【連載版】僕の初恋相手は人妻です
ダイエット(1)
真凛さんからのメールに気づいたのは雪との買い物を終え、晩御飯を食べた後だった。
『真田くん、最近私太ってきちゃって......真田君さえ良ければダイエット手伝って欲しいんだけどダメかな?』
まさか今日の朝別れてから次のお誘いがこんなに早く来るとは正直思っていなかった。
男の僕にはダイエットというものの経験もなく、具体的に何をすればいいのか分からないけど、どうやら真凛さんはダイエットに付き合ってほしいみたいだった。
『昨日はありがとうございました。ダイエット経験ないんですが僕で大丈夫ですか?』
本当は真凛さんに会えるなら何でもいいという気持ちが強いんだけど、ウザがられるのも悲しいし返信はこれくらいにした。
『真田くんがいいんだよ♪私も試したことないダイエット法なんだけど真田くんと一緒にヤリたいなって!♪ダメかな?』
真凛さん......完全に変換ミスしてるよ。
『僕でよければお伴しますよ。いつ頃されますか?』
『うーん、仕事終わりにはなるんだけど火曜日の夜とかでもいいー?』
最近は夜にダイエットするのが流行ってるのかな?ま、ダイエットに僕は付き合うだけだから真凛さんがそういうならそうしよう。
『わかりました!また連絡ください!』
僕は真凛さんとのやり取りを終え、スマホを置く。
「お兄ちゃん、何ニヤニヤしてるの?」
「べ、別にニヤニヤなんか......」
「この前まで落ち込んでたと思ったら今度は浮かれてるし、お兄ちゃんは分かりやすいなぁ」
「雪、別に何もないから」
「そういうことにしといてあげるよ」
♦︎♦︎♦︎
真凛さんと会う約束をした火曜日。
楽しみなことがある時は特にこうも1日が長く感じる。
楽しい時間はあっという間なのになぁ。
「なあ、今日せっかくだし飯行かね?」
「いいぜ。最近行ってなかったしこの前、昴も行きたいって言ってたしな」
「加奈も来るだろ?」
「うん、私も行きたい!」
「伊吹と昴はどうする?」
「あぁ、特に俺も用事ないし行けるぞ?」
僕以外のみんなは特に用事がないらしい。
今日は真凛さんとの約束があるのに......
「ごめん、今日用事があるんだ。僕は行けれないかなぁ」
「なんだよー用事って!もしかして女絡みかー?」
「こ、この前も言ったけど、僕にそんな人いないから」
「昴行けねえのか。どうする?」
「僕はいいからみんなで行ってきてよ。今度は絶対参加するから!」
「そっか、行ける時に行っとかねえとこれから最後の大会に受験に忙しくなるもんな」
「よし、そうと決まれば店探しだ!」
女絡みか......ちゃんとした付き合いだったらみんなに言うこともできたのかな?
「じゃあ僕は先に帰るよ」
「じゃあね真田くん!」
「また明日なー昴」
流星たちと別れ、僕は帰路につく。
今の時間はきっと真凛さんはまだ仕事だろう。
それにしてもダイエットって何をするのだろう?
動きやすい格好、それと替えの下着は持ってきたほうがいいって真凛さん言ってたけど。
運動が得意じゃないけど僕で大丈夫かな?
ま、こうして会える時間を作ってくれるだけでも嬉しい。
会えるということだけでこんなにも胸がときめく。
だけど......
真凛さんは一体僕のことをどう思ってるのだろうか?そんなことをふと思う。
きっと揶揄いがいのある高校生、それにちょっと弄るのが楽しいってだけだろうな......
旦那さんがいる真凛さんと僕はどうなりたいのだろう?僕のことを好きになってほしい?真凛さんと付き合いたい?それはきっと全て無理だ。僕の片想いでいいと思いながらも、体の関係を一回でも持った以上、純粋な恋心じゃなくなりかけているのは分かってるし、ダメなことだと言うことも頭では理解してる。
それでも好きなものは好きなのだ。
どうしようもないこの胸の苦しさを僕はどうしたらいいのか分からないんだ。
真凛さんに思いを告げて、できるのなら今日が最後にしよう。
そうしないと僕はもう戻れない、そんな気がした。
だから、僕はそう心に決めたのだった。
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