旦那様は魔王様
2
最近、シヴァの様子が変だ。
沙良はソファの上でクッションを抱えて考え込んでいた。
目の前にはアスヴィルお手製のマドレーヌと、ミリー、もといミリアムが煎れてくれた温かい蜂蜜入りの紅茶があるが、沙良はそれには一口も口をつけないで難しい顔をしている。
「どうしたんですかぁ?」
沙良の真向かいに座っているミリー――いろいろややこしいので、ミリアムが子供の姿をしているときは沙良はミリーと呼ぶことにしている――が、不思議そうな顔をした。
ミリーが実はミリアムだったという衝撃の事実は先週判明したばかりだが、どうやらミリアムは子供の姿になることを気に入ったらしく、相変わらずこの姿で沙良の世話を焼いている。
最初は戸惑った沙良だが、ミリーに「この姿のときは今まで通りミリーとして接して下さねぇ」と言われて、今では沙良の脳内でミリアムとミリーは別人のように処理されていた。
アスヴィル曰く、ミリーはミリアムの子供のころの姿のそのものだそうだが、どうもこの姿のときの方が、性格が破天荒で過激でにぎやからしい。
この前ミリアムの姿で沙良とティータイムをすごした彼女は「子供の姿になると、ついはしゃいじゃうのよね~」と言っていた。
沙良は抱えていたクッションを脇にやって、ずいっと身を乗り出した。
「ミリー、最近、シヴァ様が変なんです!」
ミリーは紅茶を飲みながらケロリと答えた。
「お兄様が変なのはいつものことじゃないですかぁ」
ミリーはわざとらしく眉間にしわを寄せて、その眉間を指さした。
「いっつもこーんなに難しい顔して、生きてて何が楽しいのかさっぱりわかりませんよ。毎日毎日、仕事してるかお茶してるかで、決まったルーティーンばっかりで、それで生きていられるんですから、元からの変人ですよ、あれはぁ」
実の兄に対して、ずいぶんと悪しざまに言うものだ。
だが、沙良が言いたいのはそういうことではない。
「いえ、そういう変じゃなくて……。あ、シヴァ様がいつも変とか、思ってませんよ! だから……」
「無理やりフォローしなくていいんですよぉ。あんな変人の嫁にされて、沙良ちゃんもかわいそうですぅ」
ミリーはマドレーヌに手を伸ばして幸せそうに頬張った。
「ん~、相変わらず顔は厳ついですけど、うちの旦那はいい仕事しますねぇ」
ミリアムの夫がアスヴィルであると言う事実も、沙良はこの前知って仰天したばかりであるが、その厳つい顔をしたアスヴィルが舌もとろけそうなお菓子を作ることは、沙良の中の不思議の一つである。
せっかくだから、七つ不思議を探してみようと、ひそかに沙良が考えていることはみんなには内緒だ。
ミリーはマドレーヌをモグモグと咀嚼して、「それで?」と訊ねた。
「あの変人お兄様が、最近もっと変になったんですか?」
沙良は一つ頷いて、三日前のことを思い出した。
沙良はソファの上でクッションを抱えて考え込んでいた。
目の前にはアスヴィルお手製のマドレーヌと、ミリー、もといミリアムが煎れてくれた温かい蜂蜜入りの紅茶があるが、沙良はそれには一口も口をつけないで難しい顔をしている。
「どうしたんですかぁ?」
沙良の真向かいに座っているミリー――いろいろややこしいので、ミリアムが子供の姿をしているときは沙良はミリーと呼ぶことにしている――が、不思議そうな顔をした。
ミリーが実はミリアムだったという衝撃の事実は先週判明したばかりだが、どうやらミリアムは子供の姿になることを気に入ったらしく、相変わらずこの姿で沙良の世話を焼いている。
最初は戸惑った沙良だが、ミリーに「この姿のときは今まで通りミリーとして接して下さねぇ」と言われて、今では沙良の脳内でミリアムとミリーは別人のように処理されていた。
アスヴィル曰く、ミリーはミリアムの子供のころの姿のそのものだそうだが、どうもこの姿のときの方が、性格が破天荒で過激でにぎやからしい。
この前ミリアムの姿で沙良とティータイムをすごした彼女は「子供の姿になると、ついはしゃいじゃうのよね~」と言っていた。
沙良は抱えていたクッションを脇にやって、ずいっと身を乗り出した。
「ミリー、最近、シヴァ様が変なんです!」
ミリーは紅茶を飲みながらケロリと答えた。
「お兄様が変なのはいつものことじゃないですかぁ」
ミリーはわざとらしく眉間にしわを寄せて、その眉間を指さした。
「いっつもこーんなに難しい顔して、生きてて何が楽しいのかさっぱりわかりませんよ。毎日毎日、仕事してるかお茶してるかで、決まったルーティーンばっかりで、それで生きていられるんですから、元からの変人ですよ、あれはぁ」
実の兄に対して、ずいぶんと悪しざまに言うものだ。
だが、沙良が言いたいのはそういうことではない。
「いえ、そういう変じゃなくて……。あ、シヴァ様がいつも変とか、思ってませんよ! だから……」
「無理やりフォローしなくていいんですよぉ。あんな変人の嫁にされて、沙良ちゃんもかわいそうですぅ」
ミリーはマドレーヌに手を伸ばして幸せそうに頬張った。
「ん~、相変わらず顔は厳ついですけど、うちの旦那はいい仕事しますねぇ」
ミリアムの夫がアスヴィルであると言う事実も、沙良はこの前知って仰天したばかりであるが、その厳つい顔をしたアスヴィルが舌もとろけそうなお菓子を作ることは、沙良の中の不思議の一つである。
せっかくだから、七つ不思議を探してみようと、ひそかに沙良が考えていることはみんなには内緒だ。
ミリーはマドレーヌをモグモグと咀嚼して、「それで?」と訊ねた。
「あの変人お兄様が、最近もっと変になったんですか?」
沙良は一つ頷いて、三日前のことを思い出した。
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