蔵書一万冊を多分超えるであろう元書店員のお勧めマンガ

彦猫

その二十 木根さんの1人でキネマ  アサイ 白泉社   

 世の中にマンガや映画を語る作品は多かれど、ここまで正直に自分の感性に従った作品はないであろう。
 ようするに年齢3(バキューン)歳の独身OL木根さんが、様々な映画のことを語っていくマンガである。
 映画評論とかいうと小難しい衒学趣味を延々と文章にするサイトなどもあるが、木根さんの語る映画はそれと対極にある。
 ようは彼女が、面白いか面白くないかだけを、心底正直に語るのだ。もちろん年齢によって映画の評価も変わるものだが、それも全て正直に書いてある。
 ブログを開設している彼女は、自分に正直にと言いながらも、稀に読者に媚びて、炎上したりする。
 映画を題材としているが、それを語る上において、様々な騒動が起きる。その人間模様が大変に面白い。


 扱っている映画はぱっと有名どころを挙げても
 ・ターミネーター
 ・スターウォーズ
 ・インディ・ジョーンズ
 ・バック・トゥ・ザ・フューチャー
 などという、映画史に残る娯楽映画化の数々。木根さんの楽しむ作品は、娯楽性に優れた作品が極めて多い。


 少し作品の中から彼女の極めて偏った言葉を集めると
「「ターミネーター2」見た事ない奴なんてこの星にいるの?」
「「スター・ウォーズ」はね ただの映画じゃないの 現代の神話なの!」
バック・トゥ・ザ・フューチャーに関して「食べ物で言ったらカレー! 食べたことない奴も嫌いな奴もいないでしょ!」
 1巻だけでこんな調子。とにかく映画に関する台詞に熱がある。
 彼女はいわゆる芸術性の高い作品ではなく、とにかく自分が面白いと思った作品を面白いと言うのだ。そこに嘘はない。


 周囲のキャラもわざわざキャラが立っていて、好きな映画に対するツボは同じでも、娯楽映画を深読みして語りまくる同居人(女)とか
 レオンの映画版とディレクターズカット版に関して議論を戦わせる後輩とか、オタ・恋愛下手・デブなどの高校時代の友人など
 とにかくキャラに熱があるのだ。
 個人的にはスターウォーズで議論を戦わせるオッサン3人が好きだ。


 扱う作品はおおよそ娯楽作品であるが、エヴァンゲリオンが出てきたり、卒業が出てきたり、なかなかアンテナが広い。
 タイタニックの一番の見所を「船が割れて人がボトボトと落ちていくところ」など、目の付け所も素敵。
 そのくせジブリ映画を見たことがないとか、変なところもあるんです。
 ジブリ映画を推してくる後背たちに対して「ゲド戦記が見てみたい」なんていう木根さんは最高です。
 個人的には感動の実話系の映画をクソと言ってしまえるところもチャーミング。
 とにかく映画が大好きで、評価を曲げない木根さんは、信念を持った生き物である。


 マッドマックス 怒りのデス・ロードにハマっているところを、宗教のようだと言われたりもする。
 これはそんな木根さんと、周囲の人々の映画に関連するお話。


 あ、30代後半から40代、またはスターウォーズリアル世代、社会人になったばかり世代と、多くの年代で共感出来る作品ですので、それもアピールポイントですね。

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