TSお姉様が赤面プルプルするのって最高だよね
☆TS女の子、お友達を御招待
お姉様の住む家まで、僕は二人を案内していた。
買い物袋をリタさんが持ちたがったが、こんなの……軽いから大丈夫だし。そもそも女の人に荷物を持たせるのはカッコ悪い。
お姉様はまだ寝てるかもしれないが、それはそれで面白いなと考えている。お友達が出来たので約束通り、お家に御招待してるだけだしね。ちょっと年齢が離れた友達だが、歳の差に制限は無かった筈。偶然案内したらタイミング悪く、本当に不運にもお姉様の恥ずかしい姿に遭遇するかもしれないが……それは事故だから仕方ない。
僕はお姉様がプルプル震えるのを見るのが大好きだ。あんな美人が自分の掌で踊るのを見ると、堪らなく感動を覚えるのだ。お姉様は少しお馬鹿で残念だけど、人が良いのは間違いない。
「ターニャ、普段はどんな事をしてるんだ?」
ウラスロさんから見たら子供だからか、遠慮の無い質問が飛んでくる。
「普段は料理したり、掃除したり、ですかね? ジルさんのお家は広いので、やり甲斐があります。それと魔法教室を開いて貰ってます。毎日少しずつですけど、上達が感じられて楽しいですよ」
「魔剣ジルの魔法教室か……金をいくら積んでもいいから参加したいって連中がわんさかいるだろうな……アイツは、ジルは何をしてるんだ?」
ウラスロさんもリタさんも悪い人では無い、それは間違いないだろう。なら、お姉様で遊ぶのに利用するかな。
「そうですね……ギルドでも話しましたが、食べて飲んで、買い物して、寝てますね。でも魔法は丁寧に教えてくれますし、本当に優しくて感謝しています」
「……こっちの気も知らないで、良い気なもんだな。まあいい、それは後で問い質そう。一応ジル預かりだが、ギルドの管轄でもある。何か困った事はないか?」
此処だな、一応子供らしくしようかな。
「困った事ですか? うーん……本当によくして貰ってるので……そういえば……あっいえ、何でもありません」
予想通りウラスロさんは眉を歪め、質問を返して来た。
「なんだ? 言い掛けたなら、最後まで言ってくれ。気になって眠れなくなっちまう」
「本当に大した事じゃないですよ?」
構わない……直ぐに言葉を重ねたウラスロさんだけでなく、背後を歩くリタさんも興味津々だ。
困り顔で、少し照れ臭そうに……と。
「私がお風呂に入ってると、必ず後から入ろうとするんです。私は恥ずかしいので断るんですが、殆ど毎日……入り口を守るのが大変です。それと、着せ替え人形みたく毎日遊ばれるのも困ってます。あと酔うとキスして来るのも恥ずかしいですね……それと……」
まあ、実際は反撃してプルプルさせてるけど、嘘じゃないから。魔力強化解除の訓練は、態とゆっくりやってるし。真っ赤な顔で我慢してるの可愛いからね。
「待て待て待て……それは本当にジルの話なのか? あの水色の瞳の?」
「え? はい、そうですけど……もしかして意味が違いましたか?」
予想はしていたが、お姉様は外でのキャラづくりに余念がない様だ。多分カッコ良い大人の女性で、何処か近寄り難い高嶺の花を狙ってる。本性は多少バレているだろうが、やはり遠い人であるのは間違いない。
日本ならハリウッドの大スターか、有名スポーツ選手みたいなものかな? うーん、ちょっと違う?
「アイツ、普段はかなり誤魔化してやがるな。只の姉馬鹿じゃないか……今まであれだけの男達を夢中にさせていながら、妹分に弱いとは」
「ジルさんて、もしかして……」
リタさんも何かに気付いた様だね。後は家に着いたら楽しい事になるだろう。お姉様はその辺は外さないから……イベントに強いよね。
「リタさんとお友達になりたいけど、話し掛ける勇気が無いみたいです。どんな話をしたら良いか分からなくて、何時も見詰めるしかないと。出来ればリタさんから優しくして貰えると、私も嬉しいです」
リタさんは遠い目をしている。
「超級冒険者が話し掛けるのが恥ずかしい? 普段仕事の話し普通にしてるんですが……偶にあの顔で笑い掛けられて緊張してた私を返して欲しい……」
ヘタレかよ……リタさんは呟くが、何処か良いおもちゃを見つけた顔をしてる。やっぱりアナタは同じ趣味ですね? いいお友達になれそうです、僕と。パルメさんが会長で、お姉様を弄る会を結成しますから参加して下さい。マリシュカさんは相談役ですね。
「まあ、ジルが悪い事をしてないならいい。いやお風呂侵入は問題だが……」
お姉様、もう直ぐお友達を御連れしますね?
