それでも少年は

赤猫 

第三話 魔物について

 少女の話をまとめるとこうだ。

 最近、魔物による村への被害がギルドへ多数報告されているらしく、その報告の一つに俺の住んでいる村の近くにある森の調査があったらしい。しかし、ここに来るまでは良かったのだが、調査を進めていくうちに道が分からなくなり迷ってしまった。その時、偶々俺が休憩しているところを見つけ、話しかけるか迷っているところを見つかってしまい、今に至るというわけだ。

 「というわけよ。これで私のことを開放してくれるわよね?」

 少女はさっきまでの偉そうな口調に戻り、自分を見逃すように催促した。

 「まぁ、一応理由は把握したよ。ギルドカードも見せてもらったしね。ところで、クロンは魔物について何か分かったことはあるか?」

 俺はそう言いながら、ギルドカードを返し、魔物について質問した。これに関しては俺自身も狩りで注意しなくてはいけなくなると思ったからだ。

 「そ、そうね、私が分かっているのは魔物たちが何かから怯えて逃げてきているというのと、村を襲っている魔物がっていうことかしらね。」

 「魔物が賢い? 魔物同士は意思の疎通が取れないはずだろ?」

 正確には、下級の魔物同士では意思の疎通が取れないはずだが、もし仮にできるのだとすると中級以上の魔物が絡んでいる可能性があるなと俺は考えていると、目の前で、自分の名前を呼ばれ驚いていたクロンに、ギルドカードの名前の書いてあるところに指をさし、名前の出どころを教える。するとクロンは納得したかのような顔をした。

 「そのはずなんだけどね、実際に被害のあった村に行ってみたら、家が何件か燃えているのと争った形跡があっただけで、魔物が襲ったとは思えないほど被害が少なかったのよ。ただ……」

 クロンは何か引っかかるといった顔だった。

 「ただ?」

 「少し気になったのは、村にあった死体のほとんどが、だったということね」

 「村の被害が少なく、男性だけを襲う魔物か……」

 確実に魔物の中に中級以上の存在がいることが分かるな。しかし、ここまで頭がいいとなると、魔族が関与している可能性がある。これは、村長に村の警備を強くしておくように伝えておくか。

 「何か心当たりがあるの?」

 「心当たりというか、もしかしたら、中級以上の魔物が関係しているかもしれないなと思ってね」

 「私もそう思うのよね。ここまで頭が切れるのは、流石に下級の魔物では無理だと思うから」

 俺は、クロンがここまで考えることができるのかと驚いていると、顔に出ていたのか、何よその顔と言いたそうに睨んでくる。

 「まぁ、いいわ! 今度こそ、私のこと見逃してくれるのよね!」

 「それはいいけど、帰り道とか分からないんじゃないの?」

 俺のその言葉にそう言えば、といったような顔をしたクロンに対して、やっぱり馬鹿なんだなと思った。

 「良ければ、午後の仕事が終わったら俺の村にくるか?」

 「へ、へぇ、結構気が利くじゃない。いいわ! その仕事手伝ってあげる代わりに、私をあなたの村につれていきなさい! というか、あなたの名前も教えなさい!」

 なんでこいつは、いつも上から目線なんだよと思いながら、俺は自分の名前と仕事の内容を伝えた。以外にも、クロンは呑み込みが早くすぐに話し合いが終わった。

 「へぇ、アルトの仕事って結構大変なのね。これ週何回で、何人くらいでやっているの?」

 「人数は俺一人で、毎日やってるね」
 
 「えぇ!? この範囲をあなた毎日一人でやってるの!?」

 クロンはありえないといったような顔で俺のことを見てきた。まぁ、俺としては昔からやってきていることなので、大したことではなのだが。

 「まぁ、もう慣れたから大丈夫だよ」

 「そ、そう、アルトが平気ならいいんだけれど、もしかして、アルトって結構かわいそうな感じ?」

 「俺のことはもういいだろ、さっさと行こうぜ」

 俺はそう言いながら、クロンにさっきの説明通りにするよう指示をし、自分の持ち場に向かい走りだした。


 「そろそろ、集合地点に戻るか」

 辺りが暗くなり始めた頃、丁度倒したゴブリンたちから魔石を回収し終え、クロンに伝えた集合場所へ歩き始めた。流石に遅くなり過ぎたかと思っていたが、集合地点には誰もおらず、クロンを待つことになった。

 それにしても男だけを狙う魔物か、あるとすればゴブリンかオークだろうな、しかし、ゴブリンたちにそんなことができるとは考えられないとなるとオークか、ここら辺にはそんな魔物はいなかったが、もし向かってきているのであれば、俺一人で対処するのは流石に厳しいな。それの解決策と村長にどう伝えるか、考えないとな。まぁ、とりあえず帰りながら考えるか。

 「それにしても、今日は疲れたな」

 「はぁ、はぁ、やっと着いた!」

 俺が一度考えるのをを止め、そんなことを呟くと、横の草むらから、クロンがどさっと倒れるように出てきた。しかも、着ているローブや顔や体を土で汚している状態で。

 「結構遅かったな」

 「あんたが早すぎるのよ!」

 クロンはもう一歩も動けないと言わんばかりの表情を見せ、息を荒げていた。
 
 「一歩も動けそうにない……か、しょうがない、村まで持ち上げてくか」

 そう言いながら、クロンの体を持ち上げようとすると、急に叫び暴れだした。その衝撃で、少し体制がよろめく。

 「ちょ、ちょっとどこ触ってんのよ! 変態! スケベ!」

 「わ! 馬鹿! 暴れるな、おんぶしづらいだろう!」

 「だったら、変なとこ触らないでよね! この変態!」

 こいつ、人が親切に運んでやろうしてるのに、滅茶苦茶言いやがって。

 「村についたら起こしてやるから、少し休めよ」

 「寝てる間に変なことしたら、ひっぱたくから」

 「しねーよ、そんなこと」

 俺は、既にうとうとし始めたクロンを運びやすいように調節し、村のほうへ歩きだした。ていうか、こいつ寝るの早いな。
 
 そういえば、なんて村長に報告するか考えてないな。とりあえず、まだわからないことのほうが多いからな、混乱しないように分かってることだけ伝えるか。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品