魔装戦士

河鹿 虫圭

11:始まる日々

「はい!次はランニング5周ね!」

ここは、魔法術対策機関の敷地内にある1周600mとグラウンドである。その中で一人汗だくになりながら走る少年の姿があった。その姿は正しく晴山 優吾だった。半ば無理やり魔法術対策機関へ入れられた晴山 優吾は星々 琉聖、雪白 夢希、焔 凪に見守られながら走っていた。もちろん、これは体力づくりの一環であり罰でもなんでもない。600mのグラウンドを5周合計すると3kmの距離にもなる……ちなみに、この前に優吾は腕立て伏せを10回10セットつまり、100回の腕立て伏せを行っており体力はその時には限界を迎えていた。

「はぁはぁはぁ……や、やばい……」

フラフラになり数十分後にやっと目標数を達成した。汗が滲む地面を見つめ地面に仰向けに倒れ込んだ。

「さぁ、優吾君、次に行こうか。」

夢希と凪はもう既に次の訓練所へ歩いていた。琉聖に手を差し出され、その手を掴み立ち上がる……

「毎日、こんなこんなことをしているんですか?」

「そうだね。でも、今日は優吾君に合わせて半分くらいの量にしてるんだよ。」

一瞬思考が止まるかと思った優吾は再び琉聖の後を追う……。

「二人はね、小さい頃からやってたからね遊びみたいなものなんだよ。」

「それでもすごいですよ。さすがだなぁ……」

次に優吾が次に来たのは体育館のように広い空間だった。床一面には体操用のマットが敷かれており少し柔らかくなっている。
その広い空間に二人の影が何かをしていた。

「ほっ!やっ!せいっ!」

「……っ!」

そこでは夢希と凪が組手をしている最中だった……夢希が拳を素早く突くが凪はそれを軽くいなす……凪が隙を着き夢希の腕へ関節技をかける……夢希はその体制から凪へと反撃をした。足を掛け凪の体制を崩すが凪はそれをもろともせずに立て直す。そんな素早い攻防を優吾はただ、唖然と見ることしかできなかった。

「さて、次はあれ、やるよ。」

何も分からない優吾はまず琉聖に蹴りや正拳突き、拳のかわし方、いなし方なんかを教わった、その後に琉聖と軽く緩く組手をして次に琉聖は優吾と夢希に組手をするように言った。

「よ、よろしくお願いします。」

「えぇ、いいですよ。」

夢希は微笑んだ、もちろん目は笑っていない。冷たい視線や感じたことの無い感覚を拭えないまま優吾は夢希と組手を開始した。

「はぁぁぁ!」

優吾の拳が夢希を捉えることはなく、夢希は優吾の拳を軽くいなしたり、避けたりしながら優吾の間合いへ入ってゆく……隙だらけの体へ夢希の前蹴りが入る……その威力に優吾の体は吹っ飛び床へ叩きつけられる。

