霧夢 〜運命って信じますか〜

y u

貴志1

まだ引っ越して間もない葵の学校の帰りは他の人よりも早い。
いずれ何かしらの部活には入るつもりだけど、今は帰宅部。

いつもなら部活服に着替えている貴志が珍しく制服で話しかけてきた。
「葵、今日もばあちゃんのとこ?」
「今日はまっすぐ帰る日です。」
「じゃあ、時間ある?」
家の用事なら少し手伝ってもいいかなっと思って
「何?」 
と聞いてみる。
「オレと一緒にちょっと行って欲しいとこあるんだけど。」
2人で行く?それは選択肢にない。
「貴志と2人だけ?じゃ、帰る。」
「なんでだよー。裕兄ならいいんか?」
「う〜ん。」
ちょっと考える。
家の用事なんだろうけど、どうしようかなぁ〜っと顔をしかめて考えてたら、
「じゃいいや、1人で行くから。」
めずらしく素直に鞄を持ってさっさと出て行ってしまった。
なんとなく貴志が悲しそうな顔をしていたようなきがしたけど、

気になりつつも葵は、貴志の後は追わず帰り支度を終えるとそのまま寄り道もせずまっすぐ帰宅した。

旅館の裏門をくぐると自宅用玄関の前に女性が立っていた。
お客様かな?
玄関に近づくと女性がこっちをふりかえって、
「あらっ、お帰りなさい。」と。
この方は、先日のお見合いの時の…。
「こっ、こんにちは、竜宮婦人。」
慌ててあいさつをした。
「こんにちは、先日敦司と一緒にいた可愛らしいお嬢さん。今日は貴志君は?」
「貴志は、用事があるからと先に帰りました。貴志に用事でしょうか?連絡しましょうか?」
「ふふっ、大丈夫。どちらかというと、美貴ちゃんかなぁ。14:00って言ってたのに。」
「えっ、もう3時半ですよ。ずっとここで?あ、あの、中に入って、リビングでお待ち下さい。」
婦人をリビングのソファーにすすめ、
「コーヒーで大丈夫ですか?」
と確認する。
婦人が「ホットで」とうなずいたのでコーヒーを用意して机に置く。
「今、女将に声をかけてきますので、ゆっくりお待ち下さい。」と席を立つ。
「ありがとう」
婦人は葵をじっーっと見つめて嬉しそうに笑う。
不思議な人だなぁと思いつつ、リビングを出て、まず守おじさんに連絡を入れる。
「竜宮婦人がいらしているのですが、美貴さんは今忙しい時間ですか?」
「あー、今日だったか。今の時間なら、夕食の打ち合わせで食堂にいると思う。葵ちゃん、美貴のわがままに付き合わせてごめんな。」
と申し訳なさそうに、
「頑張ってね。」と、守おじさんの方から電話が切られた。

葵は、打ち合わせ中に、電話だと失礼だと思い、食堂まで歩く事にした。

食堂では、ちょうど打ち合わせが終わって美貴さんがお茶を飲んで休憩していた。
「美貴さん、竜宮婦人がいらっしゃっています。今リビングで待ってもらっていますが。」
美貴さんは時計をちらっと見て溜息をつく。
「約束の時間は4時(PM)なのに」
美貴さんは葵を見て、
「茜に準備ができたら行くからもう少し待ってもらって。」
「あかねさん?竜宮婦人の名前?」
美貴さんは笑いながら頷くと、
「そうそう、あー茜はね、私の同級生なのよ。今日は葵も一緒に行く予定だから、茜と話でもして待っててよ。」
「お出かけの予定ですか?あの、服装は?それと何を話せば?」
「制服のままで、話は、敦司君のお母さんだし、話の話題くらいあるでしょ。」
美貴さんはニコニコっと笑い女将部屋へ。

葵はリビングへ戻りながら何を話せばいいか必死に考えた。


コメント

コメントを書く

「学園」の人気作品

書籍化作品