魔装戦士

河鹿 虫圭

16:響く呻歌声

「護衛任務なのは分かるけどよ……」

台地 陸丸は熱気溢れるレッスン室でほおずえをついてため息をつく……目の前では一人の少女が踊りながら歌を歌っている。ガラスを見つめながら曲を止めたりして振り付けを確認している。その様子を見つめながら海辺 海斗は陸丸に軽く蹴りを入れる。

「なんだよ……」

「しっかりと護衛しないとまた班長にドヤされるぞ。」

深いため息をつき、立ち上がる。今、魔法術対策機関第二班は美船 葵…及び護衛対象の護衛真っ最中である。

「ねぇ、あなた達。」

ふと、美船葵がこちらに歩いてくる。汗が額から頬まで流れ落ちる。汗を拭うと水を飲む。この動作だけでもパフォーマンスに見えるほど顔立ちが整っており美しい。ほうけている陸丸を横に海斗は返事をする。

「はい、なんですか?」

「邪魔……」

出口へ視線を誘導するように指を指す。

「でも、襲われてでもしたら大変ですよ。」

無言の圧力。そこからなかなか動こうとしない。ため息をつくと海斗は陸丸を引っ張りレッスン室を後にする。

「おいおい、大丈夫なのかよ。」

「一応僕らはただの護衛だ。彼女のレッスンには関係ないだろう。」

「でも……」

「仕方の無いことだ。」

2人はそのまま入口で護衛を続行した。その3時間後、美船 葵はレッスン室から出てくるとそのまま廊下を歩いて出口へと向かう。

「おい!待てよ。」

「待て、陸丸。彼女は今日の仕事を終えて帰るところなんだよ。なるべく離れて家の中に入ったの確認したら護衛は今日の終わりだ。」

「へいへい……仰せのままに……」

そして、距離を離したまま2人は美船を見守る……。第二班は事前にマネージャーから美船の家までのマップを渡されていた。正しい帰路、近道などなどマネージャーがまとめた美船の帰り道を持っている。もちろん仮屋の帰り道だが……
 明らかに美船は順路から外れたコースを通っている。

「はぁ、面倒だ。」

海斗は急いでその後を追いかける。陸丸はその後を急いで追いかける。

「だろ?だから言ったのに……」

「いや、これはこれでいい。走るぞ。なるべく視界から離さないようにね」

「相変わらず爽やかなこった。」

なるべく不自然のないように2人は追いかける。正直に言えば海斗や陸丸は美船よりも足は早い……本気を出せばパルクールなどを使って追いつける。が、そんなことをすれば目立ちすぎる。なので普通に追いつけるか否かの距離で走る。

「おい、ホントにこれでいいのか?」

「あぁ!この方が良い!」

裏路地へと入るのを見るとここでやっと2人は本気のダッシュで追いつく。

「はぁァァァ……!めんどくせぇ。」

「確かにその意見には同意だね。」

路地裏へ入ると、美船の姿はなかった...

「......!?」

二人で辺りをくまなく探すもやはりその姿は影も形もなかった...

「これ...お前もどやされんじゃあねぇの?」

「む~ん確実にそうだね...」

そして、海斗はあることに気づく...

「陸丸...今日は晴れの予報のはずだよね?」

「んなこと知らねぇよ、俺、天気予報見ないし...」

「はぁ...君に聞いた僕が悪かった...あれ、見てみろよ」

海斗の指さす方向は壁であった。いわゆる行き止まりというやつだ。ただ、その壁には不自然な穴が空いている。

「阿呆かぁ?壁に入り込んだとでも...」

「言いたいね。しかもご丁寧に穴が開きっぱなしだ。見えてみろ。完全に閉じるのにはまだ時間がかかると見た。行くぞ、陸丸。」

二人は顔を見合わせて壁に空いた渦へと飛び込んだ。




『ここはどこ?』

いきなり何かに引っ張られたと思ったら、気を失ってそれで...

「・・・・・・・・・」

音が聞こえる.....どこかで聞いたフレーズだ。その音を辿り、歩く...
暗い空間に誰かが何かを歌っているように見える.....目を凝らしてみるとソレ・・が見えた.....
魔族だ。濡れている肌、緑色の鱗.....そして、何よりも目が奪われたのがその醜い顔だ。
目は死んだ魚のように.....どこを見ているかわからない焦点の合わない瞳.....
歌う口からはとがった牙がそろっているのがわかる。

「........!?」

叫びたい声を我慢して様子をうかがう...そしてよく耳を澄ませて、ソレが何を歌っているのか聴く。

「ヴァァァァ~♬”ヴォォォ~♪”ヴァヴァヴラ“ラ”ラ”~」

音こそあれだがこのフレーズは私のよく知る人物との“二人だけ”のフレーズだ。
驚きが隠せずに歩みを進める…そして、思い切って話しかけてみる。

白音しらね?」

こちらに気づき振り向く...あちらも驚いた様子で喋る。

「ア” お” ぃ” ?」

「そう!葵!久しぶりだね?」

「……ゲテ」

「…え?」

「に”げて…!!」

はっきりその言葉が聞こえた。それと同時に頬の横を何かが掠める...それは私の後ろで凄い爆風と共に爆音が響く...

「え?」

再び前を向くと、顔面がゼロ距離だった...