待ってて下さい、お布団で。
「あの先を右に曲がったら直ぐです」
明らかに高級住宅街らしきエリアで、その中心に位置してるお姉様の家。少し入り組んでいるし、高い壁で覆われているから分かりづらい。
知らない人からは何かあるんだろうな、程度の情報しか入らない。理解が進んで来た魔素により、複数の魔力的システムが稼働しているのが見えたりしてる。
お姉様曰く、普通の人には見えないし、ある程度鍛えた人なら警戒感を強く持つらしい。
「あそこから入ります……お二人とも、どうしました?」
ウラスロさんは青白い顔になってるし、リタさんは明らかに冷や汗を掻いている。どうしたのかな?
「ここで間違いないのか……? これは……異常だぞ……」
「ターニャさん、何も感じないの? 信じられないわ……こんな魔力を乱雑に……」
乱雑……? 僕から見たらお姉様の魔力強化程では無いけど、凄く美しく見える。
おそらく二人が見てるのは、お姉様が施した防犯システムの事だ。屋敷と同じ魔力銀を応用した、数々の魔力行使の痕跡だろう。
お姉様の話では、開発した魔素感知波を無償で提供したらしい。ギルド職員は皆学んでおり、リタさんも魔力をある程度把握出来るのだろう。ウラスロさんは元戦士らしいし、当然の事なのかもしれない。
因みに、大半の人は魔力と魔素に区別はついていないとの事だ。ほぼ同義語になっており、二人が感知しているのも、行使された魔力であり、揺れ動く魔素でもある筈だ。
もう一度壁や扉を見てみる。
やっぱり綺麗だけどな……僕には魔素しか分からないけど、渋滞の無い高速道路に流れるテールランプの様に見える。其々に意味がある筈だけど、流石に僕は分からない。
「お二人には、そんな風に感じられるんですか?」
「……正直来た事を後悔しているよ。やはり超級……しかも最強の魔剣ジル。常識で考えては駄目だったんだ、此処まで常軌を逸した魔法防壁は初めて見るよ。ツェツエの王城でも、こんな非常識な行使などしないぞ……」
「私はギルド長程に感知出来ませんが、兎に角近づいたら危険なのは分かります。此れはジルさんの心の現れなんでしょうか……恐ろしい拒否感を感じますから……」
……いや、考え過ぎじゃない? 絶対そこまで考えてないから。多分調子に乗って、色々試してただけだと思うし……それにちゃんと計算されてるから、死んじゃう様な防壁なんてないし。殆どが悪戯か驚かせるだけ、みたいな。例えるならお化け屋敷かな、きっと。
「……兎に角お二人はお客様ですから、大丈夫です。私が案内しますから、安心して下さい」
オジサンとお姉さんは、それでも中々脚が動かないみたいだ。なんか遠い目をしてブツブツ呟いてる。
見た目や雰囲気に騙されてたんだ……中が魔王城だとしても驚かないぞ、とか。
ジルさん、いえジル様、私が悪かったです。調子に乗ってました、とか。
……いや、ビビリ過ぎだから。何度も言うけど、中身はあの人だよ?
常識の外にいる様な美人だけど、お姉様だからね?
うん……まあ、人外な人なのは否定出来ないかな。魔素を鍛えたから分かる……お姉様の非常識さ。絶対、チートだよね、あれは。いくら魔力無効化をしても、根本を抑えたり出来ない……と言うか不可能と分かった。そもそも実戦なら触る事すら出来ないし、気付く事も無く瞬殺間違いなしです。
このまま待ってても仕方が無い。先ずは中に案内しよう。
両開きの巨大な扉を開けようと、魔力銀製の取手に手を触れる。
「あ、危ないわ!」
「タ、ターニャ!! そのまま不用意に触れるな! 大怪我を………す、る、?」
僕からしたら当たり前に、あっさりと扉は開く。勿論魔素、つまり魔力を分解して魔力を抜いたのだ。とんでもない重量の扉だと思うけど、勝手にギギギと動いてくれるからね。自動ドアだよ、これ。
「な、何を……何をしたんだ……防壁が一瞬で霧散したぞ……有り得ない……」
魔素を決まったルールで動かすだけなんだけど、見えないと大変なのかな? 説明書付きで鍵までぶら下がってる感じだから、イマイチわからないや。因みに霧散したのでは無く、お休みしてるってお姉様は言ってた。
「ジルさんが何か仕掛けをしてくれたみたいです。私は何時も此処から出入りしてますから、安心して下さい」
嘘だが、僕の才能は余り知られない方が良いらしいし、適当に誤魔化しておく。
「……落ち着いて考えれば、当たり前か。ターニャは何時も外出してる訳だからな」
ウラスロさんもリタさんも、少しだけホッとしたみたいだ。
「では、どうぞ? お友達を初めて御招待しますから、少し緊張しますね」
「お友達って……まあいい。ジルは居るんだな?」
