炎罪のウロボロス
18、タチの悪い連中
街灯がそう多くない河川敷の道である。彼らの姿ははっきりとは見えないが、その雰囲気から性質の良い連中ではないことは、私にはすぐに理解できた。
ああ……いつもこうだ。
私は心の中でつぶやいた。
いつだって私の予感は当たった。少し気分が良いことがあれば、その分を取り戻すかのように嫌なことが起きる。
ほんの少し前、街を走っていたときには、あれほど爽快だったのに、気付けば、ヘドロにでも浸かったような最悪の気分の只中にある。
そして、次はこれだ。街中を流れる河川とはいえ、夜の土手には他に人影もなく、たまたま公園近くに立ち止まったため、人家からも幾分の距離がある。つまりSOSを他者に求めることが困難な状況にあるということだ。
「兄ちゃんよぉ。カネ貸してくんねぇ」
如何にも三下が言いそうなセリフだ。そしてそれは、徒党を組んでる連中の右端に立つ輩が吐いたものだった。実際彼らのグループでも三下なのだろうと私は判断した。
私は何も答えず、だが黙ったまま彼らの方に目をやっていた。すると、連中の中央にいた輩が一人こちらに向かって歩を進めてきた。そして、ほんの1~2メートル手前で立ち止まった。暗いなりに、それでも互いに顔の判別のつく距離だ。どうやら同世代の、せいぜい離れていても1~2歳ほど年上の少年だった。
「中坊がこんな時間にうろついてんじゃねーよ」
どうやら相手は私のことを中学生だと判断したようだ。この発言からも予想通り、彼らは間違いなく高校生以上の年齢に達しているのであろう、と私は確信した。
「痛ぇー目に遭いたくなかったら、有り金出せよ」
そう言ってその少年は私の胸ぐらをつかんできた。私はされるがままに身じろぎもせず、ただ黙って相手の顔を凝視していた。
ああ……こいつは俺を殴る気だ。
相手の感情が伝わって来た。
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