【連載版】僕の初恋相手は人妻です

マイナスイオン

プロローグ



女子トークが思いのほか白熱しちゃって気づけば思いのほか、時間が経ってしまっていた。


「あれ~?真田くん。ボーッとしてどうかしたのー?おりゃ!」


可愛い友達を待たせた謝罪も込めて脇腹を突いてみたんだけど......


「やめてください。そんなことされても鬱陶しいだけですから」


苛立った様子の真田くん。


「ご、ごめん、可愛さん。僕先に帰るよ」


「えっ、ちょ、ちょっと待ってよ真田くん」


可愛ちゃんの呼び止めにも応じず走り去ってしまった。


来店した時の軽いボディタッチで顔を赤くしていたその時とは打って変わったようなその態度に私は戸惑いを隠せなかった。


「私、何か悪いことしたかな?」


「いや、普段あんまり真田くんが感情的に動くことってなかったと思います......」


「それに前回の試着の時間の方が今回より長かったし......」


と少し寂しそうな様子で続ける彼女。


何だかよく分かんないけど可愛ちゃんじゃなくて、彼に私が何か悪いことをしたんじゃないかと謎の直感がそう働きかけた気がした。


「ねえ、可愛ちゃん。KINEのアプリ持ってるよね?」


「は、はい。便利なのでよく利用してます」


今起きたこととの繋がりが見えないのか戸惑う様子の彼女。


「もし良かったらでいいんだけど可愛ちゃんと真田くんのID教えてもらうことってできるかな?」


「真田くんのもですか?」


「もしかしたら......私が揶揄いすぎたのがダメだったのかもしれない。真田くん普段1人でここに来ることなんてないからちゃんと謝りたいなって思って......」


「私も男の子が1人でこの空間で過ごすのは気まずいとかもうちょっと考えれば良かったです......IDを送るので七瀬さんからも話を聞いてみてもらっていいですか?」


「うん!2人のせっかくのデートを台無しにしちゃってごめんね」


私の悪ふざけが原因なら可愛ちゃんには申し訳ないことをした。


「じゃあまずこれが私のIDで、こっちが真田くんのIDです!」


「ありがとう!2人が気まずくならないように私から謝っとくね」


「はい、今日はちょっと買う気分じゃなくなっちゃったのでまた来ます」


「うん!またいつでも来てね!」


すぐさまもらったIDをKINEのアプリへと登録する。


仕事が終わったらメッセージを送ろう。
私の悪ふざけで傷つけてしまったならちゃんと謝らないとと思う。


でも、何だかんだあーいう2人のもどかしい感じも青春かもなぁと懐かしい気持ちと羨ましい気持ちを感じる。


ダメダメ!このノー天気さが傷つけたのかもしれないから反省だよ!




KINEに打ち込み終わった私はIDが書かれていた、用済みになったメモをゴミ箱へと捨てた。


……


 謝るために可愛ちゃんからもらった真田くんのID......


このIDの存在がお客さんと販売員という私たちの関係
をいけないものに変えていくことになるとはこの時の私はこの時知る由もなかった。



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