「ひっ...!」

腰を抜かしてしりもちをつく。声こそ聞こえなかったが口がまた”逃げて”と動いた。その言葉通り私は道なき道を走った。

「はぁ...はぁ...はぁ...」

時々、後ろを振り向きながら走る。追いつかれていないことを確認しながら止まる。
そして、再び前を向いた瞬間…またもやゼロ距離顔面だった…
ニヤリと口角を上げると口を大きく広げる…

「いや…」

迫りくる無数の牙に恐怖を覚え、腰が抜け動けなくなる…

「いや…」

牙が腕に刺さるその瞬間…銃声が聞こえた。弾丸は私のすぐそばをすり抜け魔族の肩に命中する。

「葵さん!!」

声のする方を見ると護衛を任されている魔法術対策機関の人達だった。
直ぐに私の前に立ちふさがり銃を構えなおす。

「大丈夫か!」

背の高い不良っぽい子が私に寄り添う。もう一人の中肉中背の爽やかな子は魔族をにらみつける。

「さぁて…と…ここは僕に任せてくれ…」

何か小型の機械を取り出すと、ボタンを押す…分厚いデバイス状の物の上下から青い光が伸びる…
槍のような形になると素早く器用に美しく回す。

「魔法術対策機関第二班副班長、海辺 海斗…殺傷デストロイ開始します。」

向かい合う二人は何の迷いもなく走り出す…ぶつかるその瞬間…海斗君は体を回転させて魔族のうなじを狙った裏拳切りを繰り出す、それを読んでいたのか魔族は腰を曲げお辞儀のポーズで避ける...そのまま前宙をして、口からは水の弾丸を飛ばす…顔面に向かって来る弾丸を海斗君は紙一重で回避して見せる...そして、二人はまたも向き合う。

「フゥ…なかなかやるじゃないか...さて...陸丸!さっさと逃げてくれ!気が散る!」

我に返った陸丸は、有無を言わさずに美船をお姫様抱っこで担ぐ。

「ちょっと...!」

「女の扱いを知らねぇんだ!勘弁してくれ!」

当の本人もどぎまぎしているようだった。美船はそのまま抱っこされ陸丸は出口へと向かう。

「君は、出口わかるの?」

「わかる。足元見ろ。」

彼の足元には、透き通るような水色の足跡があった。

「これって...?」

「海斗だ。あいつの魔法で印をつけた。」

その足跡を目で追っていくと一筋の光が見えた。

「出口だ!」

「ちょっと、おろしてよ。」

「ん?おぉ...すんません。」

急いで美船おろすと海斗の帰りを待つ。

「それにしても、君たち足早いね。」

「あ?あたりめぇだろ?あんたみたいな護衛対象もいるからこうして魔法術だけじゃなくて身体も鍛えてんだよ。」

「へぇ、そうなんだ、それよりもさっきの子遅いわね...」

「確かに...いつもはこんな...」

そう言うと奥から海斗が吹き飛ばされてきた。思い切り表まで吹き飛んだ海斗は体勢を立て直してこちらへと走ってきた。

「逃げるぞ!」

美船 葵の腕をつかみ走り出す。

「ちょ、待ってよ。」

「おい!海斗!待てって!」




『まずい...小さなミスがここまで大きくなるとは...』

海辺 海斗は久々に焦っていた。あの魔族の魔力量と言い、戦闘能力と言い、全てがずば抜けている...

「はぁ...はぁ...」

噴水のある広場まで逃げてきた三人は、へたり込む。

「は、はぁ...はぁ...くっ…!」

海斗の姿をよく見るとボロボロだった。一番は腹部の傷が目立つ。

「君、それ…」

「いえいえ、こんなの唾つけとけば直りま…あいたたたっ…」

「海斗、無理しない方がいいんじゃねぇか?」

「ホント大丈夫だから…それよりも向こう来てるよ。」

こちらへ向かってくる魔族は体の後ろ腰のあたりから腹部にかけて水の円盤を作り出す…
それを素早く手の平へ乗せ、投げてきた。
空の切れる音と共にこちらへ向かってくる。

「よし!ここは俺が!」

陸丸はしゃがみ魔術式を書く...

「バカ!!それじゃあ間に合わない!!」

「え?」

陸丸の後ろに水の円盤が迫る...落ちる木の葉がそれに触れると、綺麗に割れる。
青ざめる陸丸…間に合わないと踵を返したその時、陸丸の前に人影が立ちふさがる。

「間に合った......」

その声は最近聞き覚えた声だった。

「ゆ、優吾君......?」

その姿は白い鎧に身を包んだ晴山優吾だった…力を込め、思い切りその円盤を投げ返す…それを素手で跳ね除け魔族は再び円盤を作り直す。その瞬間に白き狼の一撃が入る。魔族は吹き飛ばされざまに水弾を飛ばすが全てをバックステップで避け、距離を取る

「皆、大丈夫か!?」

「どうしてここが?」

「いや…天々望さんに二人のGPS位置を渡されたから…」

「マジ...?」

「ということは確実にドヤされるね...」

「...?まぁ、今はそんなことより、あいつ倒そう!」

2人は立ち上がり優吾の横へ立つ

「反撃開始だねぇ」

「指示くれよ副班長さん」

「よし!初めての共闘だ…が、がんばるぞぅ...」

三人は魔族に向かい構え直した。

To Be Continued……

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