炎罪のウロボロス

あくえりあす

41、禁断の儀式


「それじゃ、その……あんた、火傷をする、ぞ」

いや、下手をすれば死ぬことになる。
人殺しの罪を帳消しにするために、私はまた人を殺さなければならないというのか?
一体どうして?なぜ?
私は怯んだ。動揺を止める手立てなど、こんな場面であるわけがない。

「そう。僕のこの体は燃える。それで契約は成立する。君がこの件を振り返り、そのことで不安や疑念、後悔などのネガティブな感情を抱き、契約を破棄しない限り、君の望みは全てが叶い、それがいつまでも続くこととなる」

「俺の望みが……すべて叶う。そして、それがずっと……続く」

また不安が、よぎりそうになる。だがそれ以上の強い感情で、私は彼の言葉に強く惹きつけられた。

「どうだい?怖くなったかな?僕との契約は、取り止めにするかい?」

彼はその相貌に、どこか悲しげな、だが曇りのない笑みを静かに湛えた。
私は大いに逡巡した。
だが彼の言葉には、何か抗しがたい強い魔力のようなものがあった。
その神秘の瞳にも、私の心は強い力で惹きつけられる。

「いいんだよ。素直になり給え。君の心に従って。さあ、私を一思いにその炎で焼き尽くすのだ。恐れることなど、何もないのだから」

そうだ。この男の言うとおりだ。
私は動揺を鎮め、意を強くする。
そして私は私に強く強く、こう言い聞かせた。

そうだ!これはただの夢なんだ!

こんなバカげたことが現実なわけがない。
きっとこの手にした松明も、目の前に立つ青年も、いや、人を殺したことも何もかも、きっと夢なんだ。
そして夢ならば、それは必ず覚めるときがやってくる。

「俺の望みが……これで、すべて叶う!」

私は、言葉を声に出し、自分自身にそう強く言い聞かせ、禁断の儀式を実行に移すべく、松明を持った右手を前に突き出した。


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