蔵書一万冊を多分超えるであろう元書店員のお勧めマンガ

彦猫

その十九 バジリスク  せがわまさき/講談社

 原作は山田風太郎先生の超傑作甲賀忍法帳。
 伊賀と甲賀の忍者10人ずつが戦い合い、最後に残った陣営が、次代の将軍を決めるというストーリー。
 せがわまさきと言えば、これ以降は十兵衛か忍法ものばかり描いてますが(まあそれ以前も似たようなものですが)傑作と言えるのはこれだけでしょう。
 いや、他の作品も面白くないわけではないんですよ? ただ密度、キャラ、物語と総合的に考えた場合、やはりこれが一番でしょう。
 魔界転生は原作ではこれに匹敵するほど面白いですが、どうも漫画の方は最近の流行に乗ってか、間延びした印象を与えてしまいます。
 この方に限ったわけではないんですけど、サンデーが40巻縛りをなくしてメジャーが70巻以上続いたあたりから、もしくはワンピースがいくらでも話を続けられる設定にしたあたりから、漫画の濃度というか、魂の発散は薄れてきたような気がします。
 まあ私はワンピース読んでないんですけどね!
 ドラゴンボールなら3~5話あたりで終わっていた話を、ワンピに限った話ではありませんが、最近は5~6巻に引き伸ばしているように思えます。
 売れてるコンテンツを引き伸ばしたいというのは分かるのですが、それによって人気作は全て薄味となり、あるいは水戸黄門や必殺シリーズのようなパターン化したものとなり、尖った部分がなくなっています。
 尖った部分に刺激を受け、人生を変えられるというのは昨今の創作物にはもう珍しいのでしょうか。


 まあ「最近の作品は~」などと言うのはおっさんお戯言として、バジリスクの魅力はやはり、忍者たちの持つ多様な忍術。
 なろうで言うところのチートスキル。ユニークスキルでしょうか。
 見ただけで相手が死ぬとか、不死身とか、それら全てを打ち消すとか、どれもこれも強力です。
 その忍術を使い死闘を繰り広げるのが、この作品の魅力であります。
 10人の忍者たちがどんどんと数を減らしていくところなど、デスゲームにも似た要素がありますね。
 ……まあ互いの戦力が削り合っていくというのは伊賀の影丸の頃からの伝統なのですが、山田先生の方が先駆者ですしね。 


 とにかく忍者同士の死闘と、その中で繰り広げられる人間関係が、この作品の魅力です。
 全く引き伸ばし感がなく、5巻で完結しているというのも、おおいに評価していい部分だと思います。
 最終話にかけての切ない描写などは、幕引きを見事に表現したものだと思います。


 バジリスク全5巻。お財布にも優しい傑作ですよ。是非ご覧あれ。

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