いつまでも,いると思うな家に嫁

文戸玲

私はロクでもない

 私には欠陥があるのかもしれない。
 今までは,人のことを偉そうに批評したりどうしようもないやつだと嘲ったりもしてきた。
 しかし,気づいてしまった。本当にろくでもないのは私の方だと。
 私は人の心に対して疎すぎた。前の旦那はどうだっただろうか。私は幾度となく傷つけたに違いない。人に完璧を求め,自分の粗は棚に上げて怒りを真っ正面からぶつけにいった。始めは我慢をしてくれていたのだが,次第に受け入れる許容量が近づき,徐々に溢れるようになり,最後にはコップをひっくり返したように激しい音をたてて流れ出ていった。
 「30過ぎてからこんなことに気付かされるなんてね」自分に自信を無くしたという私に,夏妃はあっけらかんとしていった。

「ほんとおめでたいわねえ。そしてまた同じ失敗を繰り返すんだから。でもね,そういうのも含めて人間らしくていいんじゃない? 完璧じゃない自分に気付いて,人を許せるようになって,それでもお互いにイライラするから折り合いをつけていく。その折り合いを見つけるための長い旅が婚活なのよ。大丈夫,きっと私たち,幸せになれる」

自分のことを励ましているかのような夏妃の話しぶりに元気が出た。私ももう少し自分の先の幸せを信じて歩いてみよう。

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