いつまでも,いると思うな家に嫁

文戸玲

千鳥足


 いよいよ日取りを決めようという段になって,困ったことになったと愛想笑いで乗り切っていたが限界がやってきた。スマートフォンのディスプレイの中から,スケジュールを管理するアプリを開いていたが,まずは連絡先を交換することになった。
 乗り気ではないが仕方がない,と思ったその時,中村さんはトイレに立った。トオルさん,間違えちゃったんじゃない? という言葉を残して少しふらついた足取りで進んでいった。

「間違えちゃったって何をですか? アルコールがきつかったのかなあ」
「間違えたかどうかは,まだ分かりません。ただ,私もあなたも気を付けないといけないのは確かかもしれませんね」

 何を言っているのか分からなかったが,深くは聞かないことにした。でも,何を言っていたのかはすぐ分かることになる。その事実を知ったとたん,私は背中が凍るように冷たくなった。

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