旦那様は魔王様
3
沙良はアスヴィルの部屋でシヴァの好物であるチョコチップクッキーを焼かせてもらい、それを抱えて彼の部屋を訪れていた。
こんこん、とノックをすると、「誰だ」と誰何される。
「沙良です」
答えると、ややして部屋の扉が開いてシヴァに招き入れられた。
どうぞ、とクッキーを差し出すと、当然のようにソファをすすめられ、パチンとシヴァが指を鳴らす。
テーブルの上にティーカップが二セット登場すると、シヴァは沙良から渡された包みを開いてクッキーを一枚手に取った。
数日に一度、沙良がクッキーを差し入れに来ると、シヴァは必ずこうして迎えてくれる。
だが、今日はいつもとシヴァの様子が違った。
クッキーを食べてくれるのも、こうして紅茶を用意してくれるのもいつもと同じだが、シヴァのその表情が苦悶に満ちている。というより不機嫌だ。
眉間に深い皺を刻んだまま、もくもくとクッキーを食べている魔王様を、沙良は不思議そうに見上げた。
「どうかしたんですか?」
訊ねると、シヴァは手を伸ばして、不機嫌そうな表情のまま沙良の頭をぽんぽんと撫でた。
「いや……、お前が気にする必要はない」
「そうですか?」
沙良は素直に頷いたが、シヴァのことが心配だった。きっと何かあったのだ。
けれど、きっとそれは沙良が聞いたところでよくわからないことなのだろうから、あまりしつこく訊ねないほうがいいのだろう。
そう思いながら、持ってきたチョコチップクッキーが次々とシヴァの胃に収まっていくのを見つめていると、コンコンと扉をたたく音がした。
シヴァは顔を上げて、不機嫌な声で誰何する。
「なんだ」
「お手紙が届いております。至急とのことです」
シヴァは小さく嘆息してソファから立ち上がった。
部屋の扉を開けて、従者だろう男から一通の手紙を受け取ると、開封しながらソファに戻ってくる。
沙良の隣で手紙の文面に目を走らせたシヴァは、ぐっと顔をしかめた。
「沙良―――」
シヴァは手紙をぐしゃりと握りつぶし、言った。
「これから、俺が許可するまでは、部屋から出ることを禁止する」
こんこん、とノックをすると、「誰だ」と誰何される。
「沙良です」
答えると、ややして部屋の扉が開いてシヴァに招き入れられた。
どうぞ、とクッキーを差し出すと、当然のようにソファをすすめられ、パチンとシヴァが指を鳴らす。
テーブルの上にティーカップが二セット登場すると、シヴァは沙良から渡された包みを開いてクッキーを一枚手に取った。
数日に一度、沙良がクッキーを差し入れに来ると、シヴァは必ずこうして迎えてくれる。
だが、今日はいつもとシヴァの様子が違った。
クッキーを食べてくれるのも、こうして紅茶を用意してくれるのもいつもと同じだが、シヴァのその表情が苦悶に満ちている。というより不機嫌だ。
眉間に深い皺を刻んだまま、もくもくとクッキーを食べている魔王様を、沙良は不思議そうに見上げた。
「どうかしたんですか?」
訊ねると、シヴァは手を伸ばして、不機嫌そうな表情のまま沙良の頭をぽんぽんと撫でた。
「いや……、お前が気にする必要はない」
「そうですか?」
沙良は素直に頷いたが、シヴァのことが心配だった。きっと何かあったのだ。
けれど、きっとそれは沙良が聞いたところでよくわからないことなのだろうから、あまりしつこく訊ねないほうがいいのだろう。
そう思いながら、持ってきたチョコチップクッキーが次々とシヴァの胃に収まっていくのを見つめていると、コンコンと扉をたたく音がした。
シヴァは顔を上げて、不機嫌な声で誰何する。
「なんだ」
「お手紙が届いております。至急とのことです」
シヴァは小さく嘆息してソファから立ち上がった。
部屋の扉を開けて、従者だろう男から一通の手紙を受け取ると、開封しながらソファに戻ってくる。
沙良の隣で手紙の文面に目を走らせたシヴァは、ぐっと顔をしかめた。
「沙良―――」
シヴァは手紙をぐしゃりと握りつぶし、言った。
「これから、俺が許可するまでは、部屋から出ることを禁止する」
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