「うげっ!」

背中から落ちると優吾はそこへうずくまる。数分して立ち上がると無理やり笑顔を作り涙を流す。

「す、すげー!痛いっ!」

「大丈夫ですか?」

心配そうに夢希が近づくが優吾は痛さが我慢できないのか飛び跳ねたりして夢希を制止した。

「だ、大丈夫っ!そ、それよりも続きしなくていいんですか?」

そこへ琉聖がストップをかける……

「そこまでだね。優吾君ちょっと休もうね。」

琉聖は優吾を床へうつ伏せに寝かせると腰や背骨、首を触り骨が折れていないかを確認する。

「うん!大丈夫良かったね。」

そして、視線を夢希へ向け優しく叱る。

「危ないじゃないか夢希ちゃん……優吾君初心者だからね。次は気をつけてね?」

しゅんとわかりやすく落ち込むと夢希は頭を下げ凪を誘って組手を再開した。

「はははっ……俺ってめっちゃ弱いですね。」

「そりゃそうさ。君は今日から訓練する初心者君だからね。でも、今の攻撃は優吾君でもかわせたんじゃない?」

「いや、無理ですよ。」

「そっか、それは仕方ないね。」

そして、琉聖は優吾に世間話のように夢希の話をした。

「夢希ちゃんね。一回男の人に盾にされたのしかもここ2、3年前にね。」

「へぇ……え!?」

その言葉を聞いて凪の言っていた事を思い出す。そして、行動や言動を思い返す。

「俺、随分最低なことしてますね。しかも、無神経に」

「そうだね。でも、優吾君なら夢希ちゃんのことちゃんと心開かせられると思うよ。」

それだけ。

ただ、それだけのことを言って琉聖さんは夢希と凪の組手にストップをかけた。数時間の訓練の後にやっと家へと帰った優吾はベッドへと倒れ込む。

「俺なら……か……」

本当に俺に心を開かせることはできるのか………




翌日、学校の帰り道筋肉痛の痛みのせいで歩くのもしんどくなっていた。そういえば、今日は新島とか寺内とかいなかったなと不思議がりながら魔法術対策機関本部へと入る。昨日と同じメニューをする。組手の時に優吾は筋肉痛が辛いと今日は休むことにした。

「まぁ、やったばかりだからね…無理や無茶はダメね。」

琉聖も理解してくれたうえで休ませて貰えた。数分後、本部内全てに警報音がなる。

「夢希!凪!優吾君!行こう!」

琉聖、夢希、凪の目付きが変わり優吾はその三人について行く……急いで隊服に着替え車へ乗り込む。凪は事件が発生しているマップの位置を確認して琉聖に報告する。

「ここ……」

「OK!わかった!」

琉聖は思い切りアクセルを踏み車を現場まで飛ばす。事件が発生しているのは町の皆が1番利用する大きな道だった。現場には何台もの車が玉突き事故を起こしていた。そして、車から上がる黒い煙の中からは人影が出てきた。
 思ったよりも痩せた男が出てきたことに優吾は驚いた。

「そこの男!止まりなさい。」

夢希がメガホンで男を制止する。男は声に気づきこちらへ魔法を打ってきた。

高圧水球ハイドロブラスト……」

爆発音と共に男は姿をみるみる替えていった。銀色の鱗に身を包み、顔はとんがり頬にはエラが出てきた。

「魔族か……凪彼の情報は?」

「はい……標的ターゲットリストにあった、脱獄犯の鮫島 界さめじま かいだよ。まぁ、捕まった理由しょぼいけど……脱獄犯だよ。」

「わかった。で、捕まった理由知りたいんだけど。」

「えーしょぼすぎて笑いそうになるよ。」

「いいから!」

「はぁ、わかったよ……彼は漁港にて釣り糸や釣り針の窃盗を繰り返し逮捕されてその間に第三班が攻撃にあって拘束を解除して逃がした……って書いてある。」

「ん〜別にしょぼくはないね。」

琉聖はさらに凪へ確認する。

「でさ、凪ちゃん…殺傷デストロイ出てる?」

「いや、出るわけないじゃん窃盗の脱獄犯だよ?殺したら逆にこっちが悪者にされるよ……」

ため息を着くと凪は鮫島へ近づく。

「凪ちゃんがやる?いいよ。」

琉聖は凪へ丸投げして住民の避難を優先した。

「さて、と……みなさーん!!こちらは危険ですので逃げてくださーい!!」

車から出てきた人々は琉聖の指示に従いその場から速やかにいなくなった。

夕日の輝く戦いが始まる……凪は武器を持たずに拳を構える……鮫島が構え終わる頃には凪は鮫島の背後へと迫り腕を掴んだが、鮫島の圧倒的に強い力に再び距離をとる。

「どうした?来いよ。」

「嫌だ、まぁ、でも止まってくれたら行ってあげてもいいかな」

「そんなことか……ほら俺は、動……かない……ぞ?」

鮫島の動きが本当に止まった。まるで時が止まったかのように……そして、優吾は鮫島の影が異様な方へ伸びているのを確認した。凪から伸びた影は鮫島と繋がっており、その影が鮫島の動きを止めていることに気づいた。

