ストレート〜僕が大好きな幼馴染みの夢を叶える物語〜
01 春ですなあ
「さぁこーい!」
白球を追いかける球児たちを、教室の窓から眺めている1人の男。
「そろそろ帰るか。」
西川(にしかわ) 葵(あおい)。15歳。ここ私立七條(しちじょう)学園高校に入学した、男子高校生。
教室を出て、生徒玄関を抜けると、グラウンドの横に大きな桜の木がある。
「いやいや、もうすっかり春ですなあ。」
自転車に跨り、満開の桜の木を通り越す。坂を下ってすぐの自宅から通っているようだ。ドアを開けると、母親の声が聞こえる。
「ただいま〜。」
「あらおかえり。どうだった?学校は。」
「別に、中等部と変わんないよ。みんな見たことある顔だもん。」
「そっか。勉強もちゃんとやるのよ。」
うん。と軽く返事をし、葵は食器を洗っている母との会話を終え、リビングにある白いソファーに腰を下ろし、テレビをつけた。
「高校野球、春季リーグ戦の結果は──」
テレビでは、夕方のニュースで高校野球の結果を取り上げている。
「もう春季大会か。いやあ、すっかり春ですなあ。」
「あんた、ほんとに高校でも野球やらないの?」
「あぁ、野球はもうやらないよ。」
「……沙月ちゃん、今頃残念そうにしてるわよ。」
「もうどうでもいいだろ。野球なんて。」
テレビを消し、階段を上る。二階にある自分の部屋に入り、何やらトレーニング器具を取り出した。
「ふん。ふん。」
彼には、中学1年の夏、祭りに行く途中に交通事故で亡くなった幼馴染み、一ノ瀬(いちのせ) 沙月(さつき)がいた。幼少期から家族絡みで仲が良く、いつも一緒にいた存在。そんな彼女が亡くなる前、葵はとある約束を交わしていた。
「絶対、甲子園で応援させてね。か。」
そうつぶやき、ダンベルを淡々と持ち上げる。このトレーニングは、沙月に提案されたものである。誰にも言うことなく、ただ1人で、ひたすらに続けていた。
「ふん。ふん。」
いつものようにトレーニングを続けていると、突然扉が開く音がした。
「そういえばあんた、一ノ瀬さんのとこからヨウカン届いてるわよ。食べる?……って、あんた、まだそれ続けてたの?」
「いいだろ、別に。特にやること無いんだし。」
「いくら沙月ちゃんとの約束だからって、野球やらないんじゃ、意味ないんじゃ無いの?」
「日課なんだよ。これ。やらなくなったら身体がムズムズする。」
「そう。じゃ頑張りなさい。ヨウカン、下に置いとくからね。」
そう言い残し、母は階段を降りていった。
「野球、ね。」
白球を追いかける球児たちを、教室の窓から眺めている1人の男。
「そろそろ帰るか。」
西川(にしかわ) 葵(あおい)。15歳。ここ私立七條(しちじょう)学園高校に入学した、男子高校生。
教室を出て、生徒玄関を抜けると、グラウンドの横に大きな桜の木がある。
「いやいや、もうすっかり春ですなあ。」
自転車に跨り、満開の桜の木を通り越す。坂を下ってすぐの自宅から通っているようだ。ドアを開けると、母親の声が聞こえる。
「ただいま〜。」
「あらおかえり。どうだった?学校は。」
「別に、中等部と変わんないよ。みんな見たことある顔だもん。」
「そっか。勉強もちゃんとやるのよ。」
うん。と軽く返事をし、葵は食器を洗っている母との会話を終え、リビングにある白いソファーに腰を下ろし、テレビをつけた。
「高校野球、春季リーグ戦の結果は──」
テレビでは、夕方のニュースで高校野球の結果を取り上げている。
「もう春季大会か。いやあ、すっかり春ですなあ。」
「あんた、ほんとに高校でも野球やらないの?」
「あぁ、野球はもうやらないよ。」
「……沙月ちゃん、今頃残念そうにしてるわよ。」
「もうどうでもいいだろ。野球なんて。」
テレビを消し、階段を上る。二階にある自分の部屋に入り、何やらトレーニング器具を取り出した。
「ふん。ふん。」
彼には、中学1年の夏、祭りに行く途中に交通事故で亡くなった幼馴染み、一ノ瀬(いちのせ) 沙月(さつき)がいた。幼少期から家族絡みで仲が良く、いつも一緒にいた存在。そんな彼女が亡くなる前、葵はとある約束を交わしていた。
「絶対、甲子園で応援させてね。か。」
そうつぶやき、ダンベルを淡々と持ち上げる。このトレーニングは、沙月に提案されたものである。誰にも言うことなく、ただ1人で、ひたすらに続けていた。
「ふん。ふん。」
いつものようにトレーニングを続けていると、突然扉が開く音がした。
「そういえばあんた、一ノ瀬さんのとこからヨウカン届いてるわよ。食べる?……って、あんた、まだそれ続けてたの?」
「いいだろ、別に。特にやること無いんだし。」
「いくら沙月ちゃんとの約束だからって、野球やらないんじゃ、意味ないんじゃ無いの?」
「日課なんだよ。これ。やらなくなったら身体がムズムズする。」
「そう。じゃ頑張りなさい。ヨウカン、下に置いとくからね。」
そう言い残し、母は階段を降りていった。
「野球、ね。」
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