高校時代のアイドル的存在がニートになって面影がなくなってしまった件
雨降って地固まる
「あれ?」
 朝起きると凛乃花が隣で気持ちよさそうに眠っていた。
帰ってきてくれたんだと嬉しくなる俺だが、
まだ仲直りしたわけじゃないもんなとすぐ落ち込む俺。あーうん、仲直りしたい。
「むにゃ、、こうちゃんだいしゅきぃ」
ここでとどめの一撃、凛乃花もしかして怒ってないのかな??
「おーい、凛乃花?朝だぞー?」
いつもとは違い、俺が凛乃花を起こしてみる。
「むー、ぱっ、ふにゅ?あーおはようこうちゃん~」
意味不明な言葉はともかく凛乃花は目を覚ましたみたいだな。
「凛乃花、この前はごめんな。俺、凛乃花が働くってことを応援してたのに少し寂しくなったみたいで色々きつくなっちゃって....」
「ううん、私もこうちゃんのこと大好きなのに天童さんの話をしてみたり、少しでも可愛いって言って欲しくて、でも一歩間違えれば大変なことになってたし....」
どうやら俺だけじゃなく凛乃花も何か思うところがあるらしい。
「凛乃花、可愛いよ。それに一生懸命働こうとしてる姿はやっぱり魅力的だよ」
「こうちゃんは高校時代ならそうやって外見だけじゃなく中身も見てくれるから私も本当に大好きなんだよ~!」
高校時代か....何度か最近夢に見るけど、今こうしてあの頃と同じように居られるって幸せなことだよな。
「凛乃花、俺も大好きだぞ!」
「ふふ、久しぶりにこうちゃんも言葉に出してくれた気がする♪」
「これからはちゃーんと素直に伝えるようにするからな!」
「期待せずに期待しとく~♪」
なんだそりゃ、、ってもう8時じゃないか。
「おい、凛乃花!早く準備しないと仕事遅れるぞ?」
「へへ~こうちゃん。甘い甘い、私神童凛乃花はお仕事を辞めたいと思います!」
高らかにニート宣言、でもそのニート宣言に少しだけ安堵してしまう俺。でもなんで?
「なんか嫌なことでもあったのか?」
「うーん....頭が良くてイケメンだけど言ってることが薄っぺらでナンパしてくるような人がいるからかな〜」
「そうだな!そんな奴がいるところはやめよう、うん、そうしよう!」
「こうちゃんがニート化に積極的??」
「凛乃花がニートになっても外に出られるようになったし、その分頑張るし、これからは外でデートもできるしな」
彼女がニートである。という世間一般的な言葉より俺が彼女を幸せにすればいいんだという風に考えたい。
 共働きをしている人たちが必ずしも幸せとは限らないしな。
「なんかさ、不思議な夢を見たんだ。懐かしい頃の....ちゃんと言葉で伝えることの大切さを改めて感じることができたよ」
「私も天童さんが言い寄ってきた時に、こうちゃんが言ってくれた言葉が浮かんできて、大切なことに気付かされたよ!」
「やっぱり口に出すって大切だよな」
「大好きだよ〜こうちゃん。でも高校時代はプロポーズしてくれたのに、今はチキンになっちゃって〜このこの〜」
えいえいと肘で突っついてくる凛乃花。
あれ?高校時代にプロポーズなんてしたっけ?
プロポーズみたいな言葉を言ったのは昨日見た夢のはずなんだけど....も、もしかして?
「それって今も昔も頑張ってる姿が好きだからそばにいてくれってやつか?」
「そうだよー!忘れたとは言わせないよ〜その言葉に私心打たれたんだからね!」
やっぱり....
どうやら俺が見ていたのは夢ではなく本当に
タイムスリップしていたということか....
 
何回か、まさかな?と思うことはあっても信じられずにいたがこうなると信じる以外の選択肢はないよな....
 
だが、その言葉が凛乃花の心を動かしてくれたのだとしたら神様のイタズラに感謝しなければいけないな。
「それはちゃーんと時期が来たら伝えるさ」
「なら首をながーくして待ってるね♡」
「伸ばすのは縦だけにしてくれよ?」
「ふーんだ、これからもどんどん痩せていってやるんだから〜!」
俺は彼女に酷いことを言い、凛乃花は天童さんにナンパされ、ホテルにまで行った。
もしかしたら俺たちに別れという選択肢が迫っていたのかもしれない。
でも必要だったのはちゃんと気持ちを言葉に伝えることだったんだなとしみじみ思う。
「今日は家でイチャイチャしようね〜♡」
「おう!今日は寝かせないからなー!」
「こうちゃん、それ朝言うセリフじゃないからね〜」
本当、まさしく雨降って地固まるってことだよな。
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