけどけ〜ジノ様のお通りだぁひやっほぅ〜今夜は風が気持ちいなぁ〜』
ジノは何かを思い出したように鞄からスマホを取り出し何処かに電話をかけると10代後半くらいの若い女が通話に出た。
『あー、オレだよ〜ジノだよ〜クレアちゃん聞こえてる〜今からそっち向かうから新型の用意できてんだろ?じゃあさプログラムだけ起動しておいてよ〜』
クレアと呼ばれた女性は、ジノの声を聞くなり呆れたように大きく溜め息をついた。
«ジノさん、貴方と言う人はまたそんな勝手な事を言って。どれだけ大変だったか分かりますか!軍上層部も貴方の天真爛漫ぶりには呆れて物も言えないって言ってましたよ!全くその通りですよ!本当に…でも、まぁ、大佐の手回しもあってアロンダイトの搭乗は認可されましたが…やっぱり私は納得行きませんけどね!ふん》
『まぁ、そうカッカすんなって後で頭撫でてやるからな…なっ、許してくれよぉクレアちゃん』
《頭を撫でてもらうだけじゃ嫌です…》
『あぁもう分かったよ帰ったらデートしてやるよ』
ジノが、そう言った瞬間、クレアの声がときめいたような声に変わったのがわかった。
《え、本当ですか?ヤッターどこ行きます?》
『どこ行くかは俺の気分次第だよぉん♪…おっ!ちょうどいい物があんじゃん〜やっぱり日頃の行いがいいからかな〜』
ジノは路上に止まっていたバイクに目をつけると鞄から謎の電子機器を取り出すとそれをバイクに取り付け手馴れた手つきで番号を打ち込んだ。するとバイクのエンジン音がかかりジノはヨシッとガッツポーズを取るとバイクに跨りハンドルを握った。
『んじゃ〜クレアちゃん後よろしくね〜』
《え、話はまだ…ツーッツーッ…》
ジノは、胸ポケットにスマホを直した。そして、アクセルを強く捻るとバイクは勢いよく発信し、スピードを落とすことなく車の僅かな隙間を通り最速で走り抜けていった。

一方その頃、アラタは部屋の明かりも付けずにベットの上でスマホの画面を眺めていた。
━━━━━━ アカネ━━━━━━
どうして俺の事ぶったんだよ 21:00 未読
《TEL 拒否》
━━━━━━━━━━━━━━━
『あぁぁイライラする!』
アラタは手にしていたスマホを壁に向けて投げようとしたその時、一通のメッセージが入った。アラタはそのメッセージを開いた。
『誰だ…コレ?』
━━━━━unknown━━━━━
火野江アラタ、今からここに来い
《お前は誰だよ?》21:15 既読
私が何者なのかは後で説明する。
今は指定した場所に早く来てくれ!
《誰だかわかんない奴が指名した場所なんか行くわけないだろ…それに俺は忙しいんだよ》21:16 既読
私を無視したら後でお前は、後悔する事になるぞ…それでもいいのか?
《俺を脅すつもりか?後悔なんてするかよバーカ》21:20 既読
━━━━━━━━━━━━━━
『とりあえず、ブロックしとくか…はぁイライラする』
それから、1時間程経過した。
アラタは、突然スマホをジャージの右ポケットに入れるとゆっくりと玄関の方に向かって歩いて行った。
『腹減ったしなんか買いに行くか…』
自宅のドアをゆっくりと開けると外は静寂な闇が支配していた。

後に、アラタは知ることになる。このメッセージの送り主が言っていた。"お前は、後で後悔することになる"その言葉の意味と重みを…

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