旦那様は魔王様
2
「これはなんだ」
翌朝。
朝食をすませたばかりのシヴァのもとに、アスヴィルは突然押しかけた。
シヴァの部屋に入るや否や、アスヴィルは無言で一通の嘆願書を差し出した。
怪訝そうな顔をしながらもその嘆願書の中身に目を通したシヴァは、あきれたような顔で友人を見上げた。
「頼むから、もっと沙良と仲良くしてください」
アスヴィルはこの世の終わりともいえるような表情を浮かべて訴えた。
皮張りのソファに腰掛けて、珈琲カップを片手に、アスヴィルは眉間に深い皺を刻み――
「シヴァ様と沙良が仲良くしてくれないと、困るんです。それでなくともミリアムは沙良がお気に入りなのに、あなたたちが仲良くしないから、何とかして仲良くさせようと、四六時中、ええ、俺が隣にいようとお構いなしで、沙良のことばかり考える始末。そのせいで夫婦の時間が極端に減りました。このままでは夫婦生活の危機です。ミリアムがかまってくれません。もし、これ以上夫婦の時間が無くなったら……。ああ、死にたい……」
厳つい顔をしたアスヴィルが、実はかなりの乙女思考であり、ミリアムを溺愛し、ミリアムにデレデレであることを、この世界の住民のどれほどが知っていることだろう。
密かに、クールだとか、硬派だとか言われて城のメイドたちに人気のあるアスヴィルだが、彼女たちがこの姿を見たら、きっと灰になって風に飛ばされていくことだろう。
シヴァは嘆願書の流麗な文字に視線を落とした。
これは嘆願書という名のアスヴィルによるミリアム日記だ。
某月某日、沙良のドレスを考えていてミリアムがかまってくれない。
某月某日、沙良の髪形をもっと愛らしくするため、お抱えの美容師たちを選抜しはじめ、ミリアムがかまってくれない。
某月某日――
シヴァは嘆願書をつき返した。
「こんなこと、俺に言わずミリアム本人に言え」
「言えません!」
「だいたい、ミリアムがお前をかまわないことと、俺と沙良のことは関係ないだろう」
「大いにあります!」
アスヴィルは昨夜のことを思い出した。
翌朝。
朝食をすませたばかりのシヴァのもとに、アスヴィルは突然押しかけた。
シヴァの部屋に入るや否や、アスヴィルは無言で一通の嘆願書を差し出した。
怪訝そうな顔をしながらもその嘆願書の中身に目を通したシヴァは、あきれたような顔で友人を見上げた。
「頼むから、もっと沙良と仲良くしてください」
アスヴィルはこの世の終わりともいえるような表情を浮かべて訴えた。
皮張りのソファに腰掛けて、珈琲カップを片手に、アスヴィルは眉間に深い皺を刻み――
「シヴァ様と沙良が仲良くしてくれないと、困るんです。それでなくともミリアムは沙良がお気に入りなのに、あなたたちが仲良くしないから、何とかして仲良くさせようと、四六時中、ええ、俺が隣にいようとお構いなしで、沙良のことばかり考える始末。そのせいで夫婦の時間が極端に減りました。このままでは夫婦生活の危機です。ミリアムがかまってくれません。もし、これ以上夫婦の時間が無くなったら……。ああ、死にたい……」
厳つい顔をしたアスヴィルが、実はかなりの乙女思考であり、ミリアムを溺愛し、ミリアムにデレデレであることを、この世界の住民のどれほどが知っていることだろう。
密かに、クールだとか、硬派だとか言われて城のメイドたちに人気のあるアスヴィルだが、彼女たちがこの姿を見たら、きっと灰になって風に飛ばされていくことだろう。
シヴァは嘆願書の流麗な文字に視線を落とした。
これは嘆願書という名のアスヴィルによるミリアム日記だ。
某月某日、沙良のドレスを考えていてミリアムがかまってくれない。
某月某日、沙良の髪形をもっと愛らしくするため、お抱えの美容師たちを選抜しはじめ、ミリアムがかまってくれない。
某月某日――
シヴァは嘆願書をつき返した。
「こんなこと、俺に言わずミリアム本人に言え」
「言えません!」
「だいたい、ミリアムがお前をかまわないことと、俺と沙良のことは関係ないだろう」
「大いにあります!」
アスヴィルは昨夜のことを思い出した。
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