魔装戦士

河鹿 虫圭

3:帰り道、捜し物、そして……

「痛って……」

帰り道。蹴られたり殴れたりしたところが痛む。お腹や頬を擦りながら自転車を押す。多分、治るのに2~3週間かかるだろう。
 ふと、前を見ると愛華 絵美まなか えみが歩いていた。声をかけようとしたが、愛華は早足で第一公園に入って行った。不思議に思い後を付いて行った。すると、林の中やベンチの下を覗き込むといったこれまた不思議な行動に俺は彼女と交わした約束を思い出す。すぐ自転車を停めて彼女のそばに駆け寄った。

「愛華……さん……て、手伝うよ。」

最初は驚いた様子だったが、愛華は少し嬉しそうにただ仏頂面は崩さずに小声でありがとうと呟いた。

「なんか言った?」

既に学生証捜索に取り掛かっていた優吾は愛華が何を言ったのか聞き取れていないようだった。

「バカって言ったの。早く見つけてよね?」

「……?わかった。」

なぜ怒られた?と優吾は首をかしげ、再び学生証捜索に取り掛かった。
 日が沈む頃……学生証がなかなか出てこないことに2人は頭を悩ませていた。休憩がてらベンチに座り空が暗くなるを見届ける。

「今日はもう遅いし、また明日探す。」

愛華は販売機で買ったレモンティーをゆっくり飲む。

「それだったら、俺も手伝うよ。」

「え?別に1人で探せるし、多分明日になったら出てくるでしょ?」

それもそっかと2人でクスクスと笑らいあった。不意に愛華の顔が強ばる。優吾は不思議がってどうしたのと声をかけたが愛華は人差し指を立て静寂の合図を出す。

《どうしたの?》

携帯電話のメモアプリを開きその文章を愛華に見せる。優吾の携帯電話を取り、文章を打ち、優吾に見せる。

《叫び声》

「……???」

わかってないように見えたのか愛華は再び優吾の携帯電話に文章を打つ。

《耳をすませてみて。》

文章通りに耳をすませる。すると、第一公園との間の林の中で叫ぶような声が聞こえた。途端に、愛華はこの林へ走り出そうとしていた。

「待って……もしかして、行くの?」

「当たり前でしょ?助けないと……あなたはどうするの?怖いなら大人でも呼んできてちょうだい。」

再度走り出そうとした愛華の背中を追いかけようとした瞬間だった。強い風が優吾を包むように吹いた。そして、激しい頭痛と共に頭の中に直接映像が流れ込んできたのだ。

「あ……ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙頭が……!」

優吾はその場で頭を抱え、地に膝をつく。その映像に映るのは腹を引き裂かれ、絶命している人間の姿だった。誰かは分からないが確かにそれは人間の姿だ。

『なんなんだ……こんな時に……頭が割れそうだ。』

映像が流れ終わると頭痛が引いていき次は幻聴が聞こえ始めた。

「行け……少年よ……少女に危機が迫っている。」

「誰なんだ!どこにいる!今の頭痛と映像はあんたがやったのか!?」

辺りを見回して声の主を探そうとするが耳に直接響いているようで誰も周りにはいない。そして、また頭痛と共にさっきの映像が流れる。

「ま…た……くっ……なんだよ…これ……魔……術……の類か?」

頭痛はそこに行かないと引かないような気がして優吾は再び来た頭痛と共に愛華を追って林へと千鳥足で向かう……程なくして林へとたどり着いたら頭痛は引いていき目の前にはあの光景が広がっていた。裂けた腹部……そこから流れ落ちる五臓六腑……顔面は骨格も分からないほど潰されておりその原型は既になくなっていた。

「うっ………」

血なまぐさい臭いに口を覆い隠しえずく……込み上げる胃酸を無理矢理喉の奥で押さえ込み、死体を作ったであろう殺人鬼のその足跡を辿る。2~3m辺りで誰かが会話しているのが聞こえてきた。

「離して……!あなた、何したかわかってるの?」

「キシシッ……知らネぇなー俺はただ、食事・・しただけだゼェ?」

明らかに、愛華が殺人鬼に襲われている最中であった。優吾は足がすくんでその場で尻もちを着いてしまった。愛華が襲われていた相手はどう見ても人間ではなく、異形の者であった。暗い緑色の肌に八つある黒い複眼……それは蜘蛛のような姿をした魔族・・であった。幸いにも尻もちをついた音は聞かれていないらしく蜘蛛男は愛華に夢中だ。

「お前、メスのクセにオスに近いニオイをダシテいるのハナゼダ?」

「うるさい!離しなさいよ!このバケモノ!」

「バケモノ……?」

その言葉に蜘蛛男は少し黙り込み異様に強い殺気を放つ。その殺気を感じ取ったのか愛華の表情は恐怖に染まっていった。

「オレ……だってなァァ……!こんな……スガタになんか……なりたくなかったんだよォ……!」

静かなる憤怒の中、蜘蛛男は愛華の手の平に手首の側面に生えた鋭い突起物を突き刺した。その刺すような愛華の叫び声は公園にまで響いていた。蜘蛛男は甲高く嗤い次は腹部に突起物を刺しさっきよりも大きな断末魔に近い叫び声があがる。優吾はその叫び声に冷や汗をかき動くに動けない状態になってしまった。

『動けない……ダメだ。こんなに近くにいるのに、こんなに苦しんでいるのに俺は……何もできないのか……?』

涙が込み上げてくる。口を覆い隠しバレないようにすすり泣く。その間にも愛華は苦しみ叫び声をあげる。蜘蛛男は嗤いその行動は何度も繰り返される。そのうち、愛華は痛みで気を失い叫ぶことは無くなった。

「ナンダァ?もう鳴けないのかァ?」

つまらねぇとぼやき蜘蛛男は大口を開き、愛華を食べようとしていた。あと少しで愛華が食べられてしまうその時、蜘蛛男の後頭部に軽く衝撃が来た。地面には黒い板が落ちていた。その正体は数年前に流行った旧型のデバイスフォンであった。その阿呆のような行動をした奴は誰だと投げられた方向に目を向ける。そこには震えが未だ止まらず、手の甲や額に汗すら浮かべる弱々しい少年だった。

「ナンダァ?てめぇハァ?」

「お、俺が誰であろうとお、お前には関係ないだ…ろう?」

晴山 優吾は震えて裏返る声を誤魔化しながら蜘蛛男の注目をこちらに移させた。

「ショクジのジャマしたことコォかいさせてやるよォ……!」

ついに怒り爆発の蜘蛛男はまず目の前の生意気なオスから喰らおうと決心した。

To Be Continued……











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