高校時代のアイドル的存在がニートになって面影がなくなってしまった件

マイナスイオン

デートの結末

……


「で、どこに行くんだ?」


「グローバルジャパンです。修学旅行で行って以来、好きな人と行きたいなって思ってたので付き合ってもらいます」


グローバルジャパンか、日本でも結構有名な方でネズミーランドに並ぶ遊園地だ。


「そこで1日遊ぶってわけだな」


「遊ぶんじゃなくてデートですよ。昨日の夜は負けましたが絶対に惚れさせますから。誰があんな女に負けるもんですか!」


本当、佐倉の言動をどう理解していいのかが俺にはわからない。脅してみたり、惚れさせると意気込んでみたり、、


本当は凛乃花のことが心配でしょうがないが、今は佐倉と一緒にいるしかない。
 俺はひとまず様子見、そして佐倉の機嫌を損ねないことに努めることにした。


「うわー!やっぱり凄い人ですね~」


「まあ日本でも相当な人気だからなぁ〜」


「先輩、まずはあれから乗りましょう〜!」


「いや、俺高いところは……」


「つべこべ言わず行きますよ〜」
……
「うぎゃーー!!おちるぅー!」


いや死ぬよ、ほんと。あんな高いところから落ちるなんて誰が考えたんでしょう。そもそも人って高いところから落ちるようには作られていないと思うんですよ。
御託はさておき、佐倉は純粋に楽しんでいるようだ。


「次はあれに行きますよ〜」


「それもしかして水に濡れるやつじゃ……」
……
バシャッーン!


ほら、言わんこっちゃない。俺ずぶ濡れじゃないか、、


「そんなこともあろうかとちゃんとタオル持ってきてますから〜」


「あ、サンキュ!」


「先輩も少しは楽しんでくれてるんじゃないですか〜?ほら次も行きますよ〜」


……3Dで伸びてくる手にガチビビリ......どれもこれも迫力がありすぎだよ。


「お昼はここで食べましょー!
ここが一番美味しいみたいですよ〜」


へえ、下調べもしてくれたんだな。少し関心しそうにはなったもののこいつに今脅されていることを思い返し、冷静になる。
 

今のところ普通に楽しんでるだけみたいだし、今日1日はちゃんと付き合ってもし本気で俺のことを好いてくれているのならこいつの気持ちにちゃんと向き合おう。




………………




そのあとも俺たちはテレビで紹介されるような有名なアトラクションに乗ったりと時間はあっという間に過ぎていく。
 その間も佐倉は何か言い出すわけでもなく
ただ、純粋に楽しんでいる様子だった。


もし、今日一日普通に遊びに来ているのだったら本当に楽しかった。色々と調べてくれていたみたいでどの時間も退屈しなかった。
 

でも、それはあくまで普通に来ていたらの話だ。俺は真剣に向き合うと決めたもののずっと連絡をできていない凛乃花のことが気がかりだった。
 

絶対に凛乃花を傷つけて失うわけにはいかない、俺は一つの決意をしたのだった。


「私、今日ほんとに楽しかったです」


「あぁ、俺も楽しかったよ。それで?俺の役目は終わりでいいのか?」


俺はぶっきらぼうにそう告げた。


「私に今日1日で惚れ込んだんじゃないですかー?」


言ってることは冗談のようだが、彼女の顔は至って真剣だった。


「佐倉、確かに今日1日楽しかったよ、でもな、その楽しさを冷静にさせるくらいに俺は凛乃花のことが心配で仕方なかった」


「なんでですか!私は一生懸命頑張って、今日だって色々調べて、仕事でも部署は違っても褒めてもらえるように頑張ってた私より、なんでそんなダメ人間みたいな人を選ぶんですか!」


 「なんでって、それは凛乃花が好きだからに決まってんだろ?佐倉が言うようにニートだし、太ってて、そのくせ女子力もどっかに落として世間的にはみたらダメ人間かもしれない」


「だったら!私と!!」


「でもな、それはあくまで世間一般の目だ。働いて欲しいのが一番だ、だけど俺はそれ以上に凛乃花のいいところを知ってるんだ!ほんと、料理だってあんな下手だったのに、、俺に心から美味しいって言って欲しいからって練習して今じゃ味は最高だよ」


