いつまでも,いると思うな家に嫁

文戸玲

私の生き方


 同棲とまでは行かないけれど,新しい彼の家で生活の大半を過ごすようになった。仕事に行くのを見送ったり,私が仕事から帰る場所も週の半分以上は夏妃の家ではなくなった。特に困ったこともなく不平や不満もない。信号のない平坦な道路を事故も工事もなくただ進み続けるようなものだ。
 そんな日々を繰り返していたある日,また私の頭の中でややこしい考えがふと浮かんできた。

私は人並みに平凡いくらしたかったのだろうか。
幸せって何。
お庭にプールがある家が良かったんじゃないの?
お金持ちになりたかったのでは?
でもそれって何のために?

たくさんの思いが交錯して,何もないように見えていた景色が渋滞を起こして混雑していた。悶々とした毎日を過ごしていると,彼に「話がある」と呼び出された。明日時間が作れるかな,と言うその表情は緊張で青ざめていた。大体のことは想像できた。これからのことを明日で決めるきるわけではない。しっかりと話をして,これからのことについて話し合う時間は重要だろう。私達もいい年だ。明日,個室の料亭に6時に会うこととなった。彼はしっかりとした店を予約していた。彼の本気度がうかがえた。


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