TSお姉様が赤面プルプルするのって最高だよね

きつね雨

TSお姉様、旅に出る

 








「ターニャちゃん、護衛の人ってコイツ?」

「はい。実力は十分過ぎるでしょうし、それでいながら依頼料は格安で受けて貰いました。そろそろ王都に帰らないと駄目だそうで、馬車等も準備されていたそうです。私達からの持ち出しは殆ど有りませんから、本当にありがたいですね」

 俺には旅の準備がほぼ無いので、ターニャちゃんの買い物が殆どだった。それすらもマリシュカさんとその伝手で揃い、手間も掛かってない。馬車の準備も早くから問題なしと聞いていて、理由を聞いてもはぐらかされていたのだ。

「ギルド長からも安心して良いって聞いてたから、気にして無かったけど……そう言う事だったのね。まあ、嫌って訳じゃないけどさ……」

 護衛の選定にも関わらせて貰えず、当日のお楽しみと言われていたが……成る程ね。護衛なぞ俺一人でも余裕だからと、深く考えて無かったんだよな……当然女性だと思ってたのになぁ。

「私の知り合いなんて少ないですから、察しがついてると思ってました」

「うーん……ちょっと予想外かな……そもそも二人って、そんなに仲良しだった?」

 横を見るとターニャちゃんは何時もと違い、如何にも旅人の格好だぜ!って服装をしている。身体の殆どは濃い茶色のマントに包まれていて、僅かに見える足元もゴツい革靴が見える。勿論スカートなど持っての他で、濃い緑のパンツだ。

 全体的に迷彩色でないだけで、レンジャーの様な服装と言っていい。腰にも二つ可愛いポーチが装備されている筈だ。因みに王都に着いたら着る服は用意してるよ、勿論。

「何度か街で見掛けてました。人探しをしていたそうで、私から声を掛けたら快諾頂いたんです。誰を探していたか、言わなくても分かると思いますが」

「……まあ、分かるけど……」

「勿論、お姉様に変な事をしない様にと言ってあります。条件の一つに入れてますから……お姉様に対する魔素の操作は厳禁ですね、彼は」

 まあ、不意を打たれなければ大丈夫だけどね。 

 最近知ったんだけど、ターニャちゃんて家計に煩いのだ。煩いと言っても、俺には何も言わないよ? ただ、自分に対しては凄く律してるみたいだ。本当に偉いよなぁ。

「まあ、知らない人よりは良いかな。昔は良く一緒に行動してたし、頼りになるのは間違いないからね」

 実はどんな女の人が来るか、ワクワクしてたのは内緒だ。昔憧れてた噂の合コンとやらを経験するつもりだったのだが。今まで誰かと組んだ事無いのかだって? 時に普通の言葉が人を傷つける事もあるって知らないかい?

「お師匠様、今日も素敵な装備ですね。マントは僕が預かりましょうか?」

 ブロンドの髪は相変わらず輝いていて、まん丸お目めも紅くて綺麗だ。その筋の人が見たら涎を垂らしそうな美少年は、名前をクロエリウスと言う。まあ、愛称はクロだけど。

「何で?」

「マントに隠れたら、お師匠様をじっくりと観察出来ませんから。日々訓練だと教わりましたし、実益も兼ねてます。身体の動きも参考にしないといけません、ええ」

「……ターニャちゃん、魔素云々より目が怖いんだけど?」

「直接的な害はありませんし、目を瞑れとも言えないです。まあ、此処まで欲望に忠実だとは知りませんでしたけど」

 今もジーッと目線を隠す事もしないクロ。男の欲望は理解してるが、変態はダメだ。マントの前を閉じ、自慢の肢体を隠す。

 がっくりしたクロは、荷物を荷台に積み始めた。

 俺の装備は基本的に魔力銀で編まれた服……に見える。その特性上身体に合わせて作られており、ボディラインがクッキリと出るのだ。ターニャちゃんに見てもらいたくて、可愛いの選んで来たのが仇になっちゃったよ……

「でも確かに素敵な服?装備ですよね。パッと見はパルメさんの服みたいに見えます。7部丈のパンツなんて、殆どそのままですよ? 上半身も薄手のセーターみたいですし」

 それも魔力銀なんですか?と投げ掛けるターニャちゃんは、俺の閉じたマントをもう一度開く。何故か、ちょっと恥ずかしい。

「う、うん。魔力を通さなければ、普通の服みたいに快適なんだよ? 通気性も良いから、ツェツエみたいな気候には合うかな」

「へえー……あの、触ってみても良いですか?」

「えっ? あ、うん、良いけど」

 人の手でマントを開かれるって、意外と恥ずかしいな……オマケに手まで突っ込まれると、変な気分だよ……

「本当に金属とは思えないですね……私でも破いたり出来そうな気がします。このセーターなんて少しモフモフですよ?」

「うひゃっ……ターニャちゃん、脇腹はやめて! くすぐったいから……」

「あっ、すいません。何時もの癖で」

 何時もの、とは魔力強化解除訓練の事かな? アレはイケナイ……イケナイぞ、うん。

 ふと見ると、クロがチラ見してるのが分かりゲンナリした。まあ、気持ちは理解するけどさ!

