美女女神から授かったチートスキル〜魅了〜を駆使して現代社会でたくさんの嫁を娶りたい!

月風レイ

青年編 第39話 温泉旅行③

お姐さんに部屋の案内をされて、部屋の探索を十分に済ませた後、持ってきた荷物を部屋に置き、温泉街に向かうためにもう一度ロビーの方に戻ってくると、またもやこの旅館、月光館の女将さんに遭遇して、

「今から温泉街の方にでも行くの?」


「はい。そうなんです」

「そうなのね。まぁ、この街に来たらあそこにいくのは定番よね」

「じゃあ、女将さん行ってきますね!」

「はい。行ってらっしゃい。夕方にはお料理もうちで出すんだからあんまり外で食べ過ぎちゃダメよ!」

「わかってますよ」

「あと、高校生の女の子2人だけなんだから変な人がいたらすぐに逃げなさいよ」

女将さんは氷堂先輩のことを自分の娘のように大切にしているみたいだ。
まぁ縁があるみたいだし、少しばかり過保護な感じもするんだけど、そんなことを氷堂先輩は嫌がることなく、しっかりと聞き入れていて。

「はい。お気遣いありがとうございます」

「うん……気をつけて行ってきなさい」

「んじゃ。敦子ちゃん行きましょうか」

「じゃあ、女将さん行ってきますね!」

「敦子ちゃんも気をつけてね!」

私と氷堂先輩は女将さんに見守られながらも来た道を遡るようにして進んでいく。
やはりこの月光館は外に出てみるとその貫禄を再認識させられるほど立派なものだった。
道を遡って行くうちに来た時同様に湯気という名の白霞がもくもくと立ち込めていて、私たちの視界を遮る。
見えるのは足先だけでしっかりと足元を確認して前に進んでいく。
後ろを見やると白い湯気のせいで月光館の姿は一切見えなくなった。
俺と氷堂先輩は白い湯気を手で切り裂きながら道を進んでいく。
手を払いのけて、氷堂先輩が来た道とは違う道へと歩み始めた。
俺も氷堂先輩の後ろを黙ってついて行く。

と、その先には……

温泉街と思しきものが存在していた。
旅館と思える建物に、お土産屋さんや屋台が点々としていて、中央に湯を覚ますためのような巨大な装置が存在していた。
もくもくと湯気が立ち込めた先に温泉のお湯によって作られた滝のようなものがあった。
ザザザザザザザザ。
と激しい音が街内に鳴り響いている。
この温泉街はこの水音に支配されているのか、通常のボリュームの声を出しても、すぐさま水を打ち付けると音にかき消されてしまう。
耳元に永遠になり続ける轟音は普段の生活なら嫌気がさすのかもしれないが、私や氷堂先輩にとっては新鮮で、さらに音を発しなくてもいい。つまり無駄話をしなくてもいいんだという変わった安心感を俺に与えてくれるのであった。

温泉街に到着して、2人並んで温泉街とをぶらりと回っていると、

「おぉ〜! べっぴんさんだねぇ〜!」

お土産屋さんの店主らしきおじいちゃんがこちらに寄ってきて話しかけた。
氷堂先輩はその爺さんのこと男性と理由でギロリと睨むのかと思ったのだが、そんなことは一切なく敦子と接する時と同じ調子でおじいちゃんと話し始めた。

「ありがとうございます。ここはおまんじゅうのお店なんですか?」

「そうじゃよ。こんなべっぴんさんはこの街じゃ滅多にみられんなぁ。だから、べっぴんには特別におまんじゅうをただであげるよ! ほれ。食ってみ!」

おまんじゅうのお店のおじいさんが気前よく、氷堂先輩におまんじゅうを渡す。

俺も貰えるのだろうと手皿を作っていると……

あれ!? 俺は? いや、私の分は!?
おじいさんは氷堂先輩を見るばかりでこっちに気づく様子が全くない……

「あのぉぉ……」

じじいが俺の声によってようやくこっちに気がついたようで……

「あっ。すまんすまん。あまりにもこっちの子がべっぴんさんだったから、君のことが見えとらんかったよ……」

だろうと思ったよ……だが、本人に言われるとなんだかむかつくな……


「あ、それは別に……」

まぁ、確かに氷堂先輩の美しさに比べたら敦子なんて霞んでしまうかもしれないけど……
ここに来てこの俺がこのおまんじゅう爺さんに心を抉られることになるとは……
俺はいま師匠を使って、女の子に敦子に変身している。
それも敦子は一般的にみれば可愛いと思うのだが……
それをこんな爺さんに否定された気がして、少しだけ腹の虫がうずきだす……


「ほれ! お前さんにはこれを上げるよ!」

「あ、ありがとうございます!」

俺は仕返しとばかりに、
こんなもんなんて一口で食ってやるよ……
と俺はもらった饅頭を思いっきり口の中へと突っ込む。

と、饅頭爺さんも呆気を取られたような顔ををしていて。

よしよし……これでなんとか少しはやり返せたかなと思っていたのだが


「あっ! それには……辛子入っとるよ」

ペヘェェェ!
ゴホッ。ゴホッ。ゴホッ。
俺は辛子入りの饅頭を一気に口に入れたせいで口に入れたものを盛大に吐き出してしまった。

「は、早く言ってくださいよ!」

「いや。だってそれはどうみたって……
お主に渡したのはまんじゅうじゃなくて、肉まんじゃよ?」

あら、不思議……完全にまんじゅうだと思っていたら、なんたそのお饅頭の正体はホカホカの肉まんだった……

くっそぉ! 少し頭に血が上ったせいで理性的な判断が出来なくなっていた。
くそぉぉ。この爺さんにしてやられたってことかよ……
俺が口残りの辛子にダメージを受けているところに、