「間違いありません。今は寝てますね」
「もう昼だぞ……どれだけ自堕落な生活を送ってるんだアイツは……」
しっかりとお説教して下さい。僕は横から援護射撃しますから。
その前にお姉様で遊ぼっと。
「お茶をどうぞ。あと、このクッキーはジルさんの手作りです」
お姉様のお手製クッキーは本当に美味しい。甘さ控えめなんて良く言うけれど、正直控えてない。だけど口に入れるとフワリと溶けて、甘さが広がる。どうも魔法的な作業があるらしく、今度見せて貰う予定。
「ありがとう、頂くよ。このお茶は珍しい香りだな。リタ、知ってるか?」
「いえ、初めての香りですね。不思議な……なんでしょうか?」
この世界では珍しいのか、深煎りの焙煎茶の一種と思うけど。
「なんでも別の大陸のお茶で、バンバルボア帝国産の特級茶葉だそうです。美味しいですよね、これ」
やっぱりお姉様がバンバルボアの出身だって言わない方がいいんだろうな。
「バンバルボアの? そりゃ珍しいな。敵対しては無いが、深い友好国でも無い。交易も僅かな筈だ」
リタさんは、良く知らないのか反応は無かった。
「あ、このクッキー美味しい……」
「良かったです。ジルさんも喜ぶと思うので、感想を伝えて上げて下さいね? リタさんに言われたら飛び上がって喜ぶか、真っ赤になって固まると思います」
「……ジルさんが真っ赤、ですか? ふふっそんな子供みたいな反応をジルさんがしたら、困っちゃいますね」
リタさんは子供の僕の冗談だと思った様だ。面白い事に、そんな人なんだけどね。最初は態と演ってるのかと疑ってたけど、アレは間違いなく天然だし。
「しかし、この応接室は見事だな。ジルの趣味なのか?」
「はい、全部ジルさんの拘りですね。お庭も素敵ですし、後で散歩してみて下さい。あっ、魔法防壁は切りますから」
「……頼むよ。生きた心地がしないからな」
元の屋敷の応接室を利用してるらしいけど、内装は殆ど総替えしたみたい。全体的に白と青を基調にして、家具類も落ち着いたグレーで統一してある。
派手な装飾は無いけど、手触りや質感は明らかに高級品と思う。僕たちが座る椅子の座り心地は、ちょっと驚くレベルだ。それに何故かフンワリと花の香りがするんだけど、コレって多分お姉様の匂いだよね。
「なんだか良い香りがしますね。花……かな、優しい感じだし香水では無いみたい。寝室で香ったら熟睡出来そう」
お姉様の寝室なら、しっかりと嗅げますよ? バラしたらお姉様、恥ずかしいかな? でも女性の匂いなんて失礼かもしれないから、やめておく?
「この香りは香水じゃなく、ジルさんの匂いですね。寝室はもっとはっきりと香りますから間違いないです。使ってる石鹸とは違うし、不思議ですね」
まあ、言うけどね。
「リタさんに良い香りって褒められたら、真っ赤になって固まりますよ」
「……もしかして、ターニャさん……」
うん、リタさんも気付いたかな? お姉様を弄る会への入会お待ちしてます。
「はあ……余り虐めてやるなよ? ところで、ジルはまだ起きて来ないのか?」
「いつもは昼食の香りに惹かれて起きて来ますから、まだ寝てると思います。お二人もご一緒にどうですか?」
「昼食に惹かれてって、子供か……奴の私生活は表に出さない方がいいな。いや、誰も信じないか?」
「ギルド長」
「ん?ああ、済まない。折角のお誘いだが、またの機会にさせてくれ。ジルへの用件を伝えたら、直ぐに返事を出さないといけないからな。でも、ジルの胃袋を掴んだターニャの料理には、酷く興味を惹かれるよ。また、誘って貰えると嬉しい」
「はい、勿論です。 お二人は私のお友達ですから」
予感がする。この二人が居れば、お姉様はもっと面白い反応をしてくれる筈。
「お友達か……つまり、俺達はジルに認められる必要があるな。ターニャの友達として相応しいかを」
僕たちは顔を見合わせて、ニヤリと笑った。
「間違い無く、認めてくれますよ。それは保証します」
多分暫く後には、お姉様は真っ赤になってプルプルしてるだろうから。寧ろ泣いて頼むかもしれない、今日の事は内緒にして下さいって。
なんだか楽しくなってきた。
「では、少し待っていて下さい。ジルさんを起こして来ます。それと……面白いものが見れるかもしれないので、ちょっと様子見をして下さいね?」
「様子見? まあ、分かったよ」
「……了解です、ターニャさん」
リタさんは既に獲物を狙う肉食獣の眼になってる。
流石、分かってますね?
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