魔装戦士

河鹿 虫圭

4:白狼

お腹が熱い。息ができない。腹部から抜かれる腕の感触と言ったら気持ち悪いの一言では言い表せないほどに気持ち悪い。口からも血が出て腹からも血が出る。ドバドバと止めどなく……あれ?俺、死ぬのか?かっこよく女の子の身代わりになれると思ったのに?というか、身代わりになるのは相手が動ける時だよな。バカか……俺は……。
    
 目の前には蜘蛛の姿を象ったような男がいて今、俺を喰おうとしている。膝から崩れ落ち腹を抱えて俺は血まみれの手で首から掛かっているお守り・・・を握りしめた。あぁあ……こんなんだったら最初から身代わりになんてならなければ良かった……な……ごめん………愛華……俺が大人を呼んでいれば……本当……ごめん……
 遠のく意識の中…俺は愛華の姿を見て瞼を閉じた。

       終わった。

何もかもが、努力が、人生が、終わったのだ。全てが水の泡になる。

       『本当に?』

       「誰……だ?」

      『誰でもないよ。』

   『君自身さ……わかるだろう?』

       「俺……自信?」
      
     『そうさ。君自身さ……』

     『変わりたいのだろう?』

     『変えたいのだろう?』

『変わればいいさ。君は知っている。変われる方法を……』


意識が覚醒した。あと一歩で蜘蛛男に食されようとしている。大きく開いたグロテスクな口……俺はその口から痛いのを我慢して転がりながら回避した。

「キシシッ……マダ、そんな二ウゴケたのか?」

血が止めどなく出てくるのは変わらないが、俺は立ち上がり蜘蛛男と向かい合った。震えは未だに止まらず、痛みのせいと恐怖のせいで冷や汗が止まらない。それでも、とにかく愛華が居るこの場所よりも遠くへと考え、林の中をびっこを引きながら出る。
 蜘蛛男は遊んでいるように俺のあとを追ってくる。人の気が全く無い第一公園へと移動してきた。体力や気力は限界を迎えていてもうここから歩く気にはなれなかった。後ろから足で突き飛ばされ、蜘蛛男に首を掴まれてこれで最後かとそう思った時、首に掛かっているお守り・・・が光り輝いた。それに目潰しされ、蜘蛛男は俺の首を手離す。光は段々と強くなり、そして、次第弱くなった。

「ナンダァ?なにがァ起こってヤガるぅ?」

俺の目の前というか俺と蜘蛛男と周囲には長さからして、3~4cmの鉄の塊が浮かんでいた。

「なんなんだ。この鉄の塊達は……」

『君は知っている。変われる方法を……』

その言葉を思い出した。そして、頭に浮かんだのは戦士の姿。白く猛々しい狼の様な姿の鎧の戦士が薄らと頭に浮かんだのだ。それと同時に魔法の簡易詠唱が浮かんだ。
蜘蛛男と対面し、俺はその簡易詠唱を唱えた。

「魔装……」

その簡易詠唱と共に鉄の塊達が、俺の体へと突き刺さる。不思議なことに痛みを感じない。刺されていると言うよりも包まれている感じに近いのだ。俺の体に合わせて、鉄の塊達は形を変えてゆく。手に、足に背中に胸に顔に頭にどんどん突き刺さってくる。それはもう地面から砂埃が飛ぶほどに荒々しく強く。

「くっ、ナニがオコッテいるのかワケがワカラネェ!!」

砂埃が飛び終わると中からは弱々しい少年ではなく白い鎧の異形が現れた……当人も理解が追いついていない様子で、腕や足、背中なんかを一通り見ている感じがした。

「なんなんだ。これ。」

「キシィ……!ナンダよ!?……てめぇハァ!」

蜘蛛男の拳が白い鎧の右頬にまっすぐ綺麗に入る。が、白い鎧はその拳を受け止めカウンターを胸に叩き込む。その反射神経に距離を取り、観察する。

「すごい……!今の、俺がやったのか……?」

攻撃を受け止めカウンターを叩き込んだ当人は驚きと歓喜ではしゃいでいた。その様子に蜘蛛男堪忍袋の緒が切れる……

「キシャァァァ!」

複数回の乱打攻撃も全て躱し、的確に攻撃を入れていく。

『見える……相手の人外離れした動きが、そして、物理攻撃でダメージがあたえられている。』

優吾は自分の攻撃や体捌きが明らかに人間離れしたものだと喜んでいた。すると、蜘蛛男はもう一度乱打攻撃を仕掛けてきた。すかさずこの攻撃も躱し、カウンターを決めようとしたのだが、蜘蛛男は優吾の隙を見逃さなかった。すぐさま、カウンター攻撃の上からカウンターをねじ込んだ。右手の突起物で優吾の左胸を刺し、そのまま林まで持ち上げて行った。林に入ると蜘蛛男は姿を消し、素早く動いて優吾を翻弄した。その素早い動きに優吾は成す術もなく攻撃をただひたすら受けるしか無かった。
そして、とうとう優吾は地に膝をつき、鎧が粉のようになって消えてしまった。

「キシャァァトドめだァ!」

その時、片目に大きな衝撃と痛みが走った……その銃声と共に蜘蛛男は片目を押さえ込み弾丸の来た方向を向く。そこには、魔法術対策機関の隊服を着た男性がこちらも隊服を着た女の子2人と計3人で銃を構えていた。

「魔法術対策機関だ。これ以上市民には手出しさせない。」

「お兄様、最近この辺で食人行為を行っているのは恐らく、あいつです。」

「そうか、なら殺傷しなければならない。」

魔法術対策機関…その第一班の星々 琉聖ほしぼし りゅうせい雪白 夢希ゆきしら ゆきそして、焔 凪ほむら なぎは通常の銃をしまい、特殊科学武器通称SGLを取り出し構える。

標的ターゲット再確認……こちら第一班……。殺傷デストロイ執行します。」

第一公園内に渇いた銃声が響き渡る。

To Be Continued……







おまけ(お好みで読んでください。)
【Report】

【SGL】

魔法術対策機関が開発した特殊科学武器。
魔力と電気モーターで動いており、弾丸の射出時はモーターがいつもの倍の速度で回転する。さらに、ダイヤルがそれぞれ、【S】【G】【L】とあり、【S】はソード(剣)【G】はガン(銃)【L】ランス(槍)と3種の武器にすることが出来る。普段は手のひらサイズのイメージとしては少し分厚い携帯電話のような形をしており、魔法術対策機関本部より殺傷デストロイの命令が出ているか、もしくは標的ターゲットとされている犯罪者や魔族、魔獣にしか使用することができない。

星々 琉聖ほしぼし りゅうせい

魔法術対策機関第一班班長。
2人の義理の妹がおり、妹達とは同じ第一班で行動を共にしている。ちなみに、第一班は全員で3人。

雪白 夢希ゆきしら ゆき
半獣ハーフの少女。氷属性の魔法、魔術が得意。諸事情により、6歳の時に星々家に養女として入ってきた。性格はドが着くほど真面目で琉聖のことを「お兄様」と呼びしたっている。血の繋がらない妹がいる。嫌いなものは琉聖以外の男…。

焔 凪ほむら なぎ
半獣ハーフの少女。闇、炎属性の魔法、魔術が得意。雪白と同じ理由で養女として星々家に入ってきた。雪白とは同い年である。性格は無口で面倒くさがり屋。ただ、雪白や星々のことになると面倒くさがり屋の焔でも、ちゃんと動く。琉聖と雪白とは血の繋がりのない義兄妹。















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