旦那様は魔王様

狭山ひびき

14

シヴァは沙良を腕に抱きかかえたまま、彼女の赤く染まった頬を見下ろした。

「気分は?」

「んん……、大丈夫です。ふわふわして、頭がぐるぐるしますけど、吐きそうとかそんなことはありません」

「ほかにおかしなところは?」

沙良はぼんやりと目を開けて、小さく首を振った。
「ないです」

シヴァはホッと息を吐きだした。

「それならいい。あまり強いものではなさそうだったから、微熱が出る程度ですんだか……」

シヴァは沙良を抱えたままゆっくりと立ち上がる。

沙良のぼんやしした視界がとらえたシヴァの顔は、ひどく怖かった。

「シヴァ様、なにか、怒ってます?」

「これが怒らずにいられるか」

吐き捨てるように言われて、沙良は首をすくめた。

怯えさせたと気づいたのか、シヴァがほんの少しだけ笑って見せる。

「お前に怒っているのではない。気分がそれほど悪くないなら、このまま移動するぞ」

こくり、と沙良がうなずくのを見て、シヴァは四阿から見える沙良の部屋の窓を睨んだ。

「あの馬鹿どもが、今度ばかりは許さんぞ」

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