「敦子ちゃん。大丈夫? 肉まんを一口で食べたいくらいお腹空いてたの?」

俺がむせているところを見て、俺の背中をさすりながら、俺の口元を自前のハンカチでそっと拭いてくれる優しい氷堂先輩。

結局、この場において氷堂先輩が男嫌いを炸裂させておまんじゅうの爺さんを睨むのではなく、俺がおまんじゅうの爺さんを恨むかたちで睨むこととなった。
俺と氷堂先輩はすっと立ち上がって、おじいさんに挨拶を軽くしたあと饅頭屋さんをさっていった。

お饅頭屋さんを去り、再び温泉街をぶらぶらしていると

「ねぇ。敦子ちゃん。温泉にきたらやっぱり、温泉たまごじゃない?」

「はい。確かにそうですね。食べてみたいです!」

「じゃあ、行きましょうか!」

私と氷堂先輩は温泉たまごを食べるべくなんとこだわりもなく温泉たまごと書かれた出店らしいところへと向かって歩いて行く。

「は〜ぁい。いらっしゃ〜ぁい。あんたたちすっごく可愛いわねぇーえ!」

温泉たまごの出店で声をかけてくれたのは女の人なのか男の人なのかわからない……オネェみたいな人だった。
筋肉は隆々なのに、顔は女性みたいに化粧が塗ってあって、口調も道化のようなもの。
果たして男嫌いの氷堂先輩はこういう中途半端って言ったら悪いけど中性的な人物のことをどう受け取るのだろうか……

氷堂先輩はオネエの店主さんに気にすることもなく、通常運転で注文をする。

「あの〜温泉たまごを二つください!」

なるほど性別的には男、中身は中性的なオネェならセーフというわけだ。
だから俺もセーフという可能性だって大いに残されているはず……
って、どんな理論だよ……ってことは置いといて。

「は〜ぁい。お待たせ〜ぇえ。これが殻入れね。それとこれがあたしの秘伝のタ・レよ」

俺と氷堂先輩は温泉たまご二つと、それを入れる容器とオネエさんの特製タレをもらって、出店の隣に用意されている席に座った。
あのオネエさんの秘伝のタレって言われると何故か悍しいものが入っているのではないかと思ってしまうのだが……

氷堂先輩はオネエさんの特製秘伝タレなんかのことは一切気にならないみたいで、少し弾んだ口調で優しく温泉たまごについて説明をしてくれる。

「あのね。敦子ちゃん! 温泉たまごっていうのはね、温泉で作られれば温泉たまごって呼ばれるんだけど、私が認識している温泉卵っていうのは白身が半熟で、黄身がトロんとしたもののことを言うの」

「は、はい!」

なるほど……まぁ確かに俺の認識しているものもそういったものであると思われるのだが、敢えて話に釘を刺すことなく、黙って先輩の話を聞く。

「それでね、私流の温泉卵の食べ方はね……」

「は、はい」

「まず、こうやって殻を割ってたまごを出して、その中に特製秘伝のタレを入れるの」

「は、はい」

「そして、ここでスプーンを使わって、わざわざチョビチョビと食べるのではなく……容器を持ってそのまま卵を飲む!」

トゥルン。
ゴクン。

俺はそんな豪快な氷堂先輩を見て顎が外れたみたく大きく口を開けてしまっていた……

いやいや……そんな卵の食べ方を綺麗なレディがしちゃダメでしょ……
いくらそれが美味しいからと言っても、それをやっていいのはするのはディズ◯ーの映画に登場するタ◯ザンとかガス◯ンとか筋肉芸人のカスガくらいだよ?
しかもその食べ方だと全然味わってないよね……
そのまま卵は胃に直行だったよね……

「わかった!? 敦子ちゃん!」

わかった!? なんて言ってるけど全然わかんないよ……

「あ、はい!」

そんな真剣な表情で見つめられるとこっちが間違っているのかって思えてくるよ……
まぁ、せっかくだしやるしかないよね……


俺は先輩が勧める方法で温泉卵を食べてみる。

トゥルン。
ゴクリ。

「おぉぉぉお! これはすごい……」

なんていうの……卵を飲むって感覚は気持ち悪いと思うかもしれないけど、なんだろう。生卵なら絶対にできないだろうけど温泉たまごの弾力がそれを可能していた、なんだかクセになる……
味も思った以上に感じられてとても美味しいし!

もう一個だけ食べておきたい……
そんな気もするんだが……
旅館の豪華な食事もあることだし……
自重しようと……

「ふふ、敦子ちゃんが喜んでくれて嬉しい。じゃあ次は足湯にでも入りに行きましょうか」

「はい。行きましょう」

俺たちは公用の足湯エリアへと向かっていった。
人はあんまりいなくて、ほぼ貸し切りの状態で使うことができた。

「ふぁぁ! なんだか眠たくなってきちゃいますね!」

「そうだね! 敦子ちゃんはあんまり温泉来ないの?」

「あ、はい! あんまり来れないですね……」

「そうなんだね。わたしは小さい頃からおばあちゃんによく連れられてたからね」

「先輩は温泉が好きなんですね!」

「えぇ。読書と同じくらい好きよ!」

「へぇ〜。そうなんですね〜」


まぁ、そんなことは知っていますけどね。
でも、こんなに楽しそうにしてるのに、なんでまだ親愛度が上がってないんだ?
友情だとあまり上がらないのかな?
そうだとすると、少しプランの変更をしないといけないな……

私たちが足湯をしている間、変な画面の男が動いて近づいてくるなんてことはなく、ゆったりと足湯を堪能してから旅館へと戻った。
旅館に着いたら、次は……ペロリ。合法混浴。

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