霊能者、異世界を征く!
最悪な第一歩
俺は、仰向けで寝転がっていた。
目の前には、木々に切り取られた青い空。ここからは太陽は見えないが、青々と茂る葉に遮られながらも、サンサンと眩い光が上空から降り注いでいる。
「身体が重い……、なにコレ」
全身に濡れた衣服を幾重にもまとったかのような重さに、起き上がるのに四苦八苦させられた。それでもなんとか身体を起こし、辺りを見回した。
見渡す限り、深い木々に囲まれた森……としか言いようがない。こんな風景は、小さい頃に山菜取りに行った時の、超うろ覚えの記憶しかない。
そして、見下ろすように自分の姿を顧みた。
記憶のままの半袖シャツに、極普通のジーンズ、スニーカー。あちこち薄汚れて、右袖が肩まで破れてはいるが、見たところ怪我はしていない。
顔を触ると、愛用の黒縁メガネは何とか無事のようである。もとより度は入ってないので無くても問題ないけれど、小学生の頃からかけていたので、ないと落ち着かないアイテムではある。
「飛行機が、落ちたんだっけ……いや、不時着だったか……それで、放り出されたのか?」
見たところ飛行機の破片も、他の乗客の姿も見当たらない。
「……あれは夢だった? どれが夢?」
ふと足元をみると、リュックのような革製のバッグが落ちている。
中身が詰まっているそのリュックを眺めているうちに、ゆっくり一個ずつパズルが嵌っていくように記憶が蘇ってきた。
そうだ、最後にコレを押し付けられて……。
「嘘だろ……じゃあ、ここは異世界なのか? いやいや、バカな」
だいたい、神に会ったって……そんなバカなことが。
なんかイロイロ言われたけど、ほとんど要領を得なかった。運命がどうとか、世界がどうとか。
とにかく俺は飛行機事故で死ぬはずだったところを助けられて、こっちの世界に放り込まれた、という感じの説明だった気がする。
「そうだ、腕!」
神と名乗る二人が、腕がもげたとかなんとか物騒な話をしていたことを思い出して、慌てて両腕を交互に触った。
腕は……ついてる、怪我一つない。
ホッと一安心したが、シャツの右袖が破れているのが気になった。引きちぎったように繊維が毛羽立ち、気のせいでなければ所々に茶色いシミがこびりついている。
俺の記憶の中で、白く長いヒゲを撫でつける自称神の得意げな姿が、くっきりと再生された。
「ひげ……」
いやいや……いやいや! ないっ! ヒゲが腕になってたまるか。
俺は考えるのをやめた。
それよりも今は。
「ここにじっとしても仕方がない。ともかく、人がいるところに……」
異世界だとして、まさか文明の一つもないということはないだろう。
彼らが本当に神だとして、ミジンコレベルの生物しかいないところに放り込んだりはしない、と信じたい。
「なんでもいいけど、とにかく身体がくっそ重いのは何とかならんのか。重力とかの問題か?」
こちらの住人より身体が脆いとか言ってた気がするが、……こういうことなのか。
もしそうなら、同じ高さから落ちても衝撃が何倍になったり、すべての物がくっそ重いとか。考えたくもないが……これは慣れるしかないのか? 果たして、慣れで何とかなるものなのか!?
――グルルル……。
そんな時、後方から獣の唸り声が聞こえた。
慌てて振り向くと、犬の二倍もありそうな大型の獣がまさに飛びかかってくるところだった。
「……うわっ! ……えっ、あうあ?!」
とっさに利き腕で顔を庇って後退りすると、そこにあったリュックに足を取られて、俺はあっという間にひっくり返った。
目の前には、木々に切り取られた青い空。ここからは太陽は見えないが、青々と茂る葉に遮られながらも、サンサンと眩い光が上空から降り注いでいる。
「身体が重い……、なにコレ」
全身に濡れた衣服を幾重にもまとったかのような重さに、起き上がるのに四苦八苦させられた。それでもなんとか身体を起こし、辺りを見回した。
見渡す限り、深い木々に囲まれた森……としか言いようがない。こんな風景は、小さい頃に山菜取りに行った時の、超うろ覚えの記憶しかない。
そして、見下ろすように自分の姿を顧みた。
記憶のままの半袖シャツに、極普通のジーンズ、スニーカー。あちこち薄汚れて、右袖が肩まで破れてはいるが、見たところ怪我はしていない。
顔を触ると、愛用の黒縁メガネは何とか無事のようである。もとより度は入ってないので無くても問題ないけれど、小学生の頃からかけていたので、ないと落ち着かないアイテムではある。
「飛行機が、落ちたんだっけ……いや、不時着だったか……それで、放り出されたのか?」
見たところ飛行機の破片も、他の乗客の姿も見当たらない。
「……あれは夢だった? どれが夢?」
ふと足元をみると、リュックのような革製のバッグが落ちている。
中身が詰まっているそのリュックを眺めているうちに、ゆっくり一個ずつパズルが嵌っていくように記憶が蘇ってきた。
そうだ、最後にコレを押し付けられて……。
「嘘だろ……じゃあ、ここは異世界なのか? いやいや、バカな」
だいたい、神に会ったって……そんなバカなことが。
なんかイロイロ言われたけど、ほとんど要領を得なかった。運命がどうとか、世界がどうとか。
とにかく俺は飛行機事故で死ぬはずだったところを助けられて、こっちの世界に放り込まれた、という感じの説明だった気がする。
「そうだ、腕!」
神と名乗る二人が、腕がもげたとかなんとか物騒な話をしていたことを思い出して、慌てて両腕を交互に触った。
腕は……ついてる、怪我一つない。
ホッと一安心したが、シャツの右袖が破れているのが気になった。引きちぎったように繊維が毛羽立ち、気のせいでなければ所々に茶色いシミがこびりついている。
俺の記憶の中で、白く長いヒゲを撫でつける自称神の得意げな姿が、くっきりと再生された。
「ひげ……」
いやいや……いやいや! ないっ! ヒゲが腕になってたまるか。
俺は考えるのをやめた。
それよりも今は。
「ここにじっとしても仕方がない。ともかく、人がいるところに……」
異世界だとして、まさか文明の一つもないということはないだろう。
彼らが本当に神だとして、ミジンコレベルの生物しかいないところに放り込んだりはしない、と信じたい。
「なんでもいいけど、とにかく身体がくっそ重いのは何とかならんのか。重力とかの問題か?」
こちらの住人より身体が脆いとか言ってた気がするが、……こういうことなのか。
もしそうなら、同じ高さから落ちても衝撃が何倍になったり、すべての物がくっそ重いとか。考えたくもないが……これは慣れるしかないのか? 果たして、慣れで何とかなるものなのか!?
――グルルル……。
そんな時、後方から獣の唸り声が聞こえた。
慌てて振り向くと、犬の二倍もありそうな大型の獣がまさに飛びかかってくるところだった。
「……うわっ! ……えっ、あうあ?!」
とっさに利き腕で顔を庇って後退りすると、そこにあったリュックに足を取られて、俺はあっという間にひっくり返った。
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