心の中で妄想したが、目の前の状況はどうなるかわかりません

冬眠アヒル

心の中で妄想したが、初日の朝は。

「六~。あなたスーツは取りに行ったの?」
1階から母親の声が聞こえ、俺は階段を降りた。
「今から行くよ」
3/20 今日は、3日前に買ったスーツの引き取り日となっている。
4月から新社会人になる。駒田は進学の道を諦め、高校卒業で働く。そのためのスーツを取りに行く。
「あんた一人で行ける。人見知り激しいじゃない」
母親は心配そうに駒田を見た。
「行けるわ。馬鹿にしすぎだろ。4月から社会人になる男が、人見知りもクソもあるか」
「それならいいけどー」
玄関のドアに付けている鏡をみて、寝ぐせがないか最終確認をし、玄関を出た。
「いってらっしゃさーい。あと、後ろ髪、はねているわよー」
「それを出る前に言え」




2025/4/1
入社式当日
今日天候に恵まれ、桜も満開だった。駒田が入社する会社は、広島県広島市にある商社だ。
駒田の実家は島根県で小中高、旅行以外他県に出たことないし、一人暮らしも未経験。
今は会社が予約したビジネスホテルに泊まっている。

朝はビジネスホテルのモーニングを食した。焼きたてのクロワッサンに香りの良いコーヒー
を堪能していた。
他にも客が数十人いた。
出張で来ている人が大半だろ。俺と歳が近そうな奴もいる。
きっと同じ会社に入社する奴かもしれんな。
また入社式であったら、積極的に会話するか。自覚しているが俺は人見知りだ。だけど人間初めの挨拶と身だしなみさえ良ければなんとかなると、どこかの記事で読んだことあるから問題ないだろ。人見知り解消にはいい機会だな。社会ってのは。
「新しい出会いが楽しみだな」
とここまでが駒田の妄想。

駒田は朝から母親の電話に出ていた。
「あんた大丈夫?緊張してる?おなかとか痛くない?忘れ物とかない?会社の場所わかる?」
「あんたは緊張すると、すぐ胃がいたくなるんだから、胃薬。カバンの中に入れといたから飲みなさいよ」
「あーもう、大丈夫だって、実家じゃなくてもうるさいなー」
「子供の大丈夫は大丈夫じゃないから心配なのよ」
「ごめんけど準備があるから切るね。もう電話しなくていいから、ラインだけにしろ、ラインだけ」
「あっそー、とりあいず胃薬カバンの中だから!」
「あーわかった。わかった」
そういうと駒田通話を切った。
「はあー出るか」
溜息を出し、トイレから出る駒田。朝から腹を下し、ずっと母親の電話を我慢しながらトイレにいた。
「朝から調子が悪い。最悪だ」
起きてからずっと、トイレにいたため、朝食を食べていない。ホテルのモーニングを食べれなかった。
もう出る時間だ。
「昨日のお好み焼きのせいだな」
都会の賑やかさに影響されてしまい。遅くまで食べ歩きをしていた。
初めてのスーツでネクタイが決まらない。実家で練習してきたつもりなのだが。
ネクタイは雑になってしまったが、上着を羽織ればそれっぽっく見える。
「行ってきます」
静かに響き渡る駒田の声に返してくれる人はここにはいない。
すこし寂しい気持ちになってしまった。











 

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品