「変な事を聞くんですが、下着も魔力銀なんですか?」

 ターニャちゃんは小声になり、上目遣いで聞いてきた。可愛い。

「そうよ。ただ作りは違うから、同じとは言えないかな。下着と言えない様なものだし、人には見せられないよ……かなり、面積が小さいからね……」

 少しだけ赤くなったターニャちゃん、可愛いよ?

「そ、そうなんですか……すいません、変な事を聞いて」

「ふふっ……ターニャちゃんなら何でも聞いていいからね? なんなら今度見せてあげようか?」

 実際は恥ずかしくて無理だけど!!

「い、いえ。大丈夫です」

 むふふ、今日は調子いいぞ。最近ターニャちゃんは強敵になったから、反撃を注意しないと駄目なのだ!

「お師匠様、準備が出来ました。出発しますか?」

「ありがとう、クロ。その前にっと……ターニャちゃん、私の魔法を受け入れてくれる?」

「はい、勿論です」

 無意識では俺の魔法を弾けないだろうが、念の為だ。魔力無効は凄く珍しい才能タレントだから一応ね。ターニャちゃんの小さな手を握り、魔力を行使する。勿論属性魔法じゃなく汎用魔法だ。

「暖かい……お姉様、これは?」

 魔素も見ない様にしていたんだろう、ターニャちゃんはゆっくりと目を開いた。

「簡単に言うと、痛み止めと回復かな? 実際はもっと複雑だけどね」

「あの……私、怪我はしてませんが……」

「ふふ……そうね。でもターニャちゃんは馬車に乗るの初めてでしょ? 知らないと思うけど、馬車ってすっごく乗り心地悪いから……お尻とか体中が痛くなるの。それの防止にね」

「ターニャさん、因みにその魔法はお師匠様が開発した魔法で……今や全世界で利用されています。 魔族すら例外ではないらしいですよ」

 まあ、実際には[魔狂い]に教えたら勝手に広がっただけだが。あのジジイはご丁寧に俺が開発したと吹聴したのだ。似た様な魔法はあったが、それを統合簡略化し行使し易くした。

「クロ、余計な事言わないの。こんなの大したことじゃないわ」

「ターニャさん、お師匠様の言う事を信じちゃ駄目ですよ? まあ、こんなので驚いてたらそれこそ大変ですが」

「クロ、もうやめなさい。行くわよ」

「あの……僕には?」

「貴方は我慢しなさい、修行よ」

 クロは2種類の属性魔法しか使えない。と言うか、それが普通だよね。生活魔法くらい使えるだろうけど、制限は多い筈。まあ、余り大変そうだったら治癒魔法かけてあげるかな?

「ええ……? そこをなんとか、お師匠様」

「こないだ変な事した罰よ。あんなの痴漢と一緒だし」

「お姉様、私からもお願いします。子供だし、可哀想ですよ」

 子供と言われてクロがムッとしたのが分かる。まあ見た目小学生だもんなぁ。

「……仕方ないわね。クロ、ターニャちゃんに感謝しなさいよ」

 言いながらも、クロの手を握って魔法を行使する。まあ、大した魔法じゃないし、負担でもない。こうして見ると可愛い子なんだけどなぁ、はぁ……

「久しぶりにお師匠様に触れました。やっぱり良い匂いです。この暖かさ、愛ですね」

 お前、マジでキモいな!?

「……ターニャちゃん、クロの……バレない様に無効化してくれる? お願いだから」

「我慢して下さい。格安の護衛ですよ、格安」

 声を掛けたターニャちゃんも、流石に気持ち悪いのか可愛い眉がグニャリと歪んでいた。

 先が思いやられるなぁ……はぁ……




















 アートリスはツェツエ第二の都市だけあって、かなり離れても未だ景色の一部のまま。まあ、第二と言っても貿易の中心で、他国からの玄関口でもあり、そのサイズはツェツエ最大だ。昔の名残りか城壁はあるけど、今は平和で使い途はない。遠くから見ると、都市の中心に向かって少しずつ盛り上がっていて壮観だ。

 街並みの色は雑多で建てられた時代も様々なのか、統一感は乏しいかな。まあ、気に入ってるけど。

 御者台にはクロが座り、馬を二頭操ってくれている。小学生らしき少年が馬車を操る姿はシュールだけど、クロは手慣れた物で安心感抜群。まあ、クロはツェツエ唯一人の勇者だからね。恵まれた身体能力を更に魔力強化した戦闘スタイルは、中々の完成度を誇る。昔は俺が師匠として、色々と教えたからねー。

 昔は可愛かったなぁ……なんでこんな変態に育ったんだろ……?

