炎罪のウロボロス
39、君が望んだこと
私は思わず身構える。
「だけどね。僕がここにやってきて、君との契約をかわそうと思った、そもそもの理由はね。実は君も、うすうす勘付いているように……」
そのまま男はこちらにどんどん近付いてきた。
ゴォッ、と今一度、松明の炎が音を鳴らし、大きく揺れた。
「そう。それは君が望んだからなんだ」
そうだ……そうなんだ!
これは……私が望んだことなんだ!
男にそう言われたとき、私は妙に得心が行った。
「わかった。契約するよ」
「僕との約束。君は守れる自信があるかい?」
私は黙って頷いた。
「了解だ」
男は静かにそういった。
「ならば契約は実行に移される。あとは……君はその為の……そう、この世界でいうところの、契約書へのサインを、するだけで良い」
「サイン?」
心が小さく揺れた。不安が芽生えそうになる。だがそれを私は必死に抑えた。
「わかった。……じゃあ、その契約書、ってのを出してくれ。それと……ペンか何か、書く物が必要だ」
「そんなものは必要ない」
男は私の目の前にまで歩を進め、そして立ち止まった。
そして右手で掲げていた燃え盛る松明を私の方へと突き出した。
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