【コミカライズ】恋に恋する侯爵令嬢のこじらせ恋愛
自由恋愛万歳!2
数日前はうきうきしていたカトリーナだったが、高揚した気持ちはすぐに沈むことになる。
「お母様ったら、あんまりだわ!」
ぼすん、とふかふかのクッションを壁に投げつけて、カトリーナはふくれっ面になった。
アリッサが床に転がったクッションを回収して、ソファの定位置に戻す。
王太子から婚約破棄を言い渡されて、るんるんと自由恋愛を楽しもうとしていたカトリーナだったが、母親から外出禁止令を出されたのだ。ほとぼりが冷めるまで、邸でおとなしくしているように言われたのである。
婚約破棄の噂は瞬く間に城下に広まったらしく、カトリーナが思っている以上に深刻らしい。
婚約破棄されたカトリーナには、実は人に言えない欠陥があったのだとも言われているそうだ。
父によれば、今回のことを心苦しく思っているらしい国王が、カトリーナが社交界で肩身の狭い思いをしないように取り計らってくれるという話であるが、噂に尾ひれどころか背びれも腹びれも胸びれまでくっついて広まっている今は、下手に動けば逆効果な可能性があるらしく、国王が動くのはもう少し後になりそうだとのことだった。
二日前に『王太子に早くも新たな婚約候補!?』という見出しで、レオンハルトがブラウンの髪の女性を探しているらしいという新聞記事を読んだカトリーナは悔しくて仕方がなかった。
(殿下ばっかりずるいわ!)
本当ならば、カトリーナも大手を振って甘い恋を探しに出歩いているはずだったのだ。
カトリーナはもう一度クッションを掴むと、えい! と壁に投げつける。
「お嬢様! クッションを投げるのは一日三回までというお約束でしょう!」
壁に投げつけられたクッションを拾うのが本日四回目を数えたアリッサがまなじりをつり上げた。
「あら、ごめんなさい。もう今日はおしまいだったのね」
三日前に、不貞腐れてクッションを投げ続けたカトリーナは、アリッサに「一日三回まで」を約束させられていたのだ。
カトリーナはアリッサからクッションを受け取ると、腕の中にぎゅっと抱きしめる。
なんとかして出歩かなければ、新しい恋に出会えない。思い出の彼との再会も期待できない!
母にもばれず、城下の人々にもカトリーナと気づかれず外に出る方法はないものか。
カトリーナがうーんと考え込んだとき、こんこんと部屋の扉が叩かれた。
「姉さん、頼まれてた本だけど」
まだ幼さが残る、十二歳の弟のアーヴィンがひょっこり顔をのぞかせた。
カトリーナはパッと顔をあげると、抱えていたクッションを投げ出してアーヴィンに駆け寄った。
「まあ! 『仮面紳士の情熱』の最新刊ね!」
弟は、頼んでいた恋愛小説を買ってきてくれたのだ。
カトリーナはアーヴィンから小説の最新刊を受け取ると、うっとりとその拍子に描かれた仮面をかぶった黒髪の男性の絵を見つめ、はた、と気がついた。
「そうよ!」
両手で小説をぎゅっと握りしめ、
「仮面舞踏会があるじゃない!」
カトリーナは青紫色の瞳をキラキラと輝かせる。
仮面舞踏会ならば顔もはっきりとは見えないし、誰もカトリーナだとは気づかないはずだ。
「仮面舞踏会の素敵な出会い! 最高ねっ」
妄想の世界に入り込んでしまったカトリーナの隣で、アリッサがはあーと盛大なため息をこぼす。
アーヴィンはそんな姉の姿に、
「相変わらずお花畑だなぁ」
落ち込んでないようで何よりだよ、と笑ったのだった。
「お母様ったら、あんまりだわ!」
ぼすん、とふかふかのクッションを壁に投げつけて、カトリーナはふくれっ面になった。
アリッサが床に転がったクッションを回収して、ソファの定位置に戻す。
王太子から婚約破棄を言い渡されて、るんるんと自由恋愛を楽しもうとしていたカトリーナだったが、母親から外出禁止令を出されたのだ。ほとぼりが冷めるまで、邸でおとなしくしているように言われたのである。
婚約破棄の噂は瞬く間に城下に広まったらしく、カトリーナが思っている以上に深刻らしい。
婚約破棄されたカトリーナには、実は人に言えない欠陥があったのだとも言われているそうだ。
父によれば、今回のことを心苦しく思っているらしい国王が、カトリーナが社交界で肩身の狭い思いをしないように取り計らってくれるという話であるが、噂に尾ひれどころか背びれも腹びれも胸びれまでくっついて広まっている今は、下手に動けば逆効果な可能性があるらしく、国王が動くのはもう少し後になりそうだとのことだった。
二日前に『王太子に早くも新たな婚約候補!?』という見出しで、レオンハルトがブラウンの髪の女性を探しているらしいという新聞記事を読んだカトリーナは悔しくて仕方がなかった。
(殿下ばっかりずるいわ!)
本当ならば、カトリーナも大手を振って甘い恋を探しに出歩いているはずだったのだ。
カトリーナはもう一度クッションを掴むと、えい! と壁に投げつける。
「お嬢様! クッションを投げるのは一日三回までというお約束でしょう!」
壁に投げつけられたクッションを拾うのが本日四回目を数えたアリッサがまなじりをつり上げた。
「あら、ごめんなさい。もう今日はおしまいだったのね」
三日前に、不貞腐れてクッションを投げ続けたカトリーナは、アリッサに「一日三回まで」を約束させられていたのだ。
カトリーナはアリッサからクッションを受け取ると、腕の中にぎゅっと抱きしめる。
なんとかして出歩かなければ、新しい恋に出会えない。思い出の彼との再会も期待できない!
母にもばれず、城下の人々にもカトリーナと気づかれず外に出る方法はないものか。
カトリーナがうーんと考え込んだとき、こんこんと部屋の扉が叩かれた。
「姉さん、頼まれてた本だけど」
まだ幼さが残る、十二歳の弟のアーヴィンがひょっこり顔をのぞかせた。
カトリーナはパッと顔をあげると、抱えていたクッションを投げ出してアーヴィンに駆け寄った。
「まあ! 『仮面紳士の情熱』の最新刊ね!」
弟は、頼んでいた恋愛小説を買ってきてくれたのだ。
カトリーナはアーヴィンから小説の最新刊を受け取ると、うっとりとその拍子に描かれた仮面をかぶった黒髪の男性の絵を見つめ、はた、と気がついた。
「そうよ!」
両手で小説をぎゅっと握りしめ、
「仮面舞踏会があるじゃない!」
カトリーナは青紫色の瞳をキラキラと輝かせる。
仮面舞踏会ならば顔もはっきりとは見えないし、誰もカトリーナだとは気づかないはずだ。
「仮面舞踏会の素敵な出会い! 最高ねっ」
妄想の世界に入り込んでしまったカトリーナの隣で、アリッサがはあーと盛大なため息をこぼす。
アーヴィンはそんな姉の姿に、
「相変わらずお花畑だなぁ」
落ち込んでないようで何よりだよ、と笑ったのだった。
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