 思わず御者台の方を見ると、丁度振り返って俺を見ていた。 いや、前向けよ!?

「クロ、危ないよ。ちゃんと前を向いて」

「退屈なんですよ。お師匠様、久しぶりですし隣に来て話しませんか?」

 ふむ? まあ、いいけど。

「お姉様、行ってあげて下さい。私は景色を見るだけで楽しいですし、クロさん寂しそうですよ?」

「わかった。ターニャちゃん、何かあったら直ぐに言ってね。乗り物酔いも心配だし」

「はい。ありがとうございます」

 ターニャちゃんって気遣いが出来る子だよなぁ。俺が中学生の時、こんなに立派だったわけ……ない!

 俺は荷台から御者台へのアーチをくぐり、クロの隣りに座った。クロも少しだけ横にずれてくれたけど、そもそも狭いし殆どくっついた状態になる。

「狭いですか?」

「ううん、大丈夫よ。ふぅ、風が気持ちいいわね」

 座った時に風が通り、髪やマントを揺らした。纏めて無かった髪はフワリフワリと舞って、首や耳を撫でる。普段から魔力を通しているからか、特別な事をしなくてもバッチリな自慢の髪。

 少しの時間だけ目を閉じて、爽やかな風を全身で感じる。魔力銀の服も、今は普通と変わりなく空気を通してくれるのだ。魔力を通すと駄目だけどね。

「良い天気。旅日和だねー」

 目を開き、クロを見る。クロは俺を見ていて、少しだけ赤くなってる。まあ、真っ直ぐな街道だし、広い道だから大丈夫だけどね。俺と目が合っても、全く視線を逸らさないからコッチが恥ずかしいからね? 日本ではジッと目を合わせるって余りしないから、未だに慣れないんだ。

「クロ……余り見ないで、前を向きなさい」

「お師匠様、本当に綺麗ですね。何度も見てるはずなのに、目が離せなくなるんです」

 コレだよ……こっちの世界の人って、恥ずかしい事を平気で言葉にするんだよな!

「……ありがとう。分かったから、前向いて」

「お師匠様、顔が赤いですよ? 相変わらずですね、安心しました」

 くっ……だから、前見ろって!

「相変わらずって、なによ?」

「女性は恋をすると変わるって言いますから……アートリスでお師匠様が変わってしまわないか心配だったんです。その様子なら、大丈夫そうです」

「は、はあ!? 貴方、私を誰だと思ってるの? アートリスで私を知らない男なんていないんだから! 毎日、男達を千切っては投げ、千切っては投げ……何、笑ってるのよ……?」

 なんだよ、その余裕ある顔は!? 俺の事?図星!? んな訳ないしーー!

「いえ? モテモテなんですね!」

「そ、そうよ? だから、お子ちゃまは黙ってなさい」

「……プッ!」

 後ろから声が聞こえたぞ!

「……ターニャちゃん、何かな?」

「お姉様、余り無理をしない方が……恥ずかしい事じゃ無いと思いますよ?」

「無理なんてしてないもんね! 事実だし!」

「そうなんですか? 私はてっきり……いえ、なんでも」

「ターニャちゃん、何か誤解してるみたいだけど……私は男の事は何でも知ってるからね? 魔物なんかより詳しいんだから!」

 ある意味間違いないぞ! 前世で17年間も男だったんだからな。まあ、童貞だけど……女性とお付き合した事も無いけど! 妄想の中ではバッチリですから!

「ええ、そうですね。良く分かります。お姉様は間違いなくアレですから」

 アレってなにかな!?

「ターニャちゃん、一度しっかりと話をした方が良いみたいね……次の宿場町で……」

「お姉様、本当にいいんですね? 分かりました、お話ししましょうか」

 ……ま、またの機会にしようかな……

「……クロ、なにその顔は?」

「お師匠様、今またの機会にしようって思いましたね?」

「……さ、さあ! 宿場町はまだ先よ! 急ぎましょうか!」

 ふっ……まあ、今日は此処までにしてやるよ!

「お姉様……」

 ああ、風が気持ちいいなー!!











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