「これも、魔法?」

「そうだね。凪は闇と炎属性の魔法を使える。そして、凪は宵闇狐ナイトメアフォックス半獣ハーフだ。闇魔法は代の得意さ。無詠唱でもこのとおり威力が違うね。」

全く動かなくなった鮫島に凪は拘束具をつけようとしたその時、太陽が完全に沈みあたりは真っ暗になった。影の拘束がなくなり再び鮫島は自由を取り戻した……

「くっ……」

力で負けている凪は鮫島からまた距離をとる……睨み合いが続くと次は夢希が前に出た。

「遅いです凪……私がやるので拘束具を貸してください。」

夢希へ拘束具を投げると見事にキャッチし鮫島をその素早い動きで翻弄する。そして、後ろへ回り込むことに成功するとそのまま拘束具をつける……瞬間、鮫島は脅威の反射神経で夢希を捕まえる。首を鷲掴みにするとそのまま握りつぶすほどの力を入れる……それでも夢希は余裕の表情を崩さない。

「いいんですか?私を捕まえても……」

「こいつ、殺してやるよ。」

力が徐々に入ってゆく……夢希の首へと指がめり込むその時鮫島の手は徐々に凍っているように思えた。否、凍っていった……肩まで白く凍ると鮫島はさすがに夢希を手放せざるおえない……凍った腕を抱きうずくまる……

「どうしました?殺すんじゃないんですか?」

夢希を見上げる鮫島の目に入ったのは美しい白い羽だった。雪のように輝く羽は周りに冷気を宿し地面も凍っていた。

「琉聖さん……夢希はなんの半獣ハーフなんですか。」

「そうだね……雪月鳥アイスバードだったかな。そんな名前だったと思う。氷の魔法が得意でマイナス数十度以下まで下げることができたと思うよ。」

地面から足まで凍りつくと夢希は凍りついた鮫島の腕に拘束具をつける。こうしてこの事件は消息したかに思えたが、鮫島は諦めが悪く、拘束具をいとも簡単に破壊した。


「……っ!?」

驚愕し喋る暇もなく夢希は鮫島に腕で拘束された。

「コロしてやるよ!!」

完全に理性が無くなった鮫島は加減もせずに夢希の首を絞める。

 その光景に琉聖や凪は走り出すが、それよりも早く走り出していた者がいた。

      晴山 優吾だ。

一心不乱に走り、鮫島へ突っ込む……拳は鮫島の背中へ当たるが米粒ほども痛くないその拳に鮫島は笑う。

「はははっなんだよ。そのヘナチョコ拳はよ。」

「魔装!」

優吾が大声でその言葉を言い放つ……小さな鉄の塊が周りを浮遊し優吾へ突き刺さる。鮫島へ当たっている拳はさっきの倍の力が入り夢希を離し、鮫島は吹っ飛んだ。

「……っ!?なんだと!?」

さっきとは明らかに違う力に鮫島は一気に戦闘態勢へと戻る。それも束の間、優吾はもう既に鮫島の懐へ入り、また拳をぶつける。後方へまた吹っ飛ぶと鮫島は目を離さずに次は優吾を掴んみそして、自動車の塊の中へ突っ込むと大爆発が起こる。

「はは……やっと、やったか?」

「気炎万丈が如く!」

その言葉に鮫島は驚く。さすがの鎧もあの爆発じゃ死ぬんじゃないのかと。

「燃える拳!」

その炎の中からは赤き牙狼が誕生する。

「貫くは信念!!」

鮫島は背を向けびっこを引き長は逃げる。

「我、炎を纏いて、悪を清める!」

その場の炎全てが優吾を中心に渦を巻き吸収され、円を描き空気が爆発した。

「炎化……魔装……」

背を向ける鮫島へ優吾はクラッチングスタートの体勢をとる……

「優吾君!彼は殺しちゃダメだよ!」

足が炎に包まれると走り出した。鮫島を膝蹴りで宙へとあげると追い打ちで飛び蹴りを叩き込む……今回は何故か爆散せずにそれでも優吾は本気で蹴りを叩き入れた。
四肢は爆散せずに鮫島は地面へと落ちる……琉聖は生死の確認を行い安堵する……

「はぁ、良かった……よし、拘束」

拘束具を両手につけて無事、本部へと送還される。

その後、優吾は魔装をとき、琉聖にしこたま怒られたのでした。

「死んでないからいいじゃないんだよね……わかるかな?」

優吾は固く誓った。琉聖さんを本気で怒らせるのは辞めようと……琉聖さんの指示はちゃんと聞こうと……

To Be Continued……

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