人間嫌いな俺とビッチな少女
ファーストコンタクト
 昼休憩目一杯図書室で待ってたけど鍋島が顔を見せることはなかった。
 本当は教室に戻り、なんで来ないのかと怒ってやりたかったけど、今それをすると2人の関係が崩れてなくなりそうで私は怖かった。
詳しくは知らないけど鍋島が人との関わりを絶つ原因となったのが東雲さんなのは間違いないし、2人の間に何かがあったのは確かなのだと思う。
 今日は久しぶりにお弁当作ってきたのに.....
 行き場のない気持ちが私をどんどん満たし、悲しみに心を奪われる。
 今まで誰かと付き合ってきてもこんなに胸が張り裂けそうな思いしたことなかったのにね......
 
 鍋島へと作った弁当を閉まい、私は教室へと戻る。
「ねえねえ、東雲さんどこ行ってたのー?」
「ちょっと睦月と会ってたの」
「2人って付き合ってるのー?」
「ううん、付き合ってないよ~」
「東雲さんと幼馴染なんて羨ましいぜ」
「俺も鍋島と変わりたいくらいだ」
 もって生まれた才能なのか、モデルという仕事故なのか、東雲沙霧の周りには沢山のひとが集まり、コミュニティを広げていた。
「じゃあじゃあ鍋島のこと好きなの~?」
 女子というのは恋バナが生きがいみたいな所があるからすぐそういうことを言いたがる。
「好きってどういうことなのかな~?幼馴染だし私はあんまり意識したことないかなー?
あっ、でも睦月は私のこと好きだと思うよ~」
「おい、鍋島!お前東雲さんの事好きなのか?」
「萌と付き合ってるんじゃないっけー?」
「高校祭の日におんぶしてたの知ってるぞ!」
話は一気に鍋島へと振られる。
「お前は幼馴染だがそれは中学までの話だ、それに俺は胡桃のことも沙霧のこともどうも思ってねえから」
彼はそんなことどうでもいいかのように、感情を無にした態度を取り、教室を出ようとする。
「なんなのあの態度ー」
「最近はようやく打ち解けてきたと思ってたのにねー」
「睦月、ずっと私が居ないとダメみたいだったから恥ずかしかったんじゃない?」
「へー、あの鍋島くんがねー」
「めっちゃ甘えん坊みたいな感じだったのー?」
今は東雲さんと話すより鍋島を追いかける方が先、幸運なことに昼休みが終わっても次は自習。抜けても問題ないはずよ!
「鍋島、お願い、待って!」
私を見た瞬間、彼の表情が少しだけ柔らかくなったように見えたのは自惚れなのかな?
「昼休みは悪かった。じゃあな」
 表情が柔らかくなったのは一瞬ですぐさま私から離れようとする鍋島。
「違うの、私別に怒ってないから。だけど一つだけ教えて!彼女が、東雲さんが鍋島を裏切ったっていう幼馴染なの?」
「それがそうだとしても胡桃には関係ない。俺と沙霧自分の問題だからな」
「じゃあなんで今鍋島はそんなに苦しそうなの?彼女がなんか鍋島にっ」
「頼むからほっといてくれ!....すまん、でも今は誰とも話したくはないんだ。今日は帰るからそう伝えといてくれ」
 彼がここまで感情を表すことは今までなかった。それと同時に2人の間に何があったのかがより一層謎となる。
 鍋島の早退を伝えるため、職員室へと立ち寄る途中、東雲さんとばったり会う。
「あれ?なんでここに?」
「手続きのことで先生に呼ばれちゃってね。なんで胡桃さんはここに?」
鍋島のことを言おうか悩んだけど隠すのも不自然だよね。
「鍋島が早退するから伝えといてくれって言われたから......」
「そっかぁ、睦月早退したんだ。やっぱりまだ立ち直ってなかったんだ♪」
彼女が何を言ってるのかわからない。
「立ち直ってなかったていうのは?」
「ううん、こっちの話。それより胡桃さんは睦月と付き合ってるの?」
「いや、付き合ってないよ....」
「その反応を見ると胡桃さんの片想いってところかな?でも、睦月のこと好きになってくれる人がいるなんてね~」
「それはどういう意味?」
「あっ、気を悪くしたのならごめんね~私、
睦月と付き合ってたけど色々大変だったから」
「あっ、睦月のこと好きな子に言うことじゃなかったよね、ごめんごめん~でもその好きは本当の好きなのかな?嘘だったりしてね」
「だって、あなたが睦月にしたのは嘘の告白だったんでしょ?」
彼女は私にそう告げた。
ガラガラ、
「東雲か、待っていたぞ。胡桃はどうした?」
「あっ、いや、鍋島くんが早退したことを伝えに来ました」
「なんだ、あいつ早退したのか。みんなと急に仲良くなって疲れが出たのかもな」
「はい、私はそれだけなので....」
「頑張ってね胡桃さん、じゃまたね~」
 
鍋島と東雲さんは付き合っていた?
彼がみんなを遠ざけていた理由とそこに何か
関係があるのかな?
それに嘘の告白と今の私の気持ちは全く別なのに......鍋島は気にしてないって言ってたけど本当はどう思ってるのかな....?
しばらく私はその場から動けなかった。
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