霊能者、異世界を征く!
白い空間
気が付くと、目の前は真っ白な空間だった。正確にいうと、見えているわけではない。ただ、そう感じただけだ。
「なんですか、この状態は。五体満足で連れて来れなかったんですか。そのためにわざわざ出向いたのではなかったのですか?」
「ええい、ゴチャゴチャうるさい。こやつを説き伏せるのに手間取ったのじゃ。しかも、儂をその辺の幽霊扱いしおって……」
光の中心で誰かが言い争うような声が聞こえてきた。苦言を呈している方の言葉遣いが丁寧なことを思うと、上司と部下といった感じだろうか。
「可哀想に……ごらんなさい、腕は完全にもげて使い物になりませんし、この怪我は十分に致死レベルですよ。ショックで肝心の魂が壊れたら何にもならないんですからね」
えっ、なに、腕?! なんの話をして……。
そういえば、ちょっとだけ思い出した。俺は飛行機に乗っていて、事故で死ぬっておかしな幽霊に宣言された気がする。悪戯好きの霊かなにかが適当言ってるんだと思ってたけど、マジだったわけ?
あの時、事故で死ぬのは俺だけだって言ってけど……確か、運命がどうとか、誰かに引きずられて死を呼び合ったんだとかなんとか……なんだっけ、ちゃんと聞いとけばよかったぜ。
「そ、それは大丈夫じゃ。ここに連れてきた時点で時間は止まっておる。それで、こう! ちょちょいのちょいっと、こうすれば……」
「だ、だめですよ、そんなことしたら、……って、なんてことするんですか?! そんなことしたら」
「大丈夫じゃ、もう腕はくっついたぞ」
「…………」
ちょっと、何してくれちゃったの!? 部下の人黙っちゃったんだけど?
「そ、損傷は直さないと地上に戻せぬであろ。治癒では時間がかかるし、ここに長時間留めても置けぬのだから仕様がないのじゃ」
「それはそうですが、いっそ転生させた方がよかったのでは?」
「……!?」
今、あきらかにハッとしたよな。
なんなんだよ、この迂闊な人。しかも転生とか、訳の分からないこと言ってるし。
「ご、ごちゃごちゃ言うでない。ちょっと腕をくっつけただけじゃ、現に問題なかったではないか」
「運がよかっただけです! 下手をすれば魂まで粉々でしたよ」
深い溜息とともに、苦労性っぽい部下の人がトンデモないことを言っている。
わかった、少なくともこの爺さんがダントツろくでもないことはわかった。とにかく、俺もなにか文句を言わないとダメだということも。
「こやつがあまりにも不憫での……もともとこやつらに罪はないのじゃ。せめて片割れだけでも助けたいと思うではないか」
「べつに、彼をこちらに連れてくることには反対しませんよ。なにしろ元々は……おや、目を覚ましたようですよ」
彼らの声が、ふいに直接耳に聞こえてきたと思ったら、いきなり俺の目に二人の人物の姿が映った。
「……あ、あの時の幽霊!」
思わず叫んだ俺に、飛行機の天井に浮いていた爺さんと同じ姿をした人物が、ムッとしたように唇を尖らせてソッポを向いた。
いや、一ミリも可愛くないからな。
「幽霊ではないというに、まったく無礼な奴じゃ」
「目が覚めてよかった。腕の調子はどうですか? 違和感はないですか?」
「腕? 別に、どうも……」
そう言えば、夢で腕がもげたとかもげないとか言ってたような。
「儂のヒゲで新たに作った腕じゃ。ありがたく受け取るがいい」
「ひ、ひげっ!? は? なにを……」
「本当に無事でようございました。神の御身の一部を人に混ぜるなど、下手をすれば魂ごと存在が消滅してもおかしくはなかったのです」
「……っっ!?」
勢いよくヒゲジジイを振り返ると、サッと目を逸らして、へたくそな口笛を吹いていた。
ごまかし方が古い! って、今、こっちの人神って言った? この爺さんが?!
