あなたが好きでもいいですか

文戸玲

衝撃の告白



 その日,私は人を信じることが出来なくなった。信じていたのに。あれだけ信頼を寄せていた人に裏切られることになるなんて。私を支えていたものが崩れ落ちた。そんな一日となった。
 菜々美と一緒に帰ったその日,昔帰り道でよく使っていた公園に寄った。ベンチを覆うように木の葉が生い茂っており,暑い日でもくつろぐのに最適で重宝していた。
「見てほしいものがあるんだ」
つぶやくようにそう言って,かばんの中から例の封筒を出した。一枚の写真が入った茶封筒。お母さんに見せるか見せないかでさんざん悩みに悩んだ後が,汗と皺となって刻まれていた。その茶封筒を菜々美に手渡した。菜々美はそれを開けるでもなく眺めると,視線を遠くの方へ移した。何かあるのだろうかと同じ方向を目にやったが,太陽が雲を隠したりまた出てきたりとを繰り返しているだけで特に何も見るべきものはない。話を聞いてほしかった私は菜々美を促した。
「その封筒の中身,開けてみて。私,ここ最近ずっと悩んでいることがあったの。菜々美なら聞いてくれるかなって」
すると,衝撃の言葉を菜々美は口にした。
「知ってるよ。その中身。写真でしょ?」
なんで知ってるの? 親と美月以外には言っていないのに。そう考えた瞬間,怒りで体温が上昇したのを感じた。エロがっぱ。あいつしかいない。あいつがクラスメイトに写真を見せたんだ。面白おかしく,小ばかにするように,見せしめにしたに違いない。そうでなければ私たち以外があの写真を見ることなどないのだから。
 言葉にならない怒りが体中を駆け巡る。頭の中の血管が血を巡らせているのが分かる。許さない。絶対に許さない。どうして人をこんなに傷つけることが出来るのか。何が面白いのか。犯人が分かったのなら,徹底的に戦ってやる。
「なんで封筒の中身を知っているの? って思ってる? その写真撮ったの,私だからだよ」
汗が引いていくのを感じた。夏の終わりを告げていた時季の風が,背中を無情に撫でて遠くの方へと去っていった。

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