星の彼方

柊 雨潮

刻まれた意志

『ま…マーリン……?』

襲われるルインが放ったその言葉にマーリンのその身体は無意識に行動に出ていた。

レッドゴーレムがルインに追い付き
大木で潰そうとしたその時、結界が現れ
レッドゴーレムの攻撃を防ぐ

そしてルインの身体に覆い被さる様に突如目の前に現れたのは白い服を纏った白い長髪の男だった。

『え?えぇ?!だ、誰?…っ!』

余りにも急な出来事にルインは困惑したがそんな事にお構い無しと男は質問をしてきた。

『何故君が僕の名を知っているんだい!?』

『え…?な?なまえ??』

ガシッと両腕を掴み顔をルインに近ずけるマーリン

『言っただろう?マーリンと!それは僕の名だ!何故知ってる!?』

ルインは間を置いたが少し息を吸ってマーリンに答えた。

『頭の中で、声がしたんだ…!君と、金色の髪の男の子。顔は見えなかったけど…そうだ、君はマーリンだ。会ったこともないのに、なぜ…分かるんだろう?』

悲しくもないのに頬に伝う涙
知らないはずのこの男を見た瞬間
胸がとても締め付けられた。

『何故、会いたかったなんて思うんだろう。君は、一体なんなの?』

マーリンは少しの間沈黙し、こう答えた

『アーサー……』

なんだ?僕はアーサーじゃない、と言おうと思ったのだが、言えなかった。

だって、目の前の男が余りにも悲しい顔で僕をそう呼ぶから。
生き別れた大切な人をやっと見つけたような。そんな風に彼が僕を見るから。

しかし足の酷い痛みで意識を保つのがやっとな僕は彼に言葉をかけることが出来なかった。

『…足を怪我したんだね』

痛がる僕を見た彼はそう呟くと彼はぐちゃぐちゃになった足に手を添えた
すると僕の足が光り始め周りの草が集まってきた。
段々と足の痛みは無くなり草が消えると足は綺麗に元に戻ってた。

『え?これ、魔法?こんな治癒の術式、聞いた事ない……』

この世界の治癒魔法は病気を治したり怪我も治せる。
けれどここまで致命的な傷は治せない。
その足に宿ったマナが破壊されてるから元の組織が復元できない筈なのに

『君は、本当に一体、なんなの?』

僕の問いに目の前の男はニコリと笑った

『僕からしたらルイン。君こそ一体なんなんだと思ってるくらいだ。』

よっこらせと言いながら男は僕を抱き上げた

『悪いが今はゆっくり話せない。後でじっくり話そう。結界の外を見てごらん?』

僕が横を見ると、そこには怒り狂ったレッドゴーレムが結界を休む間もなく叩き続けていた。

『ひっ…!!』

僕は顔を青くしてマーリンに必死にしがみついた。

『おっと。あまり暴れないでおくれ。転移の際に落っことしてもしらないぞ?』

マーリンが手を伸ばすと杖が出現した。

『木の、杖?』

木の杖は杖の種類で初期装備にあたる杖だ、つまりは1番弱い杖。
この男、さっきの魔法からするとかなりの使い手の筈なのに……

『ルガメンテ、僕らをブリテンへ連れて行っておくれ』

マーリンがそう唱えると目の前のゴーレムは消え、景色は一瞬で変わった

『え……?な、にここ。』

『ここはブリテン島だよ。そしてこの森は僕が昔住んでたところだ、結界を張ってるから魔物や人は来ないよ。』

僕は一瞬考えたが考えても考えはまとまらなかった。
だって僕らはウェールズの…、ブリテン島からみて端っこの所にさっきまで居たんだ。

『転移の…魔法?木の杖で?』

『魔の心得があるね。両親が魔法使いだったものね。そうともこれは転移の魔法、そしてこれはただの木の杖「ルガメンテ」だよ。』

少し自慢げにマーリンは僕話した
そして僕を見て少し真剣な顔をした。

『我が森にようこそルイン、僕はマーリン、彼の英雄アーサー王の配下の一人だった、魔法と剣術がちょっとだけ得意な魔法使いだよ。』



刻まれた意思終(続く)

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