あなたが好きでもいいですか

文戸玲

母を思い

 全部話した。美月のこと。自分の気持ち。今の状況。怪しい人に付けられているかもしれないことも話したが,さすがに封筒の中のものについては話せなかった。

「それで,封筒の中身は何なの? あんなぺらぺらな薄いものにプリントやら手紙やら入っている訳ないじゃない。あんた,親のこと見くびるんじゃないよ。あんたのたった一人の親なんだから」

いつも適当なことを言って娘のことを放置しているかと思うと,本当に困っているときには私の助けになってくれる。これが私の母だ。
私の背中と背もたれにある封筒に手を伸ばした。

「触らないで!!!」

気づけば母の手を強くはたいていた。さっきまで頼りにしていたのに,このことになるとどうしても素直に打ち明けることが出来なかった。それは,自分の保身というよりは,大好きなお母さんを気付つけたくないという思いの方が強かったのかも知れない。どんなときでも私のことを応援してくれていたお母さんが,今度も私のことを応援してくれるとは限らない。私だったらどうだろうか。たぶん,娘が「女の人を好きになった」と言ったとしたら反対するだろう。少し前の私だったらきっとそう思う。私はお母さんに悲しい思いさせたくない。もうどうしたら良いのか分からなくなっていた。

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