「だから気持ちは嬉しかったが、佐倉の気持ちに応えることはできないんだ!」


綺麗事のようなことばっかりだけど、全部俺の本音、これが俺の思いだ。


「先輩の気持ちはよくわかりました。今日1日で惚れてくれるのが1番良かったけど……仕方ないですね」


佐倉、わかってくれたか!俺が「ありがとう」という言葉を口にする前に彼女はこう告げた。


「凛乃花さんへの熱い想いは痛いほどわかりました、でも残念です。私は神谷先輩を手放すつもりはありません。先輩の弱みはしっかりまだ私持ってますから」


「なっ、、でも佐倉今日ここに来たことでチャラになったんじゃ、、」


「それは私に惚れた場合の話です。さて、どうしますか?凛乃花さんと別れて私と付き合った方が身のためですよ?無理やりキスをさせたって言いますからね!」


やっぱりか……俺はどうも懲りないらしい。何を言っても無駄だと思ってたが、もし良心が残ってるならとほんの少し期待はしたが、、
....でも、仕方ないか。そのために俺は決心したんだから。


「いいよ、会社のやつや誰にでも話せよ。」


その言葉を聞き佐倉は唖然とした表情を浮かべている。その様子に構わず俺は続けた。


「よく考えたらさ、好きでもないやつと付き合って会社に今まで通り過ごせたとしても意味ないんだわ。好きな人がいて、その人と一緒に居たいから俺は働いているから、だから好きにしろ!俺はもう覚悟したから」


会社に働くのはお金のため、地位のため、色々あるだろう。もちろん俺だって全部大切だと思う。でも今の俺が頑張れてる理由にはこれらはならない。凛乃花がいるから。これが俺の答えだ。


「いいんですね、私はもう知らないですからね。全て失えばいいんだ!」




「いい加減、そこまでよ梓!もう諦めなさい」


えっ?なんで杏さんがここに?
それに理沙に、えっ?凛乃花まで……


「あなたが一番わかったんじゃないの?梓、あなたは神谷の中の1番には絶対になることができないってこと」


さらにこう続けた。


「ここまでして振り向いてもらえないってもう哀れとしか言いようがないわ。そのくせないことを言いふらして陥れようなんて馬鹿ね」


「まあ、そこですぐほいほいデートしちゃう神谷も気に入らないけど、まあいいわ。あなたが何を言っても無駄よ。あんたみたいな新人がいうより私の方がよっぽど信頼もあるしね」


「くっ……」


「だから、神谷。あなたは辞めなくても今まで通り仕事はできるわ。それに辞められたら困るもの!書類の押し付け先がなくなるしね」


おい、俺の感動を返せ!結局そこかよ。
でも、今の俺には杏さんへの感謝しかない……


「それにね、どんなに気持ちを押し付けたとしても迷惑でしかならないの、だから梓!もっと正攻法で挑みなさい!」


はっ?えっ?


おそらくここにいる全員が面食らったであろう。いや、杏さん何言ってるんですか。


「そんな汚い手を使わなくてもあなたは十分に魅力的よ、こんな働かないデブよりね。私はあなたがちゃんとしたやり方で頑張るなら梓を応援するわ」


どうやら杏さんは本気で凛乃花のことを嫌いらしい。うん、同性同士って怖い……


「ちょ、ちょっと待って。こうちゃんは私だけのものなんだから勝手に話を……」


「ちょっと黙っててもらえる?あなたの番ではないから」


凛乃花の話は途中で遮られた。いや杏さん、
この人本気だ。


「杏さんがそう言うなら私頑張ります!
一生懸命頑張って絶対に神谷先輩と付き合います!」


「その意気よ梓!さあ、この人たちは置いて今日は帰りましょう!そして作戦会議よ」


「はい!あっ、今日はありがとうございました!明日から覚悟してくださいね♡では!」


2人は嵐のように去っていった。えっ?これ捉えようによっては前より悪くなってない??


ともかく凛乃花のもとに帰れたことは事実だ。


「凛乃花、心配かけてごめんな!それに理沙も色々きっと世話になったんだよな……本当にありがとう!」


俺が感謝を伝えると2人はお互いを見合わせてこう言うのだった。


「「おかえりなさい!」」

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