いつまでも,いると思うな家に嫁

文戸玲

彼と同棲することになった

 いろいろな時間を過ごして,順番を間違えたり間違えなかったりしたこともあったけど私たちは正式に付き合うこととなった。それから一カ月も経たないうちに,こうして彼と今日から同棲することとなった。
  部屋を探すとき,家具を見るときなど,新生活に向けて準備しているときはこれからの二人の生活に対する期待からときめきが溢れていた。それは,観光地で食べる高級なかき氷のように甘くてとろける時間だった。部屋のレイアウトをイメージしながら配色を考えたり,雑貨を見てはああでもないと言い合う。好みが違うことすらも愉快に感じていた。
 私の頭の中は完全にお花畑になっていた。人は忘れる生き物だ。あれだけ過去に痛い目を見たにも関わらず,共同生活の難しさを忘れていた。バラ色の新生活を夢見ていた私の期待は,かき氷が時間と共に溶けていくように徐々に形を崩していった。

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