先輩と付き合うのは無理ゲーすぎる

マイナスイオン

第14話 接触

 翼


  颯汰という人を観察する。渚から言われたミッション。正直俺もどういう人か知りたかったし2人の関係もわかるかもしれない、渚からの提案でありながらも俺も乗り気であった。あいにく昨日は休みだったが、今日は神楽坂先輩もバイトに いるはず!


「渚ー!バイト行ってくるから」


「お兄ちゃん、この前話したこと忘れてないよね?ちゃんと頑張ってきてね!」


「大丈夫だ!でもバイトはバイトだからな!」


「そうだねでももうほんとに真面目なんだから……頑張ってねお兄ちゃん♡」


 妹からの激励?があり、バイトはもちろん、
 颯汰という人物のことも調べる、気合も十分だ!


「おはようございます〜!」


「おはよう、翼くん!この前頼んでた新しい
 仕事の件なんだけど……」


「はい!何でしょう?」


「会計業務をしてもらおうと思ってるの!それでね、今日はあの子も出勤だしこっちは人足りてるから、今日は一日事務室のほうで勉強してくれる?」


 ま、まじですか店長……中入っちゃったら俺、神楽坂先輩に会えないし、なおかつ颯汰さん(勝手にそう呼ぶことに決めた)が来てもわかんないじゃん。


「あらー?舞香ちゃんに会えないことが不服そうねぇ(にやっ)、1日勉強ってのも辛いだろうからちゃんと1時間接客入れてるから心配しないの!」


 その時間のうちに颯汰さんがくるかはわからない。でも、もし今日来ることがあるなら……
 その1時間にかけるしかない、


「ありがとうございます!早く仕事覚えて頑張ります」


 …………


 とは言ったもの、普通科高校に通う俺にとっていきなり商業簿記というのは難しい。そもそもこの業務バイトの俺がしてもいいのか?


 そんなことを思ってるとどうやら、接客の時間になったらしい。事務室の外では神楽坂先輩が待ってた。


 ……先輩、どうしたんだ?目が腫れてる。


「お疲れ様、藤倉。新しい業務はどう?」


「いやーなかなか難しいです。簿記関係今までやったことなかったですから」


 俺の弱音を聞いた先輩は笑いながら、


「そんなことかなぁーとは思ったけどね〜
 でも藤倉がその業務覚えたら私にも教えてね! どう?自分より上の人に教えれるって思ったらやる気でない?」


 この人は、本当こういうところがある。少し壁にぶつかりそう時、いつもこうしてやる気を出させてくれるようなことをして
くれる。


「じゃあ、神楽坂先輩に教えれるように頑張りますよ!」


「はいはい、頑張ってね」


  最近、俺に対する反応は優しい。やっぱり他のことでいいことがあったのかな?とか勘ぐってしまう。本当は颯汰さんのことを聞きたかったけど、、せっかく普通に会話できてるし、なにより渚がいう颯汰さんへの思いが当たっていて、あの腫らした目を見た俺は彼女にそれを聞く勇気はなかった。


  
 たった1時間だけの接客。この1時間で颯汰さんは来るのか?まあそもそも今日来るって保証はないんだけども……
  そもそも今入ってる時間帯はお客さんは少ない。店長から言われた時間があと10分ほどで終わるというその時、


 ガランッ!


「いらっしゃいませ〜何名様でお越しですかー?」


 あっ、、


「いや〜お前はあの時の、名前は知らないけど、 まいかちゃんと一緒にいた人でしょ?」


 この時間、このタイミングで来るとは、、


「その顔はなにか俺に聞きたいって顔かな〜?いいよ、教えてあげる。年は20、まいかちゃんの高校の時の先輩でもあり元カレである。 といってもまた付き合うことになったんだけどね〜」


 やっぱり渚の言う通りだったんだ……きっと神楽坂先輩が年上が好きなのもこの人のことが好きだったからで、再会して復縁したということか……


「その様子じゃ君はまいかちゃんのことが好きだったのかな?でも、残念〜!あいつは俺のことが好きだからさ!」


「あなたは、颯汰さんは先輩のこと好きじゃないんですか?」


「んー、面白い質問だね。じゃあ君に質問。この地球上に女性は何億人いるか知ってる?」


 俺のこと馬鹿にしてるのか!?なんだよ!
 35億とでも言ってほしいのか?


「考えてるとこ悪いけどさー、男性が35億人なのは知ってても、俺は女性が何億人いるかなんて知らないよ〜でも、それに近い数の人がいるんだったら1人の人に尽くすよりも遊んだ方が得じゃない〜?」


 この人は、この男は最低だ……そんな気持ちで神楽坂先輩を!


「まだ君にはわかんないかな〜?純粋な気持ちがダメとは言わないけど、2人が相思相愛で〜一途に愛し合うなんて恋愛を夢見るのバカらしいと思わない?」


 俺はその言葉を聞いた瞬間、失望とともに怒りが湧いてくた。もう、神楽坂先輩の彼氏だろうが許せない!殴ろうとしたその時、


「颯汰くん?お店に来て、、どうしたの?」


 神楽坂先輩が不思議そうに、いや少し嬉しそうに颯汰さんに声を掛けた。


「ほら〜昨日のこと直接謝りたくってさ! ほんとにごめんね、 それだけ言いに来たんだ」


「そうやって、来てくれたことが嬉しいよ!私、、」


「すみませーん!」


 神楽坂先輩は何か言おうとしたが、お客さんに呼ばれ言ってしまった。


「あの子さぁー、俺と別れた後も結局他の人と付き合わなかったみたいでさ〜、本当一途だよね〜、さて、どう彼女を壊そうかな〜」


 そういい、最後に俺の耳元でこう告げた。


「君が俺のことをどう言おうが知らないけど、君には彼女にそれを告げる勇気もないんじゃない?俺に対する笑顔を見た君にはね」


 颯汰さんが、あの男が立ち去った後もしばらく動けなかった。俺はきっと彼女、神楽坂先輩に告げることはできない。伝えたところがきっと信じてもらえないだろう、俺は一体どうしたらいいんだ……





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