炎罪のウロボロス

あくえりあす

1、絶望と希望と


誰も私のことを愛してくれないのであれば、私が私のことを愛するだけだ。どんなに滑稽でも、どれほど惨めでも、私は……私だけは、私を強く強く愛するんだ。

十代の、取り分けその前半期が過ぎる頃まで、私はそうやって何とか自分を保ちながら、辛うじて生き永らえていた。
端的に言えば、私はずっと不幸だった。少なくとも私は、そう強く信じていた。
何をしても無駄だ。決して幸せになど自分はなれない。知らぬうちに、そんな思いが私の中で確たる信念となっていた。
何事を為すにも、私は余りにも無力で、周囲から受ける悪影響に逆らう能力など微塵も持ち合わせていない。
そう、固く固く信じ込んでいたのだ。

そして私はいつしか、自分の運命を強く呪うようになっていた。と同時に、それ以上の強い気持ちで、自分とは「隔絶された別世界」で「平穏な日常」を営んでいる様に見えた自分以外の全ての人を、つまりは世間というものを、身勝手に強く逆恨んだ。
当時の私は、それでもまだ自分がいくつかの点でそれなりの幸運に恵まれていることになどまるで気付かず、世界中の不幸を一身に背負っているような錯覚に陥っていたのだ。
しかし、そんな表出することの出来ない様々な負の感情に圧殺されそうになりながらも、私は辛うじて、決して自らその人生に幕を下ろそう、などという結論には至らずに済んだ。

それはなぜか?と問われれば私はこう答える。

誰にも愛されず、顧みられることもなく、もしこのまま死を選んだら……。
いったい何のために私は生まれてきたというのか?
ただただ苦痛を味わうために、私はこの世にやって来たというのか?
そんなことのために、私はこの世界に生まれ落ちたというのか?

そんなことは絶対に認めたくなかった。
決して受け入れられない。
だから私は、自ら死ぬ道など絶対に選ぼうとは思わなかった。
どこにも誰にも何も届かない、「絶望」という真っ黒で、無意味なほど途方もなく高い泥壁に囲まれた、この忌むべき人生の深潭(しんたん)にあっても、私は決して生きる希望を捨てなかった。

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