【連載版】僕の初恋相手は人妻です

マイナスイオン

バレてはいけないこと





七瀬さんからの連絡はそれから3日後、そろそろ週末は何しようかなと考え、実行し始める木曜日だった。


僕たちの通う真神高校はもちろん校内での携帯使用は禁止だが、昼休憩のみは黙認というルールがあるらしく、ほとんどの生徒がこの昼休憩にKINE等のやり取りをしている。


かくいう僕も10時ごろに七瀬さんからきたメッセージをこの昼休憩に返そうとしている状態だ。


『今週の土日って空いてる~?お姉さん休みだから空いてるなら一緒にご飯どうかな~?』


たとえ予定があっても七瀬さんのためならその予定をキャンセルしてでも会いたいものだけど、運良く今週は特に予定もない。


『どちらでも大丈夫です!』


『よーし!次の日仕事とか学校よりかは次の日も休みがいいってことで土曜日にしよっか♪』


『はい!楽しみに待ってます!』


『じゃあ、待ち合わせは......』


僕が七瀬さんに会えるのは今週の土曜日に決まった。


連絡がこなかったからただの社交辞令だったのかなぁという気持ちも頭をよぎったけど、律儀なのかちゃんと約束を守ってくれようとする七瀬さんのその気持ちが嬉しかった。


「なんだよ、昴!さっきからスマホみてニヤニヤしてよー」


「べ、別になんでもないよ!」


「もしかして昴、彼女でもできたのか?」


「「ぶっ、」」


流星の言葉に思わず吹き出す僕、と可愛さん?


「いやいや、そ、そんなわけないじゃん!僕なんかに彼女なんてできないよ!」


「どうだかなぁ。俺たちになんの相談もなしにいつのまにか彼女作ってやがったのか!」


「えー、さ、真田くん。彼女できたの?」


「言った方が楽になるぜ昴」


いや、何か凄い誤解が発生してる。


響がいつも以上にムキになってるし、流星はこの状況楽しんでるし、可愛さんは何故か涙目でし......


「えーと、その......」


「昴が見てたのはお店の画像だぜ?」


「へ?」


そこには昼休憩は激戦区の購買から戦利品を持ち帰ってきた伊吹がいた。


「昴のやつ、みずくせえな!次みんなで食べに行くところを調べてくれてたんだろ?」


周りの3人はポカーンっとしている。


「そ、そうなんだよ。最近全員でご飯とか行けてないから、みんなでまた行きたいなあって調べてたんだ」


僕のスマホの画面には確かにおすすめディナーと検索されていた。動機は違うけど......


「じゃあ、昴に女ができたっていうのは?」


「ご、誤解だよ!勝手に響が騒いで話を大きくさせるからだよ」


「なんだ、昴にも春が来たのかと思ったけど」


「よかった。真田くんに彼女ができたんだと思って本当に焦っちゃった」


「まあ、そういうことらしいぜ。大体、俺たちいつも絡んでんのに、俺たちの知らない女と付き合うなんてことになるわけねえだろ」


「そう言われればそうだ!」


伊吹がたまたま僕の画面を見たことによって起きたファインプレー。


この場はそれで収めることができた。


流星と関わって来た時間を考えるともう10年近い関係になる。響や可愛さんとだって6年近いし、高校からの伊吹だってもう2年は経っている。


いつも一緒に過ごす友達でも親友でもあるみんなに言えない秘密ができてしまった。


僕が手にした2人目の女の人のKINE。


伊吹が言った、俺たちの知らない女の人との関係を僕は今持とうとしている。もちろん付き合うことなんて出来ないし、七瀬さんは人妻だ。


人に恋をするのは自由だなんていう人もあるけど、それでも僕の彼女への想いは知られてはいけないものだしあってはいけないものだし、
みんなに言えるわけも相談できるわけもない。


昼休憩にKINEを開くのはやめよう。


それだけを心に誓った僕だった。

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