人間嫌いな俺とビッチな少女

マイナスイオン

〜役割決め〜萌と睦月の新たな関わり



……


「鍋島早く買い出しいくよ~!」


「俺炭酸がいいっすー!」
「俺カルピス!」
「私オレンジジュースがいいなぁ」
……
「鍋島ちゃんとメモした?」


「胡桃、俺にばっかりメモさせずにお前も少しは書く努力しろよ!」


ていうか人との関わりを避けてきた俺がどう
して買い出しなんかに....


なぜこうなった?


――――――――――――――


時は遡ること2時間前、2年C組の高校祭は何をするかの話を俺を除くクラス全員でしていた。


高校祭、それはリア充たちにとっては大切なイベントである。


 例によって今仕切っているのもクラスの中心メンバーで先生はというと椅子に座ってパソコンと
にらめっこをしている。


去年の高校祭では俺は....何をしたか詳しく
覚えていない。というか当日休んだ気すらする。
 だから俺は今年も高校祭の話も極力参加せず、準備だけ最低限手伝い、当日はバックレる気満々だった。


「ではアンケートの結果!2年C組はお化け屋敷を
することに決定しました!」


「よっしゃー!!」


「誰が1番驚かせれるか当日は勝負しよう」


「メイド喫茶がしたかった....」


  喜ぶ声、残念がる声、多種多様な反応を見せる中心メンバー達。ちなみに俺はお化け屋敷に投票した。
どんなにイケメン、美女がいたところでゾンビメイクをしたら皆がブサイクと化すからな。


「ではこれから役割の分担をしたいと思いますー」


「まずは全体を仕切るリーダー決めないとねー」


「それは俺がやるよ!」


 出たよ、目立ちたがり屋。サッカー部のエースに
してキャプテン、さらにイケメンという3点セットの海堂翼が立候補した。


「海堂くんになら任せられるよねー」


「「ねー♪」」


どうやら異論はないらしい。無理に俺を巻き込んで
くるようなやつでなければ誰でもいい。


「じゃあ次に広報!」


「私、絵が得意だからやりたい」


…………


役割は中心メンバーを筆頭にどんどん決まっていった。
だが、何で胡桃のやつ立候補しないんだ?
あいつこういうの好きっぽいのに意外だな....


「では最後に買い出し係!」


「はーい、私がやりまーす♪」


....立候補したのは胡桃だった。
さらに彼女はこう続けた。


「でもー女の子1人で重たいものとか持つのは辛いんだよねー」


「なら俺たちも一緒に!」


クラスの男達がならば俺もと立候補する。


「鍋島も買い出し係として私と一緒にやるから!」


「は?何で俺がお前と一緒に!」


俺は思わず立ち上がってしまった。


「何で鍋島なんだよ」
「ていうか今日あいついたのかよ」
「あの2人付き合ってるって噂本当なの?」
「えーでも鍋島って隠キャだよー?」


 先生の有無にかかわらず、俺の悪口らしきものが
クラスの一部にヒソヒソと飛び交う。


「みんな聞いて!この帝都高校祭は最後にどこが1番か決めるでしょ?その選考項目には全員で作り上げたものってのがあるし、ここで鍋島に協力してもらった方がいいと思うの。当日来ないなんてことされたら困るしね♪」


文句は言わせないとばかりに俺を見る胡桃。


「それにみんなも鍋島だったら安心じゃない?
何か私と問題を起こすようなタイプでもないし~?」


「あっ、それあるかも~がっつく男子とかだったら
高校祭より萌を落とすことばっかり考えたりして~
ねえ!男子?」


2人の罰ゲームの事情を知っているらしい胡桃の
グループメンバーが胡桃の意見に同調する。


「いや、何で俺を見るんだよ」
「俺だってそんなことは....」


「だから!私と鍋島が買い出し係をするから!
異論ある人いる?」


誰も文句を言う奴はいなかった。
そしてこの雰囲気では流石に俺も断れない。


「じゃ、これで決定ね!よろしく鍋島!」


「あ、あぁ」


俺は無理やり買い出し係という役割を与えられてしまったのだった。


…………


そして今に至る。


「じゃ、私たち飲み物買ってくるから~」


「「頼みまーす」」


俺の胡桃は教室を出て、近くのディスカウントストアへと向かった。


「おい、胡桃何で俺を買い出し係に指名したんだよ。おかげで罵声ばっか浴びるし飛んだ迷惑じゃねえか」


「いいじゃない。全く話さない人と気まずくなるよりかは私との方が楽じゃない?」


お前と一緒にいる時の周りからの目が怖えんだよ。
 バリバリのカースト上位の人間とゴミが一緒っていう異様な光景に見えてるだろうからな。


「まあ、役割があった方がやりやすいかもな」


「何それーもしかしてお礼?素直にありがとうって
言えばいいのにー」


「ばーか、そんなんじゃねえよ。さっさと行くぞ」


「素直じゃないなー鍋島は」


「余計なお世話だ」


 まだ人と関わるのは怖い。だが俺を信じようとしてくれる奴がいる。少しくらい今回頑張ってみてもいいのかもしれないな....


俺は心の中でそう呟いたのだった。
 




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