「なんですか、この状態は。五体満足で連れて来れなかったんですか。そのためにわざわざ出向いたのではなかったのですか?」
「ええい、ゴチャゴチャうるさい。こやつを説き伏せるのに手間取ったのじゃ。しかも、儂をその辺の幽霊扱いしおって……」
光の中心で誰かが言い争うような声が聞こえてきた。苦言を呈している方の言葉遣いが丁寧なことを思うと、上司と部下といった感じだろうか。
「可哀想に……ごらんなさい、腕は完全にもげて使い物になりませんし、この怪我は十分に致死レベルですよ。ショックで肝心の魂が壊れたら何にもならないんですからね」
えっ、なに、腕?! なんの話をして……。
そういえば、ちょっとだけ思い出した。俺は飛行機に乗っていて、事故で死ぬっておかしな幽霊に宣言された気がする。悪戯好きの霊かなにかが適当言ってるんだと思ってたけど、マジだったわけ?
あの時、事故で死ぬのは俺だけだって言ってけど……確か、運命がどうとか、誰かに引きずられて死を呼び合ったんだとかなんとか……なんだっけ、ちゃんと聞いとけばよかったぜ。
「そ、それは大丈夫じゃ。ここに連れてきた時点で時間は止まっておる。それで、こう! ちょちょいのちょいっと、こうすれば……」
「だ、だめですよ、そんなことしたら、……って、なんてことするんですか?! そんなことしたら」
「大丈夫じゃ、もう腕はくっついたぞ」
「…………」
ちょっと、何してくれちゃったの!? 部下の人黙っちゃったんだけど?
「そ、損傷は直さないと地上に戻せぬであろ。治癒では時間がかかるし、ここに長時間留めても置けぬのだから仕様がないのじゃ」
「それはそうですが、いっそ転生させた方がよかったのでは?」
「……!?」
今、あきらかにハッとしたよな。
なんなんだよ、この迂闊な人。しかも転生とか、訳の分からないこと言ってるし。
「ご、ごちゃごちゃ言うでない。ちょっと腕をくっつけただけじゃ、現に問題なかったではないか」
「運がよかっただけです! 下手をすれば魂まで粉々でしたよ」
深い溜息とともに、苦労性っぽい部下の人がトンデモないことを言っている。
わかった、少なくともこの爺さんがダントツろくでもないことはわかった。とにかく、俺もなにか文句を言わないとダメだということも。
「こやつがあまりにも不憫での……もともとこやつらに罪はないのじゃ。せめて片割れだけでも助けたいと思うではないか」
「べつに、彼をこちらに連れてくることには反対しませんよ。なにしろ元々は……おや、目を覚ましたようですよ」
彼らの声が、ふいに直接耳に聞こえてきたと思ったら、いきなり俺の目に二人の人物の姿が映った。
「……あ、あの時の幽霊!」
思わず叫んだ俺に、飛行機の天井に浮いていた爺さんと同じ姿をした人物が、ムッとしたように唇を尖らせてソッポを向いた。
いや、一ミリも可愛くないからな。
「幽霊ではないというに、まったく無礼な奴じゃ」
「目が覚めてよかった。腕の調子はどうですか? 違和感はないですか?」
「腕? 別に、どうも……」
そう言えば、夢で腕がもげたとかもげないとか言ってたような。
「儂のヒゲで新たに作った腕じゃ。ありがたく受け取るがいい」
「ひ、ひげっ!? は? なにを……」
「本当に無事でようございました。神の御身の一部を人に混ぜるなど、下手をすれば魂ごと存在が消滅してもおかしくはなかったのです」
「……っっ!?」
勢いよくヒゲジジイを振り返ると、サッと目を逸らして、へたくそな口笛を吹いていた。
ごまかし方が古い! って、今、こっちの人神って言った? この爺さんが?!
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